邦星堂和楽器店ブログ

安倍元総理が暗殺されて早1ケ月、いつの間にか「統一教会叩きの一大キャンペーン」にすり替わっています。どうしてですかね？、統一教会の悪質な霊感商法なんて、前々からで、今更改めてご問題にすることでも無いと思うんですよ。誰がすり替えたか、まあそれは、いずれ明らかになるでしょうが、そこはいつもの成功体験ですわ。「明らかになった時には、もう人々はそんな事には関心を持っていない」。
統一教会に限らず霊感商法は、どの宗教でも大なり小なり存在するのと違いますか？。私の御客にもベンツを乗り回している有名な「高僧」に袈裟代として4百万円出した人がいます。本人も「ショウガないですよ、私が（集落の）檀家総代ですから」と苦笑いしていましたが、その4百万円払った日本最大級の仏教宗派だって、鎌倉時代には新興宗教だったんでしょう、本質論として何処が違うんですかね・・・？。
ともかく「統一教会に復讐したかった」という安倍暗殺の目的は、予期せぬ方向転化で最大の効果を挙げるに至りました。本当は暗殺が意味を持つような事態になってはイケナイのですがねえ・・・。

私の無信仰は周囲の皆が知っています。「寺や墓との付き合いは、オレの代で終止符を打つ。葬式は僧侶や御経無し、葬儀以後の法要は一切止める」と言ってありますから、親類が横から口を出す事もありません。
でも、これは私の事。他人が何を信じていようと、それは自由だと思いますから、他家の葬儀や法事にも出来るだけ顔を出しています。でも、宗教勧誘はキッパリ断っています。諦めの悪いヒトに言う最後の言葉、「霊魂やあの世など存在しません。神や仏は人が作ったモノです」。これでも食い下がる人が稀に存在します。宗教信者とは強靭な者ですなあ、ホトホト感心します。だから私は信じなくとも興味は有るんですよ・・・。
日本人の宗教観に最も近いのが、やっぱり中国だと思います。韓国や、良く知らなけどベトナムも似ているのでは無いですかね。この4つの旧漢字文化圏は、時としてビックリするくらい深層心理が似ていると感じます。基本は無宗教、それにプラスして民間信仰と祖先崇拝。

私は、憲法で「信教の自由」を保証した、今の日本の姿勢に賛成です。エラスムスの『愚神礼賛』を読むまでもなく、人とは愚かなモノであり、どんな時代にも宗教を必要とする人は、社会の一定数存在します。だから、大切な事は、「それが纏まって一つの大きなパワーを持つ存在にしない」という一点です。ですから、今の日本社会の様な新興宗教が数多くある社会状況は好ましい姿だと思います。
世界の多くの国は、巨大化した宗教勢力の起こす戦争に悩まされてきました。一神教の世界でも、宗教内乱こそ少ないまでも、異宗教国家同士が争う宗教戦争が大きな災厄でした。その点、日本はアメリカ等と共に、近世に入って宗教戦争が無かった幸運な国です。見解の相違は有れど、「島原の乱」が宗教内乱だったとしても、17世紀前半からは無いわけです。その頃のヨーロッパではトルコの攻勢に悩まされただけではなく、同じキリスト教徒同士でも新教と旧教で争っていました。カソリック連合軍がトルコ海軍を壊滅させた、有名な「レパントの海戦」でもプロテスタント勢力は何処も参加していませんよね。その理由が「カソリックはイスラムより悪い」ですから、面喰います。宗教心の薄いはずの中国や朝鮮も近代に入る直前でさえ、太平天国、東学党といった国家を揺るがす規模の宗教内乱に見舞われました。
日本でも、その前の戦国後期には、「一向宗」は大名にとって一大脅威でした。ですから、徳川家康が「一向宗」を東西二つの本願寺に分裂させて、エネルギーの集中を避けたのは大きく評価されるべきでしょう。日本で「一向宗」こと浄土真宗に次ぐ巨大宗派である曹洞宗も、大きくは永平寺と総持寺に分れますし、ある程度以上の大きな規模を持った仏教教団は分裂が当たり前です。こういった所に、歴史の苦い経験から学んだ日本民軸の知恵を感じます。すなはち「宗教を信じるのは自由。マルクスが言ったように阿片でもあるから体制不満を緩和できる。だが、一定以上の大きさに纏まって、大きなパワーを持つことは避けなければならない」。

では逆に、それぞれの個が小さくなりすぎたら？。この命題こそ尺八界が新たに突き付けられた難問です。新しく尺八を始める若い人達は個人でやってますものね。もともと芸術産業においては、「俺は自分でやってるだけだから、全体が大きくなっても小さくなっても何の関係もない」と言う人達が一定のパーセンテージで存在しない方が不自然です。
でも、ある規模を越えて縮小した芸術世界が、万年停滞から抜け出せないからこそ、芸術産業に携わる者は、何とかして業界規模を大きくしたいと思うのです。今は前より良いのか悪いのか知りませんが、戦前に隆盛を極めた薩摩琵琶、40年前はどういう状態だったかと言えば、まず第一人者でも琵琶演奏では生活が立たない。「琵琶で喰えると思う方がオカシイ」と言われていました。たしかに鶴田錦史や田中之雄と言った人達でも、琵琶と関係無い別の太い収入経路を持っていました。そう言う状況だと、演奏会やレコードの入手なども困難で、特に地方部では絶望的でしたでしょう。
また自分でやってみたいと思っても、一体どうやって師匠をさがすの？。楽器だって製作者は石田不識だけでしたから、納期、価格ともに供給元の石田さん任せです。関わっている人が少ないので演奏会を催すことも困難ですし、政府や地自体の協力が必要な大きなイベントも出来ません。「自分でやってるだけ」と言う人は「それでも良い」と言うかも知れませんが、そうなりたくないからこそ、これでも私は尺八界を大きくしたいと頑張ってきたのです。
でも、その反対に、日本における芸術産業とは、大きくなると、個人の自由に任せなければならない事にも、強制権を働かせたがります。「ハッキリと示せない力量の差」に価値基準を置く業界とは、そういうモノでしょうね。組織の成立の根幹がアヤフヤであれば、価値観の乱立は許せない事です。

尺八の現状は、「統制するパワーセンターは、ほぼ無くなっている」です。で、次に興隆期を迎えた時、組織を強くしないように注意しなければなりません。杞憂であるかも知れません。だって、次の時代には所属員に対して圧力を持たない組織しか大きくならないでしょうから。