女性ハンディ
- 2022/06/26
- 10:36
一昨日、邦山会にいた宮坂鐘山から電話が有りました。宮坂は中学高校時代の同級生で、それぞれ別の大学に進学しましたが、奇しくも同じ尺八を吹くクラブに入りました。そういう分けで大学に入ってからも、よく顔を合わせ、共に貶し合いながら尺八を卒業まで続けましたわ。当時の大学尺八にあっては、例外的にプロ尺八奏者が出なかった1973年卒業組(全国何処の大学尺八でもゼロ)の中で、ヤツは公平に見て、かなり上手の部類に入りましたね。
そうそう50年近く前です、中央大学法学部1973年卒のジャンボ鶴田と初めて会った時に、「同じ法学部で宮坂って男を憶えていますか?」と訊いて、「中央の法学部って20クラス(今は40有ると聞きました)も有るんですよ」って戸惑われました。ナルホド、法政の日本文学科みてえに3クラスしかないってんじゃねえわな、それじゃ憶えてないのも当然か。だって、あんなにデカくて目立つ鶴田だって、宮坂は「当時は見た記憶が無いな」ですとよ・・・。
宮坂とは会うのも話すのも15年ぶりなので、お互いに老人、当然昔話しのマクラが30分くらい有って本題に入ります。ヤツの要件というのは、アメリカ在住で中学1年の姪御さんが、尺八に興味を持って、今度帰国(国籍が何処かは別として)した時に、尺八を購入したい希望が有り、ついてはアメリカの尺八界の事情も合わせて知りたい、そういうものでした。
アメリカは広大なので師匠探しが大変ですが、それは紹介も出来るし、地理的に何処も無理ならネットでのレッスンも今は有りますから、「案ずるより産むがやすしだ」と言いました。師匠探しは、「情報が無く、仕方が無いから手近な師匠につく」という、これまでの日本式が最も危険なのです。「日本では大学2年生より下手な大師範がゴロゴロいるって、オマエも知ってるよな」と釘を刺しましたが、それとヤツが気にかかったのは、古くて新しいテーマ「尺八は女性が吹いて、本当にハンディが無いのか?」でした。
「女性は尺八を吹く上でハンディが有る」と言った音楽評論家や学者は、これまでも存在しました。どれを採っても「素人評論の範囲」ですが、それで青木鈴慕、横山勝也といった人達をカッカッさせた事も有りました。青木、横山の両御大に限らず、何処の世界でも大家とは斯界の実情に通じていないのが普通ですから、「大学教授が、こんな幼稚な事を言っては困る」と怒るのは分かりますが、尺八界における学者の存在を過大評価している、何も影響なんて有りませんがな。嗤って済ませれば良いのに、彼等は気持ちが熱いですからね。
学者や評論家の意見が強い影響力を持つ世界であれば、尺八界も良い悪いは別として、また今とは違う在り方があったんでしょう・・・。
「尺八は女性にはハンディが有る」という見解を作り出している最大のものは、学者の素人評論ではなく、これまでの「日本人の思考と習慣」です。
① 昔は飲屋で「オネエちゃん、シャクハチやってんだって?」と関係も無いのに横から割り込んでくるドカタやボケナスサラリーマンがよくいました。今は云うヤツも気にする女性も格段に減りましたが、でも今もいる。こう言われて、気にして止める女性はいても、「嬉しい」と言う人は一人もいません。でも、宮坂よ、この点は全く関係無い。だってアメリカだもん。
② 「尺八は男性がやるモノ」だと日本人は、まだ何となく思っている。だけどアメリカだと全くここも関係無い。
③ 「相対的に男性より小柄な女性にとっては尺八は長い」。そう言ってもネエ、尺八の基本1尺8寸は江戸時代から変わらないですよ。当時の成人男子の平均身長って155センチ前後でした。私の頃でも、青木鈴慕、酒井竹保、海童道、村岡実、皆160センチ前後でしたね。酒井竹保が激賞した2人の長管名人・初代河野玉水、門田笛空。私の印象では御二人とも155センチくらいでした。
ここまでの意見は、いくら「尺八では素人」だとは言え、かりにも大学教授や学者であれば言わないでしょう。では次。だんだんと本質論に近くなります。
