不良の末裔
- 2019/06/02
- 11:13
45年前にプロレスの仕事をしていた時、私のボスのマシオ駒の愛車に同乗して、いろんなところに行きました。駒さんは1年間メキシコにいた後、まずジョージア州に入り、アラバマ、フロリダと移動して、最後の1年はテキサスにいました。愛車のフォードはジョージアにいた時に、副業でデイラーをやっていたバディ・コルト(ロン・リード)から5千3百ドル(1971年当時は1ドル360円)で買ったグリーンの大型車で、屋根には日除けの為の白い革が張って有りました。その車で、大好きなカントリーウエスタンを聞きながら2年間のアメリカ南部の巡業をしていたのです。
カントリーウエスタンって今はあまり言わないですよね。カントリーミュージックですね。ただ、その昔はヒルビリーミュージックと呼ばれていた様です。ヒルビリーって言葉は今のアメリカでは「いなかっぺ」とか「白人下層労働者」とかのニュアンスで使われるそうですが、本来の意味は「南部(アパラチア山系)に住んでいた白人で独自の生活習慣を持つ非文化的な集団」といった意味です。このヒルビリーの本来の意味は、40年以前の日本では、プロレスファンしか知りませんでした。「豚殺し」と仇名されたチャック・コンリーなんかが、「無学、粗野」の、ことさら誇張された野蛮なイメージで、ヒルビリーをビジネスキャラとして使っていた事から、プロレスファンは良く知っていました。
でも、言葉としてなら、本当は大半の日本人が知っていたはずです。私の子供の頃に大流行したロカビリーですよ。あれはロックとヒルビリーミュージックの合成語です。
唐突ですが、「アメリカ国内では」と限定して、今までに一番多くレコード(音盤)を売った人って誰だと思います?「ビートルズだろう?」って、ハイ正解。誰でも分かりますよね。では、その次は?プレスリーでもマイケル・ジャクソンでも無いんですよ。答えはガース・ブルックス。「誰だい、そりゃ?」って、カントリーミュージックの歌手ですわ。日本では、ビートルズよりマライア・キャリーより、単独曲では、ゲロを吐きそうになる「女の道」の方が売れていて,それを聞いた欧米人が「ピンカラ?誰じゃ、そりゃ」と言う様なものですよ。少し違うか。ブルックスは単独曲じゃないもん・・・。かくほどにカントリーミュージックとは今でもアメリカ音楽の主流なのです。
戦後になって大量のアメリカ文化が流れ込んで来ましたが、音楽だと起点は進駐軍でしょう。でも、その後すぐにロカビリーが若者の間で大流行しました。私達の10年上くらいからは、アメリカ文化に対する反発も無く、単純に「カッコ良い」、「聞いて楽しい」と好感を持って受け入れました。だってそうですよ、それまでのラジオから流れて来る音楽って、浪曲か陰旋法5音階歌謡曲でしょう、どうしたって「カッコ良い」、「聞いたら踊りだしたくなる」には、ほど遠いですわ。私の祖父なんかがラジオから流れて来る長唄を聞いて、「春雨は良いな、踊りだしたくなっちゃう」と宣うのとは違いますわ。「手踊り、うわ~、カッコ悪い」ですもんね。
私の子供の頃、「ロカビリーに熱中しているヤツラは社会のオチコボレ」とか「ビートルズを聴ていると不良になる」とかマジで言っていたオトナや教師が本当にいたんです。それも、周りから「バカ」だと思われていた連中ではなく、ある程度は尊敬されていた人達に、です。考えてみたら当り前ですわ。「あんなのを聞いていると不良になる」とか、アホオヤジやアル中ドカタが言ったって、「オメエみたいになりたくないから反対の事をするよ」。とか言われるのがオチですもんね。
ともかく、ですな。今の尺八界の85パーセントが60以上です。そして、その最長老という人達が、すでに、かつて「不良になる」と言われた人達なのです。
私が「古典邦楽は、もう終わった」と事あるごとに言うのは、そう言う事だからです。容易く人に理解出来ないもの、楽しくないものが「程度が低い」という事は無いのです。ですから、古典邦楽も、それなりに「魅力有る音楽」として、尺八のソフトの一部として使われる事は確かだと思います。でも、「主流ソフト」には、もう成り得ない。
カントリーミュージックが今もアメリカ人の心の拠り所である様に、古典邦楽も形を変えて、これからの尺八ソフトの中に生き延びます。だって、ロカビリー、ビートルズで育ち、「不良になった」現在の60代、70代は歌謡曲だって大好きな人が多いんですもの。私の20代に大人気だった「和製ポップス」なんて、ありゃアナタ、リズム以外は演歌ですぜ。
