木村筦山さんの同一焼き印の尺八が売られていました。でも、私の意見は、贋作というより、「何も知らない素人が工作で作って、何も知らないまま筦山を入れたのではないか」です。だって写真を見ても丸っきり出来ていない御粗末きわまりないシロモノではないですか。業界におけるレベルでも美しさではトップクラスの木村筦山管の偽物を作るなら、もっとしっかり作るでしょう。贋作は人が騙されるから贋作なんであって、あんなもの誰も信用しませんわ。私は偶然だと思いますがね。
同じような例に、あれよりマシですが、商品レベルとは言い難い豊浦鹿山管が有ります。善村鹿山さんの作と、レベルが違いすぎるので今は混同される心配は有りませんが、素人相手の中古市場や外国では、その限りではないですね。
何度も言う事ですが、今の一流製管師の贋作を作れる技術が有るなら自分の銘を立ち上げますって。仮に贋作を作って一儲けを企むなら、古道具屋を回って、少なくとも百年以上経っている尺八、これは古道具屋の奥で埃を被っていますから、それを5千円くらいで買って、有名古管の焼き印を押すことです。科学鑑定たとえば「Ⅽ14判定」にでもかけるならともかく、そうでなきゃ水掛け論、最悪でも骨董屋の常套手段「俺も本物だと思った」に持ち込めます。費用が何十万円もかかる科学鑑定などやりっこないのは、尺八の売値を考えても分かります。
もっと、かどうかは別として、やはり簡単なのは「地無管」ですね。最近、有名地無管を数十本、カラー写真で見ましたが、ありゃ分からない。基本的に細工が素人ですからね、細工の水準とか共通する技のクセが出る以前の技量です。だから、いったん贋作を作られると厄介です。
前にテレビのお宝鑑定団という番組でホンモンと鑑定され、250万円の鑑定額がついた「ひとよぎり」ですが、鑑定した人が尺八に関しては実は素人だったからって、テレビのショー番組をとやかく言うのは筋違いですが、それを、ある程度は真に受けて購入した人が「見て欲しい」と私の所に持ってきました。オレなんかに分ると思う?。冗談じゃねえよ、そんな事が分かるくらいなら、こんな商売やっていねえって、だってそれなら本物の「超能力者」だもの・・・。
私の印象は7分通りニセ。でも焼き印が有るわけじゃないから贋作ではないのです。ですから大阪芸大の志村哲先生と神田可遊さんに見てもらう様にアドバイスしました。彼等が分かると思ってではないのです。彼等が「分からない」と言ってくれれば、この世界に「ニセモノだ」と断言する人間はいませんよね。ですから、それであまたの骨董、美術品と同じく、めでたくファジー、「灰色領域入り」達成です。
一昨日、法政大学三曲会大学で箏を弾いていた同級生K→Ⅿから半年ぶりに電話が有りました。昔話の中で、「あの世」や霊魂の存在を信じているKに、「そんなもん、有る分けねえだろうが」と言って、「有るわよ、仕方のない人ね」と叱られました。なるほど世に「ファジー領域」は必要です。騙されて、命の次に大切なお金を取られなければ良いのであって、人が何を信じようと、それがその人の為になるなら良いのであって、他人が口出しする事ではないのでしょう。Kは美人なので、大学時代、性欲が哲学よりイデオロギーより、まして学問や宗教より大切だった男子学生達(つまりコジレ系以外の全員)に人気が有りましたが、そのピュアな心とスクエアな視野は昔の儘で、思えば私も詰まらぬことを言ったものです。たとえば、肉親を亡くして墓の前で手を合わせている人に向かって、「霊魂なんて有りません。それは単なる石ですよ」なんて言うバカはいませんがな。オレだって言わねえよ。
ファジーと言えば尺八の将来です。私は30年前に邦楽ジャーナル誌の求めに応じて、社内資料を発表しました。大雑把に言って。「尺八界は20年後(2012年)には半分になっている」という内容ですが、当時東京芸大にいた人に言わせると、教授達は「そんな事は無い、大橋は大噓つきだ」という意見だったらしいのです。そういう業者知識は大学教授には無理ですよ、守備範囲、役割分担が違う。でも、よりによって、そういう事を芸大の教授に訊くヤツも訊くヤツだけどね・・・。なんだかんだ言っても大学生だから純情です。
20年前、10年前と求められるままに公表してきましたが、その都度時間と共に「こりゃ、ひょっとすると本当だぞ」に変わり、この10年はもう疑う人はいなくなりました。
だって内容は大筋では全て当たりましたもの。当り前ですよ。底の浅い構造を持っていた尺八界の今の現状は30年前にハッキリ分かっていました。「経験科学の領域内に必然は無い」と言ったって、ある程度には分るからこそ将来の設計も出来るわけです。
この度、邦楽ジャーナル10月号で最後の発表をしました。最後というのは、もう本当に尺八の未来が分からなくなったからです。私が分からない以上は、世に分かる人はいません。だって、将来像がこれまでは鮮明に見えていたからこそ、私は、このコロナの中で売上を伸ばした唯一の尺八屋ですし、20年以上も尺八売り上げで1位なのです。また、これまでの推移のほとんど全てを当てたのです。でも、もう本当に分からない。でも、わずかながら見えている事も有ります。そこで最後の発表をしました。将来予想は本当にこれが最後です。
そこでお願いです。邦楽ジャーナル10月号を買ってください。このブログを読んで下さっている人達だけでも読んでください。
電話 042-472-3870 ファックス 042-420-1099 邦楽ジャーナル
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