④ 「吹奏楽器は肺活量の少ない女性には向かない」、こういうイメージを持つ人は多い様です。確かに成人男子3500ccに対して、一般に女性は、その7割だと言われています。でも、管楽器に使う空気量って、その何パーセントというレベルの話ですし、ダイイチ尺八界に多い60歳以上の男性の肺活量は平均3000ccですよ。要は息の使い方ですって、息が続かなければ「息継ぎ回数」を多くすれば良いわけです。現役尺八プロの中に片肺を失った人もいますし、そういうケースは他の管楽器のプロにだっています。
プロレスのストロング小林は若い頃「肺活量8200cc」と言ってました。これは誇張の多いプロレスでの数字ではなく、ボデイビル時代のものですから信憑性が有ります。彼は覆面太郎という日本初の覆面レスラーとしてデビューしたのですが、その大田区体育館での初戦です。試合の終わった直後、私が控室に行くと、彼はマスクを脱いで顔中汗だらけで、息が切れて会話も儘ならない状態でした。まだプロレスのキャリアが無く、息の配分が出来ていなかったからです。こういう例から見ても肺活量なんて大した問題でも無いことが分るでしょう。
⑤ 「女性には極端に指先が細い人がいて、フルートの様に指孔に弁が無い尺八は塞ぐのに不便」。ナルホド、通常の尺八の手孔11ミリとして、中には塞ぐのに苦労する女性がいるかもしれません。私も最近、そう御自分でおっしゃる男性の為に1孔2孔9ミリ、3,4,5孔8ミリの尺八を製作しました。
江戸時代中期までの尺八って手穴が小さく、概ね9ミリ以下でした。確かに、これだと大音量は出ない。でも音楽に必要な音量が出ないわけではないです。音も音量の配分なのです。例えば歌、声量が多い人少ない人、皆それぞれに歌うでしょう。メリも手孔が小さいと不便で、それで「陰旋法採用」以来、段々と手孔が大きくなったわけですが、今は内径も研究されていて、昔ほどのハンディは有りません。
「尺八吹きの大半は音量は小さいし、今ではPAも使える」という消極的意見ではなく、9ミリまでの手孔であれば、普通に聴ける音量だということです。
ハンディって何ですかね?。ともかく予め決めるものでは無いと思うんですよ。野球はベースの構造から言っても、左利きの人の方が有利です。箏だって尺八と違って方向転換できない以上、明らかに右利きの人の為の楽器です。でも、それを含めてコントロール出来る範囲のハンディだからこそ皆がやるんでしょう。中でも「尺八における女性のハンディ」って、むしろ小さいと思うんです。
これで良いかね?、宮坂よ・・・。
そうそう50年近く前です、中央大学法学部1973年卒のジャンボ鶴田と初めて会った時に、「同じ法学部で宮坂って男を憶えていますか?」と訊いて、「中央の法学部って20クラス(今は40有ると聞きました)も有るんですよ」って戸惑われました。ナルホド、法政の日本文学科みてえに3クラスしかないってんじゃねえわな、それじゃ憶えてないのも当然か。だって、あんなにデカくて目立つ鶴田だって、宮坂は「当時は見た記憶が無いな」ですとよ・・・。
宮坂とは会うのも話すのも15年ぶりなので、お互いに老人、当然昔話しのマクラが30分くらい有って本題に入ります。ヤツの要件というのは、アメリカ在住で中学1年の姪御さんが、尺八に興味を持って、今度帰国(国籍が何処かは別として)した時に、尺八を購入したい希望が有り、ついてはアメリカの尺八界の事情も合わせて知りたい、そういうものでした。
アメリカは広大なので師匠探しが大変ですが、それは紹介も出来るし、地理的に何処も無理ならネットでのレッスンも今は有りますから、「案ずるより産むがやすしだ」と言いました。師匠探しは、「情報が無く、仕方が無いから手近な師匠につく」という、これまでの日本式が最も危険なのです。「日本では大学2年生より下手な大師範がゴロゴロいるって、オマエも知ってるよな」と釘を刺しましたが、それとヤツが気にかかったのは、古くて新しいテーマ「尺八は女性が吹いて、本当にハンディが無いのか?」でした。
「女性は尺八を吹く上でハンディが有る」と言った音楽評論家や学者は、これまでも存在しました。どれを採っても「素人評論の範囲」ですが、それで青木鈴慕、横山勝也といった人達をカッカッさせた事も有りました。青木、横山の両御大に限らず、何処の世界でも大家とは斯界の実情に通じていないのが普通ですから、「大学教授が、こんな幼稚な事を言っては困る」と怒るのは分かりますが、尺八界における学者の存在を過大評価している、何も影響なんて有りませんがな。嗤って済ませれば良いのに、彼等は気持ちが熱いですからね。
