東京の山谷、横浜の寿町、大阪の釜ヶ崎、これを日本三大ドヤ街と言うそうですな。一般人や外国人観光客が入り込んだ今は、それ程でもないけど、前はドカタ、失業者、ヤクザ、パンパン、それと零細商店が住民の大半だったでしょう。時に暴動も有ったりしましたから、まともな人間は寄り付きませんでしたわ。私は、このうち釜ヶ崎には行った事が有りません。山谷も1回行った事があるだけです。どういう所か興味が有りましたからね。大学時代ですから、もう随分前です。
全然怖くなんかありませんでしたよ。こっちが余程に小生意気な態度をとればともかく、でなければ金の無いセイガク相手に因縁をつけるヤツなんていません。それに学生時代の私が喧嘩を辞さない人間だった事は、昔の仲間は皆が知っています。とは言っても、実際の殴り合いは高校の2年までで終えていますけどね。
横浜の寿町は15年くらい前まで何度も行きました。正確には通りました。横浜駅への近道なので普通に通っただけです。でも、いずれの場合も真っ昼間です。やはり夜はイヤですよ。
大阪の釜ヶ崎には縁がなくてね、行ってません。でも、すぐ横は足繁く通った場所です。動物園前駅はすでに「大阪の場末」というオーラが漂っていて、そこから新世界に抜けるジャンジャン横丁は面白いですもんね。10年前には、もう「若い女の旅行者がドカタとカウンターに並んでコップ酒」という光景が珍しくなくなっていました。本人にしたら「プチ冒険」のつもりでしょうが、ナニ元々ジャンジャン横丁はひとつも怖い事はありません。道路を挟んだ釜ヶ崎とは別の世界です。でも、東南アジアの国境みたいなもんで、「境を越えた途端景色が一変する,というのではなく、しばらくは前の人種、文化がモザイクみたいに混在する」ので、そういう意味では「釜ヶ崎的な雰囲気」が混じっているのでしょう。「立ちんぼ」くらいは当然いますしね。だから面白いのでしょうな。
こういうドヤ街よりも、ある意味では、もっと無法地帯と言えるのが売春地帯です。「日本には売防法が有るのに売春なんか許せない」とかバカな事を言ってるんじゃないですよ。大学4年の時に林梅毒庵と山陽の某市に旅行に行きましたが、夕方になると何十人とも知れない娘やオバサンがオオピラに客引きをするんですぜ、そりゃビックリしますよ。
同じころ倉橋容堂に「飛田の色町」の話を聞きましたが、「ザル法」とは言え仮にも売春防止法が存在してるんですよ。それが「隠れて」でも、ソープランドの様に「言い抜けの出来る密室」でもなく、白昼堂々の営業でしょう、「どうしてこんな事がまかり通ってるのか不思議でした。
当時の法政大学三曲会の連中は、それはウブなもので、私の一つ上の男子は6人中4人、私の代は6人中2人が卒業の時点で童貞でした。私も後では、色街は何ら特別の地域ではなく、その気で探せば日本のいたるところに同様の場所が、隠れて(あるいは隠れも無いか知りませんが)、存在していた事を知りましたが、その時はまだ「売春とかの違法行為は、警察に知られないように、ヒッソリと行っているもの」だと思っていましたからね・・・。
こういうのは慣れですかね。良く考えると、犯罪が多いと言うのは「そりゃそうなるよ」であって、ドヤ街の本質とは全然別の問題です。、ドヤ街そのものは違法でも何でも無く、社会的必要から生まれたわけですし、売春は「どうして悪いのか」を「違法だから」以外に説明出来ないと思います。売春が合法だった戦前でも、たしか昭和7年以後だったか、悪名高い「前借金」は違法だったんですからね。「それで助かった人も多いし、それに誰も損をしていないじゃないか」に、アナタ、反論できる?。「ヤクザの資金源になる」ってか?。だからそこはそれ、ドヤ街で犯罪が多いのと一緒で、「存在」の本質では無いぃしょ・・・。
だから日本の警察の「民事に介入せず、微罪は咎めず」は理想的な姿だと思います。「違法でも多少の事なら目こぼしする」、これが無い社会は、やはり歪で上手く回らないと思います。
では尺八界。実演、教授等で得る収入、多くは「所得税法違反」。海外公演または物品販売、9割以上のケースで外為法と入管法に抵触しますね。演奏会の曲目、あるいは編曲なんかでも、本当は著作権法違反なんか日常茶飯でしょうよ。
何が言いたい?。決まっておろうが、基本的には、これからも同じことを繰り返すんだよ。だって仕方ネエだろうがよ。たとえば国際交流基金とかを使える人なら良いだろうよ、でも尺八で、一部の恵まれた演奏家以外に使えっか?。だから海外仕事をしている尺八家の大半は申請すらしていないわな。申請したって無駄だもん・・・。
でも危なくなってきました。このコロナ騒ぎで海外渡航の様子が変わり、渡航制限が解除されても、事情のハッキリするまでの、しばらくの間は、金銭的負担が有っても、合法化の為の手段を採った方が良いと思います。具体例を挙げましょう。例えば何処の国にしろ、尺八を送りますな。その場合、先方から「税金申請の為に額面金額を大幅に安く(1割とか、それ以下)してくれ」とか誰でも言われていますわな。これ、今後は危ない。持ち込みはさらにヤバイ。特に大市場である中国では危ない。何故なら、イザと言う時の万能の抜け道であった香港が今後は不透明です。
ですから私の所は、このコロナを期に、正規の貿易会社を通す形で完全に合法化しました。
これまで「慣例的に通用した」とは言っても、違法は違法なんです。日本だけでなく台湾でも韓国でも、たとえば台北の龍山寺裏、ソウルのミアリテキサス、釜山のミドリマチみたいな「売防法をコケにする」大っぴらで大規模な売春街は、もう存在していないでしょう。もう「これまでの経緯が有るから目を瞑ろう、それに賄賂も入るから」の社会段階は過ぎたんです。
時代の変わり目、情勢の変化を間違えると泣きを見ますよ。現に私の友人。高い金を出して外国から演奏家を呼び、会場を準備し、演奏会の宣伝をし、準備万端整った時点で中止。私の再三の忠告を無視して、演奏家のビザを申請していなかったんですわ。「それまで平気だった・・・」、そりゃね、前は外務大臣まで務めた大物政治家が後ろ建てになっていたからだわ。だから国際交流基金だって一発オーケーだっただろ。
誰でも生きていく上で多少の法律違反はしていますわな。でも、法律が牙をむいた時は「違法は違法」ですからね。「目こぼしの範囲」を決めているのは、アンタでなくて相手なんですよ・・・。
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