新開発・烽火noroshi開
- 2021/07/30
- 10:03

歌口の深さ6ミリ、手穴直径13ミリ、菅尻に開孔部(アサガオ)あり。設計、製作は林鈴麟(雅寛)ですが、歌口改造は大橋亮太が担当しました。こんな楽に大きな音の出る尺八、今まで見た事無いはず・・・。
「音域拡大③」の前に、その事に付随しての新製品を発表します。2019年秋から続く新開発製品第5弾、「スーパー尺八」、名ずけて烽火・開(のろし・かい)です。
初めて「スーパー尺八」なるものが出現したのは40数年前。ジョン・ネプチューンの開発によるものです。ちなみにマスコミでも使われる、この名称の名ずけ親は他ならぬ私です。「ターボ尺八」とも言われますが、こっちの命名は邦楽ジャーナルの田中さん。
ネプチューンの尺八を初めて見た人は一様に驚きましたよ。全長は1尺8寸管と1尺9寸管の中間。歌口の深さは6ミリくらいある(当時の尺八の平均は3ミリくらい)。手穴の位置は通常より1センチ以上も下に開いている。手穴の直径は14ミリ(当時でも流石にもう11ミリにはなっていました)。菅尻拡大(ハイパス効果)など「外見の異様さ」が目立ちました。見た人のほとんど全員が「あれは日本人には使えない。古典には使えないし、それ以前に指で孔を塞げないよ」と言っていました。
当時の製管師でも見た人は多いのですが、「これを作ってみよう」とは思わなかった。ネプチューンの製管における直接の弟子は増田州鳳(2001年没)ですが、この「スーパータイプ」は受け継ぎませんでした。これに強い影響を受けて、独自の工夫と研究、実験を重ね「自己の物」としたのが天才性と探求心を併せ持つ三塚泉州です。
三塚レベルの吹奏力と探求心が求められるから「他の人には無理」ということではないのです。頭脳レベル、物つくりの熱意、吹奏力などから見て善村鹿山とか小林一城とか、製管業界にも人がいなかったわけでは有りません。その違いは一言で言えば「エートス」です。「新しい時代のソフトを作り出せる尺八の開発」という強い信念です。もう一つ付け加えるなら「古い尺八界に我慢ならない」という革命精神の有無でしょう。時代が時代ですからね、「伊藤五雲管とか、こういうの前にも有ったよ」と言う人もいました。何も分かっていない、全然本質を見ていない、三塚がやったのは「新しい時代の幕開らき」です。楽器の部分的改革に止まらない、「ソフトの改革」という精神面の変化を伴う、いわば革命です。
40年前の私の目指した所は「尺八の価格を下げる」です。子供や年金生活者が気楽に始められる尺八。高くても説明できるのなら良いのですが、高価なくせに楽器としては使い物にならない尺八が多すぎました。プロ製作者の竹製尺八に10万円(物価が半分程度の時代)以下が存在しない現状。しかも「プロたって大学の尺八クラブ出身者が、ほんの数か月の研修で達成できる技術レベル」の人が大半です。だからこそ秘密主義で新規参入を必死で防いでいたんですわ。
こういった恥ずべき状況を終わらせるのが私の役目だと思いました。「安い尺八なんて駄目だ」と言う人がいくらいても良いのです。自分のお金で買うのですから。ただ、「安くて良い商品が存在しない」という状況さえ無くなれば良いのです。つまり尺八に正常な商業感覚を持ち込みたいということです。その為には、正確不正確は問わず情報の垂れ流し。どうせ当時の製管知識はイイカゲンだったんですからね。今では「秘伝」と称しているモノの底の浅さが知れ渡りました。それと重要なのが既成秩序の破壊を伴う徹底した自由競争です。
40年経って、そのほとんど全部が達成されました。ですから次はもう言わばオマケ。なら面白い事もしたい。まず、長年にわたって保留にしてきた「スーパータイプ」を3Ⅾで出します。価格は2万5千円です。大甲倍音の研究とが、この尺八の製作はセットになっていましたから、このタイプの尺八の大甲の出し方を説明したものも入っています。
次は、この形を竹製に移します。モチ格安。「必要無い。楽器としてなら3Ⅾスーパーで十分だ」と言う人もいましょうが、「やはり尺八は竹だ」と言う人もいるのです。文化ですから、選択の巾は多いほど良いですよね。豊富な選択肢がない業界が人から相手にされるはずが無いですよ。
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