学者や評論家の意見が強い影響力を持つ世界であれば、尺八界も良い悪いは別として、また今とは違う在り方があったんでしょう・・・。
「尺八は女性にはハンディが有る」という見解を作り出している最大のものは、学者の素人評論ではなく、これまでの「日本人の思考と習慣」です。
① 昔は飲屋で「オネエちゃん、シャクハチやってんだって?」と関係も無いのに横から割り込んでくるドカタやボケナスサラリーマンがよくいました。今は云うヤツも気にする女性も格段に減りましたが、でも今もいる。こう言われて、気にして止める女性はいても、「嬉しい」と言う人は一人もいません。でも、宮坂よ、この点は全く関係無い。だってアメリカだもん。
② 「尺八は男性がやるモノ」だと日本人は、まだ何となく思っている。だけどアメリカだと全くここも関係無い。
③ 「相対的に男性より小柄な女性にとっては尺八は長い」。そう言ってもネエ、尺八の基本1尺8寸は江戸時代から変わらないですよ。当時の成人男子の平均身長って155センチ前後でした。私の頃でも、青木鈴慕、酒井竹保、海童道、村岡実、皆160センチ前後でしたね。酒井竹保が激賞した2人の長管名人・初代河野玉水、門田笛空。私の印象では御二人とも155センチくらいでした。
ここまでの意見は、いくら「尺八では素人」だとは言え、かりにも大学教授や学者であれば言わないでしょう。では次。だんだんと本質論に近くなります。
④ 「吹奏楽器は肺活量の少ない女性には向かない」、こういうイメージを持つ人は多い様です。確かに成人男子3500ccに対して、一般に女性は、その7割だと言われています。でも、管楽器に使う空気量って、その何パーセントというレベルの話ですし、ダイイチ尺八界に多い60歳以上の男性の肺活量は平均3000ccですよ。要は息の使い方ですって、息が続かなければ「息継ぎ回数」を多くすれば良いわけです。現役尺八プロの中に片肺を失った人もいますし、そういうケースは他の管楽器のプロにだっています。
プロレスのストロング小林は若い頃「肺活量8200cc」と言ってました。これは誇張の多いプロレスでの数字ではなく、ボデイビル時代のものですから信憑性が有ります。彼は覆面太郎という日本初の覆面レスラーとしてデビューしたのですが、その大田区体育館での初戦です。試合の終わった直後、私が控室に行くと、彼はマスクを脱いで顔中汗だらけで、息が切れて会話も儘ならない状態でした。まだプロレスのキャリアが無く、息の配分が出来ていなかったからです。こういう例から見ても肺活量なんて大した問題でも無いことが分るでしょう。
⑤ 「女性には極端に指先が細い人がいて、フルートの様に指孔に弁が無い尺八は塞ぐのに不便」。ナルホド、通常の尺八の手孔11ミリとして、中には塞ぐのに苦労する女性がいるかもしれません。私も最近、そう御自分でおっしゃる男性の為に1孔2孔9ミリ、3,4,5孔8ミリの尺八を製作しました。
江戸時代中期までの尺八って手穴が小さく、概ね9ミリ以下でした。確かに、これだと大音量は出ない。でも音楽に必要な音量が出ないわけではないです。音も音量の配分なのです。例えば歌、声量が多い人少ない人、皆それぞれに歌うでしょう。メリも手孔が小さいと不便で、それで「陰旋法採用」以来、段々と手孔が大きくなったわけですが、今は内径も研究されていて、昔ほどのハンディは有りません。
「尺八吹きの大半は音量は小さいし、今ではPAも使える」という消極的意見ではなく、9ミリまでの手孔であれば、普通に聴ける音量だということです。
ハンディって何ですかね?。ともかく予め決めるものでは無いと思うんですよ。野球はベースの構造から言っても、左利きの人の方が有利です。箏だって尺八と違って方向転換できない以上、明らかに右利きの人の為の楽器です。でも、それを含めてコントロール出来る範囲のハンディだからこそ皆がやるんでしょう。中でも「尺八における女性のハンディ」って、むしろ小さいと思うんです。
これで良いかね?、宮坂よ・・・。
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