見えてきた完成形
- 2021/04/19
- 11:45
昨日で久しぶりの関東展示会が終わりました。客入りは水戸、松戸、藤沢は良く、川崎は大分少なかったですね。収支は良かったのですが、ハッキリ言います、竹製尺八の売れ行きは目に見えて落ち込んでいます。業界で最高の競争力を持つ(売れ数から言って客観的事実ですよ)私の所の竹製銘柄でさえ、このザマなのですから、他の製管師、それも外国に市場を持っていない人の場合、もう絶望的な状況でしょう。
去年はまだ持続化給付金が有りましたが、今年の事態は深刻ですね。他人事とは言え、気になります。「同業者だから心配か?」ですって。ええ、少し前までは。今は自分の事で精一杯です。だって、私の所は好調とは言え、今年に入って、竹製尺八の全販売量の7割以上が外国ですからね。これって楽観出来る状況ではありませんよ。とくに中国では、もう間もなく中国人製管師との競合に入ります。
展示会の楽しいところは、各地の種々の人達と直接交流できる点です。「今、何が起きているのか?。尺八愛好家が何を望んでいるのか?」、これを客と話し込まないで分かると思うんなら、やってみな。もう結果が出てるから、言うだけ野暮だけどね・・・。
今度の展示会で2人の中国人と会いました。一人は芸大の留学生で、いろいろ最近の中国尺八事情を訊きました。私が把握している「プロと認定できる中国人(台湾を除く)製管師」は5人ですが、その他にも非専業型の製管師はいますし、販売動向とか訊けて、とても参考になりました。
もう一人は女性で、初めは中国人と分からなかったくらい日本語が巧みな方で、この人からは、今の中国大陸の文化的傾向を伺いました。「上海で講習をやってますから、また、その節はよろしく」との事なので、「中国旅行の再開」が楽しみです。こういう具合に人間関係を拡げられることも展示会の嬉しい点です。枝葉を広げて、そのうちの10か20に一つは実を結ぶものですって。
今度の展示会では、「もう尺八も完成形が見えてきた」とアラタメテ思わされました。バイオリンは3百年、サキソホーンは2百年、フルートも150年ほど前に、一応の完成形に達しました。日本の楽器でも箏や三絃は完成形で、太棹、津軽とか、17元、20弦とかはバリエーションの範囲ですね。
勿論、尺八の場合も完成形は一つではありません。5なのか、それとも10なのか、ともかく「もう見えてきた」と思います。古典本曲用に三浦龍畝、現代曲用に泉州工房のエアリードエックス。この二つのモデルが、とりあえず達した「完成形のうちの二つ」ではないかと私は思います。
この2種の尺八の内径、外形解析は当然皆がやっていると思います。ナンジャと、「やってない」って。アンタ、もうプロ製管師は諦めた方が良いよ。そういう姿勢じゃ、もう無理だわ・・・。
どちらの尺八も内径傾斜の点では、特別に変わった点は有りません。数十年前からの「非常に鳴る尺八」と同様の傾斜です。ですから、こういったのが「伝統の凄さ」ですって。でも、30年以上前ですと、「性能抜群の尺八」は単に「偶然出来た、何本かの一本」に過ぎず、評価の分かれる泉州を除けば「製作者の意図しない不出来な楽器」も有りました。ですから、こういうのが名前だけで流通経路に載るのも、別の意味での「伝統の凄さ」です。
万単位の尺八を修理した遼山が「不出来は無い」と言う一城さえ、私は見た事は有ります。でも、たった1本だけですから、立派な人だとは思いますよ。
私見ですが、50年前だと性能的には真山と藤原龍風が一番良かったと思いますが、そのレベルは今日のスタンダードです。言っときますが、ここでは工芸品としての造形美なんかには触れていませんよ。そっちだったら「真山に勝る尺八」なんて今でも無いでしょうよ。
ともかく、技術水準では、最高レベルが確定すると、次は、そこがスタンダードレベルになってしまうのです。最近、私が「もう完成形が見えてきた」と思うのは、そういった技術の進歩よりも、尺八愛好家の吹奏力の著しい進歩です。プロは言うまでもありませんが、一般人です。
今回も鹿児島大学邦楽部の卒業生達が来てくれましたが、林鈴麟が驚く水準でした。私は「あそこは福田井山がコーチしているからで、優れた師匠が教えていない大学は言うほどのレベルではないですよ」と言いましたが、林さんは「東北大学をはじめ、学生尺八はアンサンブル曲では、もう30年前のプロの水準に行っています」と、しきりに感心していました。そう、今は、どこの地方でも優れた尺八吹き(当然ですがアマチュア)がいます。そして、その多くが大学の尺八部出身と芸大卒です。
