ああ、横山先生がいたらなあ

ほんと、どうにかなりませんかね、KSKさんよ・・・。このところ尺八の長管需要が拡大して、ついに2尺5寸管（G管）までが通常の注文の範囲に入てしまいました。そこで呼び名の混乱にホント困っています。

40年以前は、尺八吹きというものは音楽でなく「尺八という楽器でもあるモノ」を吹いていました。ですから、音楽的なことには関心が無く、合奏というものは、「複数の楽器で同時に演奏するだけ」だと認識していました。ですから、尺八の音程も寸法もマチマチ、そこまでは「民族楽器とはそういうもの」で、まだ容認できましたが、正寸、正律の区別すらついておらず、諸々の笑えないトラブルを引き起こしていました。しかも、息が正しく出ていない為に音が低く、「正寸の方が音が合う」と言うほど未熟な人達が「先生」と呼ばれて合奏に入り込む世界でした。
それを辛抱強く説明して、もう30年前には、その手の人達がいなくなった、そういう我々尺八流通業者の努力をチットは分かってくださいよ。
それで「ようやく」と思った矢先、長管における混乱が新たに出てきました。A管は2尺3寸管です。それを一部の人達が2尺4寸管と呼ぶ事が混乱の原因です。しかも「ほっとけばいなくなる愚か者」ではなく、実力も熱意、誠意も有るし、国際的に最もアクティブな活動をしている人達だから余計に始末が悪い。KSKさん、アンタの事ですよ。

少し聞いてください。A管の実寸法は大体2尺4寸５分です。ですから「A管を2尺4寸管」と言うのは理解できます。でも、Ⅽ管は２尺管で異論は無いですよね。ⅭからAまでにB。A♯、Aとありますな。ではAが２尺４寸管ならA♯は2尺２寸管ですか、２尺３寸管ですか。実寸が２尺２寸のB管は２尺１寸管ではなくて２尺２寸管が正しいのですか？。どっちにしろ２尺１寸管から２尺３寸管までの、いずれか一つが所属不明になります。さらに今は２尺７寸管（F管）まで注文が入ります。その結果、所在不明寸法は更に増えてしまいました。

技術改革で、今はあまり問題にならなくなったけど電力。そう、東日本がドイツ式の50ヘルツ、西日本がアメリカ式の60ヘルツで百年間日本人は不便な思いをしました。こんな事は前は沢山ありました。家電や自動車でもメーカーの都合でマニュアルが大きく違ったものです。それで何とか治まったのは、まだ世界が狭かったからです。人の移住も家電、自動車も需要もまだまだ少なかったからです。
かつての日本は尺にも曲、鯨、京と有って建築現場にすら混乱が生じたものです。また、とんでもない悲劇としては摂氏と華氏が併用されていた時代の日本で、「風呂の温度は100度（華氏）が適当」と聞いて、生まれたばかりの赤ちゃんを煮殺してしまった母親がいました。そう言う混乱トラブルが少しずつ「統一」の機運になって行ったのだと思います。

私は世界50か国の人に尺八を買ってもらっています。その為、尺八界にも「尺八共通語である日本語や、世界の二大言語である英語、中国語も話さない人が増えてきました。ですから、あまり複雑な説明は能力に余るのです。わかるでしょう、KSKさんの様に、良く知っている人達相手に教授しながら尺八を売っているんじゃないんですよ。尺八を吹いてて古典を全く吹かない人達すら珍しく無くなりました。今は尺八が世界に羽ばたく大切な時期です。どうか禍根を後世に残さないでください。やがては供給のどの部分にも日本人が関わらないケースすら出て来るに違いありません。それが国際化です。そうなったら用法の混乱は、もはや正せません。すでに外国では1尺8寸管ならワンポイントエイト、1尺6寸管ならワンポイントシックスと呼ぶのが一般化しつつあります。そうなってしまった上に、さらに尺八の呼び名が不統一では流通現場での混乱は避けようが有りません。

この「2尺4寸がA管」は横山勝也先生が言っていた呼び名です。でも、その頃とは尺八世界のスケールが違うのです。私は、「横山先生が生きていらしたらなあ」と心底思います。横山先生だったら面会して、直接事情を説明すれば、「なるほど分かりました。今後はA管は2尺3寸管と呼ぶようにしましょう」と、絶対に言ってくれました。そして御弟子にも、そう指示してくれました。そういうところは実に話が速かった。
もうそれは言っても仕方が無い。ですから御願いするのです。古屋さん、真玉さん、柿堺さん、石川さん、岡田さん、ここの時点で混乱を止めてください。貴方達は、かつての尺八師範達の様に何も知らないからメンツが何より大事、その為に頑固頑迷に陥った人達とは違います。メンツではなく単なる習慣でA管を２尺4寸管と呼んでいるのだと思います。ですから頼みます。どうか呼び名の統一に力を貸してください。