自信と不安
- 2022/09/09
- 16:05
「大橋君、良かったら一緒にアルバイトをしない?」、大学1年の後期が始まった9月早々、箏を弾いていた同学年のⅯに誘われました。Ⅿは英文学部なので、日文の私とは教室ではあまり顔を会わせませんが、すぐ仲良くなりました。美人ではないが丸顔のカワイイタイプの女の子で、何より人なつっこい性格なので、中学高校と男子校で女性に慣れていなかった私が、当時、気楽に会話できた数少ない女性でした。
「(部室の)隣りの千代田印刷で私、バイトしているの。HさんとTさんも一緒よ。大橋君もどう?」。勿論二つ返事でオーケーしましたとも。隣の会社ですから、昼休みや仕事が終わった後、すぐ尺八の練習に戻ってこれますし、私も丁度バイトを探していましたので、「渡りに船」でもありました。
バイトは今思いだしても楽しかった。時給はマアマアでも、仕事は楽だったし、それよりなにより一日中、若い女性3人と一緒にいられるのですから、1か月チョット、夢の様に過ぎましたな。
女の子達は勤務時間の間中、仕事しながらオシャベリしてました。私は時たま話を振られて答えるくらいです。いやー、若い女の子だけの会話って面白いですねえ。普段の部室での態度と全然違うんですよ。今だと当たり前と分かりますが、その頃はまだ女性には「余程に親しくならないと男には見せない顔」が有るって知りませんでしたもの。でも3人とも人柄は悪くないので、別に嫌な感じはしなかったですね。
ある時、Tさんに話を振られました。「ねえ、大橋君、男の人達って普段どんなことを話してるの?」、その後は3人が一束で矢継ぎ早です。「ねえ、女の子の話なんかする?」、「たとえばよ、皆クラブに好きな女の子なんか居るの?」。
「そりゃいますよ」、うっかり話に乗った私の負けですね。実はこの話題こそ、女の子にとって最も聞き出したい事でした。当然「誰が誰を好きか」白状するまで許してくれません。ノラリクラリと逃げていたんですが、段々追い詰められていきました。そしてついに女性ならではの切り札を切ってきました。
「そうよね、私なんかを好きな人なんかいないわよね。誰もいないから言えないんでしょ」。3人が口々に嘆くふりをします。私も意外でしたよ、明るくカワイイⅯはもとより、1年上の二人、色白でスラリとした清楚なHさんもアイドル級の美貌のTさんも、それは魅力的な女性でした。どの娘にもクラブ内で性欲を燃やしているヤツが複数いました。でも、3人とも法政女子(横浜に在る付属の女子高)出身なので、男と付き合った事が無かったんですわ。また、当時の男は男で、同じクラブ内に密かに思いを寄せている女の子がいても、態度に表すのはヨクヨクの事、ましてアタックなんてしませんでした。
ですから、女性も「自分が男の目にどう見えているんだろうか?。自分て綺麗なのだろうか?」と自信が無かったんですね。
誰が誰に劣情を抱いているか、すっかりゲロった後で、ファン達の存在を確認して上機嫌の3人に訊きましたよ。「普段の態度を見てて分かりませんか?」、「だって私なんか美人じゃないし」、「イヤ3人とも魅力的ですよ。だって鏡を見れば、自分が綺麗かどうか分るでしょう?」。でも、どうもそうではないみたいなのです。ウスウスは判断がつくらしいんですが、それでも他人が口に出してハッキリ言ってくれないと確信が持てないらしいんです。確かに美人女優でも一人一人違いますしね、だから比べたって分からない。
でも、その前に「鬼も十八、番茶も出花」って言うでしょう、ファンの多い少ないは有っても、若い男から見て全然魅力の無い娘って、はたしているものなんでしょうか?。私は会った事が有りませんねえ。当時、女に関しては最も信頼できた木稲先輩も断言しました。「そんな子なんか絶対にいないよ。男ってバカだから、ちょっと優しくされると、すぐポーとなる。そうなりゃアバタもエクボだよ」。参考になったなあ・・・。