どんな道具でも、それを使う人が大したことがなければ進歩も有りません。多くの人が笛系楽器のプロで、日本の尺八師範のレベルに30分で達する中国でも、現在は多くの「笛系楽器未経験者」を抱え込むまでに成長しました。日本でも、世界でも、こういう状況が有る限り尺八の未来は明るいのですって・・・。
去年はまだ持続化給付金が有りましたが、今年の事態は深刻ですね。他人事とは言え、気になります。「同業者だから心配か?」ですって。ええ、少し前までは。今は自分の事で精一杯です。だって、私の所は好調とは言え、今年に入って、竹製尺八の全販売量の7割以上が外国ですからね。これって楽観出来る状況ではありませんよ。とくに中国では、もう間もなく中国人製管師との競合に入ります。
展示会の楽しいところは、各地の種々の人達と直接交流できる点です。「今、何が起きているのか?。尺八愛好家が何を望んでいるのか?」、これを客と話し込まないで分かると思うんなら、やってみな。もう結果が出てるから、言うだけ野暮だけどね・・・。
今度の展示会で2人の中国人と会いました。一人は芸大の留学生で、いろいろ最近の中国尺八事情を訊きました。私が把握している「プロと認定できる中国人(台湾を除く)製管師」は5人ですが、その他にも非専業型の製管師はいますし、販売動向とか訊けて、とても参考になりました。
もう一人は女性で、初めは中国人と分からなかったくらい日本語が巧みな方で、この人からは、今の中国大陸の文化的傾向を伺いました。「上海で講習をやってますから、また、その節はよろしく」との事なので、「中国旅行の再開」が楽しみです。こういう具合に人間関係を拡げられることも展示会の嬉しい点です。枝葉を広げて、そのうちの10か20に一つは実を結ぶものですって。
今度の展示会では、「もう尺八も完成形が見えてきた」とアラタメテ思わされました。バイオリンは3百年、サキソホーンは2百年、フルートも150年ほど前に、一応の完成形に達しました。日本の楽器でも箏や三絃は完成形で、太棹、津軽とか、17元、20弦とかはバリエーションの範囲ですね。
勿論、尺八の場合も完成形は一つではありません。5なのか、それとも10なのか、ともかく「もう見えてきた」と思います。古典本曲用に三浦龍畝、現代曲用に泉州工房のエアリードエックス。この二つのモデルが、とりあえず達した「完成形のうちの二つ」ではないかと私は思います。
この2種の尺八の内径、外形解析は当然皆がやっていると思います。ナンジャと、「やってない」って。アンタ、もうプロ製管師は諦めた方が良いよ。そういう姿勢じゃ、もう無理だわ・・・。
どちらの尺八も内径傾斜の点では、特別に変わった点は有りません。数十年前からの「非常に鳴る尺八」と同様の傾斜です。ですから、こういったのが「伝統の凄さ」ですって。でも、30年以上前ですと、「性能抜群の尺八」は単に「偶然出来た、何本かの一本」に過ぎず、評価の分かれる泉州を除けば「製作者の意図しない不出来な楽器」も有りました。ですから、こういうのが名前だけで流通経路に載るのも、別の意味での「伝統の凄さ」です。
万単位の尺八を修理した遼山が「不出来は無い」と言う一城さえ、私は見た事は有ります。でも、たった1本だけですから、立派な人だとは思いますよ。
私見ですが、50年前だと性能的には真山と藤原龍風が一番良かったと思いますが、そのレベルは今日のスタンダードです。言っときますが、ここでは工芸品としての造形美なんかには触れていませんよ。そっちだったら「真山に勝る尺八」なんて今でも無いでしょうよ。
ともかく、技術水準では、最高レベルが確定すると、次は、そこがスタンダードレベルになってしまうのです。最近、私が「もう完成形が見えてきた」と思うのは、そういった技術の進歩よりも、尺八愛好家の吹奏力の著しい進歩です。プロは言うまでもありませんが、一般人です。
今回も鹿児島大学邦楽部の卒業生達が来てくれましたが、林鈴麟が驚く水準でした。私は「あそこは福田井山がコーチしているからで、優れた師匠が教えていない大学は言うほどのレベルではないですよ」と言いましたが、林さんは「東北大学をはじめ、学生尺八はアンサンブル曲では、もう30年前のプロの水準に行っています」と、しきりに感心していました。そう、今は、どこの地方でも優れた尺八吹き(当然ですがアマチュア)がいます。そして、その多くが大学の尺八部出身と芸大卒です。
どんな道具でも、それを使う人が大したことがなければ進歩も有りません。多くの人が笛系楽器のプロで、日本の尺八師範のレベルに30分で達する中国でも、現在は多くの「笛系楽器未経験者」を抱え込むまでに成長しました。日本でも、世界でも、こういう状況が有る限り尺八の未来は明るいのですって・・・。
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