カントリーミュージックが好きだって、それでヒルビリーになるはずがないし、古典邦楽を聞いてたって、その結果として狭い価値観の中でのみ生きていた、かつての矮小な日本人に戻るわけでもないし、だから「何でも有り」、そう不良になるはずだった私達は考えるのです。
カントリーウエスタンって今はあまり言わないですよね。カントリーミュージックですね。ただ、その昔はヒルビリーミュージックと呼ばれていた様です。ヒルビリーって言葉は今のアメリカでは「いなかっぺ」とか「白人下層労働者」とかのニュアンスで使われるそうですが、本来の意味は「南部(アパラチア山系)に住んでいた白人で独自の生活習慣を持つ非文化的な集団」といった意味です。このヒルビリーの本来の意味は、40年以前の日本では、プロレスファンしか知りませんでした。「豚殺し」と仇名されたチャック・コンリーなんかが、「無学、粗野」の、ことさら誇張された野蛮なイメージで、ヒルビリーをビジネスキャラとして使っていた事から、プロレスファンは良く知っていました。
でも、言葉としてなら、本当は大半の日本人が知っていたはずです。私の子供の頃に大流行したロカビリーですよ。あれはロックとヒルビリーミュージックの合成語です。
唐突ですが、「アメリカ国内では」と限定して、今までに一番多くレコード(音盤)を売った人って誰だと思います?「ビートルズだろう?」って、ハイ正解。誰でも分かりますよね。では、その次は?プレスリーでもマイケル・ジャクソンでも無いんですよ。答えはガース・ブルックス。「誰だい、そりゃ?」って、カントリーミュージックの歌手ですわ。日本では、ビートルズよりマライア・キャリーより、単独曲では、ゲロを吐きそうになる「女の道」の方が売れていて,それを聞いた欧米人が「ピンカラ?誰じゃ、そりゃ」と言う様なものですよ。少し違うか。ブルックスは単独曲じゃないもん・・・。かくほどにカントリーミュージックとは今でもアメリカ音楽の主流なのです。
戦後になって大量のアメリカ文化が流れ込んで来ましたが、音楽だと起点は進駐軍でしょう。でも、その後すぐにロカビリーが若者の間で大流行しました。私達の10年上くらいからは、アメリカ文化に対する反発も無く、単純に「カッコ良い」、「聞いて楽しい」と好感を持って受け入れました。だってそうですよ、それまでのラジオから流れて来る音楽って、浪曲か陰旋法5音階歌謡曲でしょう、どうしたって「カッコ良い」、「聞いたら踊りだしたくなる」には、ほど遠いですわ。私の祖父なんかがラジオから流れて来る長唄を聞いて、「春雨は良いな、踊りだしたくなっちゃう」と宣うのとは違いますわ。「手踊り、うわ~、カッコ悪い」ですもんね。
私の子供の頃、「ロカビリーに熱中しているヤツラは社会のオチコボレ」とか「ビートルズを聴ていると不良になる」とかマジで言っていたオトナや教師が本当にいたんです。それも、周りから「バカ」だと思われていた連中ではなく、ある程度は尊敬されていた人達に、です。考えてみたら当り前ですわ。「あんなのを聞いていると不良になる」とか、アホオヤジやアル中ドカタが言ったって、「オメエみたいになりたくないから反対の事をするよ」。とか言われるのがオチですもんね。
ともかく、ですな。今の尺八界の85パーセントが60以上です。そして、その最長老という人達が、すでに、かつて「不良になる」と言われた人達なのです。
私が「古典邦楽は、もう終わった」と事あるごとに言うのは、そう言う事だからです。容易く人に理解出来ないもの、楽しくないものが「程度が低い」という事は無いのです。ですから、古典邦楽も、それなりに「魅力有る音楽」として、尺八のソフトの一部として使われる事は確かだと思います。でも、「主流ソフト」には、もう成り得ない。
カントリーミュージックが今もアメリカ人の心の拠り所である様に、古典邦楽も形を変えて、これからの尺八ソフトの中に生き延びます。だって、ロカビリー、ビートルズで育ち、「不良になった」現在の60代、70代は歌謡曲だって大好きな人が多いんですもの。私の20代に大人気だった「和製ポップス」なんて、ありゃアナタ、リズム以外は演歌ですぜ。
カントリーミュージックが好きだって、それでヒルビリーになるはずがないし、古典邦楽を聞いてたって、その結果として狭い価値観の中でのみ生きていた、かつての矮小な日本人に戻るわけでもないし、だから「何でも有り」、そう不良になるはずだった私達は考えるのです。
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