邦星堂和楽器店ブログ

私はフィリピンには１度しか行った事がないんですよ。１９７８年ですから、もう３８年も前ですね。前年に就職した大学クラブの後輩達３人に「是非一緒に」と誘われ行きました。
当時のフィリピンは今の程には治安が悪くなかったのです。それどころか経済レベルにおいても、その５年前には韓国に目標にされるほどでした。フィリピンが良いのとは違いますが、１９７３年当時の韓国経済はそれほどまでに未発達だったということですわ。なにしろ目標にしていた国がフィリピンとタイでしたからね。
それにしても、その後が酷かった。今フィリピンはインド以東のアジアでは一番物騒ではないですかね。東アジアでは何処でも行った農地改革が出来ず、大土地所有を野放しにしたからだと言われています。

天皇が今フィリピンを訪問していますが、昔の日本に対する敵意はハンパではなかったでしょう。何しろ日本のフィリピン占拠で１１０万の死者が出たんですから。日本軍も５０万からの戦死者が出ていますが、行った方と来られた方では、受け止め方がドエラク違いまっせ・・・。
戦後の東京裁判では、南京虐殺、タイ・ビルマ鉄道と並んでフィリピンにおける蛮行も厳しく裁かれました。今、世の中が右傾化してきたんですかね、これらについてもトンデモナイ意見を述べる人もいますがね、こういうのは床屋政談であっても、文字通り「人間の条件」が問われますから根性を据えて言ってくださいな。
「東京裁判は事後法に基ずく故に無効」とか今さら言うオカタは、清瀬一郎弁護人が裁判当初から主張していて、今にいたるも国際法の学者達が論争している事については知っているんでしょうかね。そんな簡単な論拠で無効と主張できるような簡単な事と違いますぜ。五味川純平ではないですが、裁かれていたのは「魂」です。

３０年以上前にライリー・リーさんに紹介されて、ハワイ大学で邦楽を研究していたフィリピンの方とお会いしました。記憶が大分曖昧なのですが、たしかリカルド・トレミロスさんといったかと思います。

三味線音楽を研究している人で、難しい点として、日本人には普通に出来る拍子の伸び縮みが自分達にはナカナカ分からないと言っていました。
「間」と同じく理論化するのは難しいですよね。リズム合わせはむしろ簡単。尺八で頻繁に聞く合わない合奏はもっと簡単。自分でやると良く分からない。それでいて、民謡や詩吟の伴奏で少しずれる、あるいは演歌で少し伴奏とずらして歌う、こういう事も良いと感じます。この辺りの呼吸は「見事」と「ハズレ」との綱渡りですな。
ロハヒハ、チレチレなどは前と後とで微妙に長さを違えないとキレイに聞こえない。「鹿の遠音」のツレ～ツツロ、初めのツレ～の長さは感性、だから聴いて心地良いかどうかが問われる。後のツツロは決まった長さ、故に正確に刻んでいるかどうかが問題視される。こういう事は、師匠からサンザン教わりました。
ナカナカ出来ないんですよネ、日本人でも私みたいな鈍な者には。でも練習しているうちに何となく分かってきます。そんな事を申し上げましたですかね。
今は、と言えば国立フィリピン大学には２０１２年から箏専攻課程が存在しています。尺八はまだ聞きません。

フィリピンから日本へ帰る時、現地のツアーガイドから聞かれました。「また来てくれますか」。私の返事は「かつてマッカーサーは言った、アイ　シャル　リターン。僕も言うアイ　ウイル　リターン」。モチ、全部イングリッシュ。何ですと、中学２年で言えるって。アンタもしかしてアタイのこと嫌いでしょう。
それから３８年、とうとう行っていません。こんな事なら必然の未来、シャルにしておけば良かったかしら・・・。