販売方法の模索
- 2021/03/04
- 19:30
大学2年の秋。ですから1970年ですな。けっして少なくはない仕送りを受けているくせに年中ゲルピン、つまり万年金詰まりの粟田が私に相談してきました。同学年の中で唯一、粟田にコケにした口をきくのが私です。よりによって、その私に相談するという事は余程に切羽詰まったのでしょう。
「大橋よう、何か良いバイトって無いかな?」。そんなのが有れば私がやってますって。だから言いましたよ。「地道にバイトするしかねえだろうよ」。どうも、それでは間に合わないらしいのです。そりゃそうだ、でなきゃ私なんかに相談するわけねえもんな。
「何でもするんなら無い事も無いぜ。粟田よ、オメエはプロレスラーだと言っても通る人並みはずれた体格と、限りなく人並みに近い頭を持ってる。それを生かすんだよ」。「どうもオマエは引っかかる言い方をするな。まあ、この際だから良いや。それで何をするんよ」。
「毎月1の付く日は妙法寺(杉並)の御祖師様、8の付く日は新井薬師(中野)、これからは新宿の花園神社、暮れから新年は明治神宮とタカマチが連続だ。オレが親分に口をきいてやっても良いぜ。
「バカ、それってヤクザじゃねえか。誰がやるか」。「バカはオメエだ。ヤクザとテキヤは違うぜ」。年末年始は稼ぎ時で、セルロイドのお面とかハッカパイプとかの店を任せてもらえば2千円にはなる。70年当時は1日2千円になるバイトって有りませんでしたよ。でも結局ヤツはビビッて、やりませんでしたな。ヤクザ映画の見過ぎですよ。出入りなんてテキヤであるはずが無い。でも、もし有ったら?。その時は度胸を決めなきゃ仕方が無いでしょうな・・・。しょせん男はメカタじゃ売れませんや。
映画と言えば、当時大人気だった「男はつらいよ」のフーテンの寅ってヤクザでしょうか?。粟田には言いませんでしたが、立派(?)なヤクザです。ヤクザには「暴力団」と分類される集団と「神農系」と呼ばれるテキヤと有りまして、一応は「稼業違い」となっていますが、その区別はハッキリとしたものではなく、例えば広域暴力団の極東会は本来テキヤです。その時代はまだ東北や北海道はテキヤばかりでしたが、その後はどんどん「暴力団」に変わった事を見ても分かるように、まあ一卵性三ツ児でしょうな。だって場合によっては政治結社にも変身しますもの。「右か?、左か?」てっか、アンタ左のヤクザって見た事有るの?。
寅さんが映画の中でやっているのは「タンカバイ」と言われるもので、実は私の子供時代ですでに、極めて珍しいものになっていました。私の「蝦蟇の油売り」で手下をやった吉田(ネズミ男)も林(梅毒庵)もサクラ役の木稲さんも「蝦蟇の油売り」は勿論、「タンカバイ」は映画の中でしか見た事が無かったそうです。
この「タンカバイ」で売られている商品。セリフの通りの「倒産品」とか手形決済の必要からの「投げ出し」も有りますし、廃棄されるはずの不良品の横流し、それどころか、れっきとした良品の社員による横流しまで有りました。ナンセ仕入れ値がバカみたいに安いでしょう、後は口先三寸で売りまくりますので存外稼ぎは良いのです。だからこそ寅さんは交通費を使って宿屋に泊まって、夜な夜な酒盛りが出来たんですわ。
この商売は社会が高度になり、会社の在庫や不良品管理が厳しくなると、商品が流れて来なくなりました。手形落しの為や倒産品も資金が豊富で強力な情報網を持ったブローカービジネスになりました。それで初期資本を造ったのが誰でも知っている有名カメラ屋(今はコンピューター、家電何でも)です。
私の所に「尺八の在庫を一括して買って欲しい」との電話が有ったのは去年の暮れです。言わないだけで、もう廃業するのでしょう。断ると「では竹材なら買ってもらえるか」と言う申し出です。販売不振者や廃業する人、あるいは死亡者が竹材を処理したがるのは分かります。去年も2回ばかり購入しました。でも「製品を」とはね。
前に販売出来ない友人達を助ける意味で、製品を購入したり買い手を紹介したりはしましたが、それは友達同士の助け合い、言わば「困ったときはお互い様」ですわね。でも、事態が進んで、もう尺八状況は、そこまで悪くなっているのですね。このまま冗談抜きで廃業製管師の在庫品が溢れたとします。そうなる可能性は高い。そして「投げ出し」の一括購入ですから仕入れ値は格安です。でも、販売法がね。私自身が製作者ですから、従来の市場とかち合えないのは当然です。
