デブ

1969年の5月ですから、もう50年以上も前です。私は日本プロレスの宇都宮大会の会場にいました。第11回ワールドリーグも、もう最後の東京大会を残すのみ。この頃、、私はテレビ撮りの無い時は本部席で、大学の先輩・篠原（リングアナウンサー）さんの隣にいたのです。そしたら興業の中盤に、「悪いけど席をかわってよ」と言われ、日刊スポーツの鈴木庄一さんが手招きするので、その横のマスコミ用の予備席に座りました。オレ様ほどの男をどかして、いったい誰が座るんだろう？。そう思ったら見た事も無いような超デブ男が案内されてきました。プロレスラーになる事になった大里巌（新里一幸）です。当時の公称で身長170センチ、体重170キロ。

皆に「アンコ」と呼ばれて馴染んでいた様に見えたんですがネエ、確か1年くらいでやめました。「心臓が弱い」が表向きの理由になっていますが、実は若手レスラーを束ねていたミツ平井に目の敵にされていたのです。平井と言う人は、別に意地の悪い人ではなかったけど、人の好き嫌いがありましたからね。合わないタイプだったんでしょう。
何でも大里の父親は会社経営者で、プロレスに入って虐められないように、永源と安達（ミスター・ヒト）に金を掴ませて守ってもらっていました。二人と同じアパートで暮らしていたんですが、やっぱり無理でした。プロレスラーになったのも、「運動をやらないと、ドンドン体重が増えて早死にするから」というお父さんの意向だったと、安達さんが言っていましたけど、そりゃそうですよね、どこも大入り満員が続いていた当時でも、プロレスの前座でくすぶっているより、会社（工務店）の後継ぎになったほうがヨッポド金に成る。

デブも度を超すと健康に悪い事は言うまでも有りません。私（身長160センチ、体重70キロ）の様に、標準値よりほんのチョットだけ太っているのが一番良いらしいです。デブの世界記録はジョン・ミノックという人の635キロだそうですが、ランク上位者は５０まで生きません。早ければ20代、40代での死亡が多いですね。父親が、早死にを心配した大里も今どうしてるんでしょう？。
30年くらい前にアメリカでプロレスラーの早世が相次いで問題になりましたが、これは「ステロイド系筋肉増強剤による無理な体重増」というより一番の原因は麻薬。

尺八で昔の都山では太い管が好まれました。戦前の都山管は総じて太目ですよね。今は極太とされる8号サイズ（3寸8分）で、地方によっては「細すぎる」と言われたらしいです。初代都山が写真撮影に使っている尺八って太いですもんね。でも、これは当時としては体の大きかった都山にとって、このくらいの太さの尺八でないと、写真写りが良くなかったことも考慮に入れた方が良いと思います。
初代都山って尺八界最大のカリスマです。音楽的素養も低く、かつ純情な人の多かった当時にあっては、それこそ万単位の人から「神様扱い」されていたので、昭和に入ってからは、めったに人前では演奏しなかった事をみても、都山の卓抜さが分かります。「下手だったからか？」、そんなに突っ込まないで下さいよ。たしかに今日に残る音源を聴くかぎりでは上手くはないですわな。でも、戦前ですからね、当時のプロ達も似たようなものだったんと違いますか？。でも本拠を東京に移した後ですから、怪物・三世荒木古童と比較される事も嬉しくはないでしょう。都山の三世古童評、「あれは尺八の技師みたいなものだ」に万事現れています。都山は「年間の予算は小さい市の予算規模」とまで言われた大都山流のカリスマ経営者ですもんね・・・。

では太い尺八は良くないのか？。そう言う前に極太尺八を演奏用に使っているプロって、誰か知ってます？。私は知らないですねえ。頻繁に持ち笛を変えた横山勝也先生が40代前半の一時期に使っていた事くらいしか知りません。それも、すぐ手放しましたよ。
太めの管は操作性が悪い。太いと手穴が深くなり抜けが良くない。でも反対に細すぎると顎が安定せず、尺八の持ち味である「繊細極まる操作」がし難くなります。では、どのサイズが一番良いのか？。今のソフトに大きな変化が無いとすれば、4号（3寸4分）から6号（3寸6分）が良いと思います。こういう事も同一内径を作れる3Ⅾ製作だと、いろんなことが分かります。
でもこれは、尺八と云う楽器の話で、個人の嗜好はまた別ですからね。極端にくぐもった音を「古典本曲にはこれだよ」と言う人もいますし、操作性の必要のない曲を吹いている人もいますから、そこは楽器製作者の視点とは、また別です。

これは余話ですが、尺八界のプロで、ですよ、一番のデブは誰でしょう？。私が知る限りでは米谷威正（よねやたけまさ）ですね。今は知りませんが、前は120キロ有りました。でも彼の場合は、学生時代は柔道をやっていただけあって、「水膨れ」という感じではなく、オリンピックに出る柔道重量級の選手みたいな感じです。筋肉量が多いので、紋付袴だと冬でも控室で、ひっきりなしに汗を拭いていました。1995年でしたか、結婚するので大幅なダイエットをしましたが、結婚後すぐにリバウンドしました。
下っ端相撲取りは真冬でも浴衣1枚ですし、プロレスラーも人の目が無い時は薄着です。でも健康なのとは違いますからね・・・。「筋肉デブ」でも長生きで無い事は、柔道、相撲、プロレスを見てたらわかります。