異形の未来形

昨日コンビニに行きましたところ、昼時で「レジ待ち」の長い列が出来ていました。私の前に並んでいた２人ずれのカップルたるや、男は見た目ヤンキー、女の方は丸っきりズべ公だったんですよ。私も、関わり合いになりたくないので、前と不必要な距離をとってならんでいました。
やっと前が済んで私の番が来まして、財布を出したひょうしに手が滑り、悪い事に財布の口が開き、小銭が床に散らばってしまいましたわ（たぶん有ったと思うけど分厚い札束の方は出ませんでした）。私って右半身が不自由でしょう、それに屈むのって苦手なんですよ。後には、まだ「レジ待ち客」が並んでいます。
焦りましたよ。そしたら清算を済ませて、まだ店にいた「ヤンキー風カップル」が、すばやく戻ってきて、小銭を拾い集めてくれました。初対面ですぜ、いくら私でも「私の高邁な人格にうたれて」なんて思いませんや。その自然な親切心に深く感謝しました。

昔から欧米や韓国、中国などでは困っていると、必ず誰かが手助けを申し入れてくれました。だからって、日本人だって親切心では、それらの民族に負けていないと思うのです。でも、昔の日本人は、周りの目を気にして、たとえば電車で自分の坐っている前に老人が立ったとして、「良いカッコしいだと思われたりしないか、とか余計な事を考えて、立って席を譲るのを躊躇してしまう」、そういう感情がはたらいたらしいのです。「らしい」というのは、人にどう思われようと全く気にならない私には、いだいた事のない気持ちだからです。
そういう点で今の若い人は実にフランクになりました。すごくマナーが良くなった、優しくなった、そういう事は私の世代の様に、昔を知っている者は誰でも頷きますよね。
それにしても、やはり「人は外見で判断してはいけない」という当り前の事を思い知らされました。時代劇を見すぎますと、いつの間にか「顔の良い人は善人、顔の悪いヤツは心も醜い」と洗脳されてしまいます。ナルホドねえ、たしかに高橋の河童や吉田ネズミ男は外見に反比例して、性格は良いですわ。

尺八は、ほんの２０年前まで、市場における価値の大半は外見に在りました。同一製管師の価格の差は「見た目」であった事からも確かな事です。囲い込みが主だった為、「市場」というものすら形成できなかった琴古は違いますよ。師匠が「この価格で売りたい。この弟子になら売れる」との判断で値段は決まりました。つまり価格差なんてものは、初めから無かったのです。
ですから、どっちにしたところで、「○○万円以下の尺八は使えない」なんて言う素人さんは、「仕組みを良く分かっていない人」と製管師達から陰で嗤われていたのです。
そういう点で今日では大きく「尺八の楽器としての側面」に比重が移ってきました。その結果として今後、次の様な尺八の可能性が出てきました。　

①　３Ⅾ製作。　だって性能だけで言えば、いかなる名器とi言えども手作りである以上は、コンピューターで細部まで完全に同一規格が復元できる、３Ⅾ製作に勝てませんよ。
②　手穴弁。　　フルートみたいな弁を一部の穴に装着するのです。「ツの小穴」、七孔尺八ですと長管になると便利です。
③　七穴改。　　尺八が今みたいに国際化してくると、必然的に「陰旋法対応」の現在の七孔に不便に感ずる人達が出てきます。　　　七孔尺八の「一番下の穴はツの中メリ」。こういった改作は、すでに中国で出ています。　
④　極深歌口。　ソフトによっては今の歌口は浅すぎる。これは３０年以上も前に「北村英山論文」で証明されています。
⑤　歪み舌面。　尺八の音派発生の基本。「コアンダ効果」を高めるには、歌口の舌面に歪みを作った方が効果的（３Ⅾで実証実験中）。

まだまだ考えられるモノは多いのです。尺八は楽器（ハード）です。それは道具であるからには使用目的（ソフト）による変貌を必然の事とします。今の様な勢いで「尺八の使われ方の多様化」が起き続ければ、それにつれ、より便利なソフト対応が求められ様々なバリエーションを作り出すと思います。
それは見慣れないだけに、初めは「異様な形」と受け止められますでしょう。でも、そのうちに慣れるもんです。人間と同じ、「外形で判断する」のは止めましょう。