そこで私は考えました。新たな形の「尺八タンカバイ」を。今年の後半にはハッキリした形でやって見せます。簡単に言えばネット即売会ですよ。でも、ヤクザじゃないから間違っても低級品は売れない。まだ工夫の余地が多いのです。
「大橋よう、何か良いバイトって無いかな?」。そんなのが有れば私がやってますって。だから言いましたよ。「地道にバイトするしかねえだろうよ」。どうも、それでは間に合わないらしいのです。そりゃそうだ、でなきゃ私なんかに相談するわけねえもんな。
「何でもするんなら無い事も無いぜ。粟田よ、オメエはプロレスラーだと言っても通る人並みはずれた体格と、限りなく人並みに近い頭を持ってる。それを生かすんだよ」。「どうもオマエは引っかかる言い方をするな。まあ、この際だから良いや。それで何をするんよ」。
「毎月1の付く日は妙法寺(杉並)の御祖師様、8の付く日は新井薬師(中野)、これからは新宿の花園神社、暮れから新年は明治神宮とタカマチが連続だ。オレが親分に口をきいてやっても良いぜ。
「バカ、それってヤクザじゃねえか。誰がやるか」。「バカはオメエだ。ヤクザとテキヤは違うぜ」。年末年始は稼ぎ時で、セルロイドのお面とかハッカパイプとかの店を任せてもらえば2千円にはなる。70年当時は1日2千円になるバイトって有りませんでしたよ。でも結局ヤツはビビッて、やりませんでしたな。ヤクザ映画の見過ぎですよ。出入りなんてテキヤであるはずが無い。でも、もし有ったら?。その時は度胸を決めなきゃ仕方が無いでしょうな・・・。しょせん男はメカタじゃ売れませんや。
映画と言えば、当時大人気だった「男はつらいよ」のフーテンの寅ってヤクザでしょうか?。粟田には言いませんでしたが、立派(?)なヤクザです。ヤクザには「暴力団」と分類される集団と「神農系」と呼ばれるテキヤと有りまして、一応は「稼業違い」となっていますが、その区別はハッキリとしたものではなく、例えば広域暴力団の極東会は本来テキヤです。その時代はまだ東北や北海道はテキヤばかりでしたが、その後はどんどん「暴力団」に変わった事を見ても分かるように、まあ一卵性三ツ児でしょうな。だって場合によっては政治結社にも変身しますもの。「右か?、左か?」てっか、アンタ左のヤクザって見た事有るの?。
寅さんが映画の中でやっているのは「タンカバイ」と言われるもので、実は私の子供時代ですでに、極めて珍しいものになっていました。私の「蝦蟇の油売り」で手下をやった吉田(ネズミ男)も林(梅毒庵)もサクラ役の木稲さんも「蝦蟇の油売り」は勿論、「タンカバイ」は映画の中でしか見た事が無かったそうです。
この「タンカバイ」で売られている商品。セリフの通りの「倒産品」とか手形決済の必要からの「投げ出し」も有りますし、廃棄されるはずの不良品の横流し、それどころか、れっきとした良品の社員による横流しまで有りました。ナンセ仕入れ値がバカみたいに安いでしょう、後は口先三寸で売りまくりますので存外稼ぎは良いのです。だからこそ寅さんは交通費を使って宿屋に泊まって、夜な夜な酒盛りが出来たんですわ。
この商売は社会が高度になり、会社の在庫や不良品管理が厳しくなると、商品が流れて来なくなりました。手形落しの為や倒産品も資金が豊富で強力な情報網を持ったブローカービジネスになりました。それで初期資本を造ったのが誰でも知っている有名カメラ屋(今はコンピューター、家電何でも)です。
私の所に「尺八の在庫を一括して買って欲しい」との電話が有ったのは去年の暮れです。言わないだけで、もう廃業するのでしょう。断ると「では竹材なら買ってもらえるか」と言う申し出です。販売不振者や廃業する人、あるいは死亡者が竹材を処理したがるのは分かります。去年も2回ばかり購入しました。でも「製品を」とはね。
前に販売出来ない友人達を助ける意味で、製品を購入したり買い手を紹介したりはしましたが、それは友達同士の助け合い、言わば「困ったときはお互い様」ですわね。でも、事態が進んで、もう尺八状況は、そこまで悪くなっているのですね。このまま冗談抜きで廃業製管師の在庫品が溢れたとします。そうなる可能性は高い。そして「投げ出し」の一括購入ですから仕入れ値は格安です。でも、販売法がね。私自身が製作者ですから、従来の市場とかち合えないのは当然です。
そこで私は考えました。新たな形の「尺八タンカバイ」を。今年の後半にはハッキリした形でやって見せます。簡単に言えばネット即売会ですよ。でも、ヤクザじゃないから間違っても低級品は売れない。まだ工夫の余地が多いのです。
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