見せ物小屋

子供のころの楽しみは多かったものの、縁日や祭りは格別でした。妖しいアセチレン灯の下の夜店で売っていた品は、子供の目には、どれも魅力的でした。
その中でも一番の人気は見せ物小屋です。　テンテンテン、テンテンテンの太鼓の音、口上、今も耳に懐かしい。　「可哀そうなのはコノ子でござい、親の因果が子に報い・・・」　この口上を真似て友達の家の前でやって、容姿や成績をカラカウと、からかわれた友達より早く家の人が怒って飛び出して来ます。「親の因果とは何だ～」　その2分後には、その子の家で仲良く遊んでいたんですから、イヤ～人が単純なままで生きられた良い時代でした。

いつも見せ物小屋に陳列されていた物はガラクタ、頭が二つ有る牛の剥製とか三つ目の蛇とか、子供だましの作りモノ。
「親の因果が子に報い」のカタワモノは知的障害者が多かったですね。
口上はだいたい「赤ん坊の時に山に捨てられて山犬に育てられて、蛇を常食していた」とか　「親が坊さんをいじめたので生まれた時から言葉を喋れない」　あるいは「お経しか唱えられない」、こんなとこで、あまり芸が無かったですね。
それで生きた蛇を食べたり、お経まがいのことをゴニョゴニョやれば生活がたつのですから、障害者虐待というより自立支援という方が近いのと違いますか？
人権がうるさく言われるようになって「カタワの見せ物」は無くなりましたが、はたしてどちらが幸せだったんでしょうか？ 前は小人プロレスとか小人喜劇もテレビ番組で有りましたが人権派の抗議で無くなりました。それを一番残念に思っているのは小人達だと聞きます。抗議を無視して「障害者プロレス」というのをやっている団体が有りますが、あまり「人権」とばかり言うと当然アンチテーゼも支持者を集めまっせ。

「差別だ」とか言って、言葉狩りをしたり、自主規制したりする人達がいますもんね、私もこれまで単行本を二冊出していますが、そこでは勿論出版社の方針に従いましたよ、でも差別語は「言われた側が嫌がる」というのが前提です。身障者でもカタワでも、どっちでも良いという身障者は私だけでは無いですよ。どんな言葉を新しく作ったって、差別i意識が有れば差別語だと思いますがね。

私は6年前に脳梗塞を発症して、以来右半身の自由を失いましたが、もともと私はお弟子さんが多く、脳梗塞になった後は、甥と長男も入ってきて尺八の品質は私が元気な頃より良くなったと言われます。
手も左を訓練して現在は支障無く使えますし、見知らぬ人達も親切にしてくれるし、年に10回以上も国内あるいは海外に出張できます。リハビリのおかげです。

でも、しかし、実は・・・尺八の演奏が出来なくなった事ほど残念なことはありません。健常者の時は尺八を吹ける有難さが分かりませんでした。
ずっと、片手で演奏できる尺八の開発に取り組んでいます。私以外にも脳梗塞などで尺八の吹奏を諦めた人は多いはずです。もう一度尺八を吹きたい、その思いです。