世の中、オールマイティとかパーフェクトでなくたって良いんですよ。自分、他にいない自分の魅力ですって。だからこそ世の中は面白いんです。
尺八のプロの場合を考えると、昔はどうして「自分はプロになろう」と思ったんですかね。自分の音を聞ける今は分かりますよ。でも、声ほどでなくとも、尺八の音も骨導音が支配しますから、ほんの70年前までは自分の出している音は自分だけは分らなかったんです。つまり鏡の無い状態で自分の容貌を判断するようなものだったのです。録音して自分の演奏をチェックする事も不可能だったし、音程なんかアナタ、尺八吹きが正確な数値判断が出来る状況になって、まだ50年経っていないですよ。ですから、やはり周りの賞賛ですわ。褒められているうちに、その気になった。
尺八でプロを目指すって、誰でも初めは、言ってみれば「オレ(私)って美男(美女)じゃん」だよ。そういう自惚れが強くない人は、悪い事は言わない、尺八のプロにならない方が良い。だって芸術には勝ち負けとか数字記録みたいな客観評価って無いんだもの。田嶋直士、ネプチューン、三塚泉州、中村明一、初代石垣征山とか私の若い時からの知り合いで、皆ほぼ同時に尺八で生活出来るようになりましたが、誰も「俺は先行きプロで生活できるんだろうか?」なんてクヨクヨ悩むヤツなんかいませんでしたよ。
プロとして生活できるかどうかは知りませんよ。今度は「自分だけの魅力で金を稼げるかどうか」ですからね。それはやってみない事には分かりませんですがな。ですから、とりあえずは他人の賞賛を頼り、自分を信じるしかないと思います。今はユーチューブとか有って、開かれた世界になってます。昔と違って駄目でも納得が行くと思いますがね。
好きな娘がいてアタックして振られたって、40過ぎると「良いかったなあ」と思えますよ。行動しなくても後悔しないなら、それで良いんですがね。でも、とりあえずバットを振らない限りヒットも出ませんわな・・・。
「(部室の)隣りの千代田印刷で私、バイトしているの。HさんとTさんも一緒よ。大橋君もどう?」。勿論二つ返事でオーケーしましたとも。隣の会社ですから、昼休みや仕事が終わった後、すぐ尺八の練習に戻ってこれますし、私も丁度バイトを探していましたので、「渡りに船」でもありました。
バイトは今思いだしても楽しかった。時給はマアマアでも、仕事は楽だったし、それよりなにより一日中、若い女性3人と一緒にいられるのですから、1か月チョット、夢の様に過ぎましたな。
女の子達は勤務時間の間中、仕事しながらオシャベリしてました。私は時たま話を振られて答えるくらいです。いやー、若い女の子だけの会話って面白いですねえ。普段の部室での態度と全然違うんですよ。今だと当たり前と分かりますが、その頃はまだ女性には「余程に親しくならないと男には見せない顔」が有るって知りませんでしたもの。でも3人とも人柄は悪くないので、別に嫌な感じはしなかったですね。
ある時、Tさんに話を振られました。「ねえ、大橋君、男の人達って普段どんなことを話してるの?」、その後は3人が一束で矢継ぎ早です。「ねえ、女の子の話なんかする?」、「たとえばよ、皆クラブに好きな女の子なんか居るの?」。
「そりゃいますよ」、うっかり話に乗った私の負けですね。実はこの話題こそ、女の子にとって最も聞き出したい事でした。当然「誰が誰を好きか」白状するまで許してくれません。ノラリクラリと逃げていたんですが、段々追い詰められていきました。そしてついに女性ならではの切り札を切ってきました。
「そうよね、私なんかを好きな人なんかいないわよね。誰もいないから言えないんでしょ」。3人が口々に嘆くふりをします。私も意外でしたよ、明るくカワイイⅯはもとより、1年上の二人、色白でスラリとした清楚なHさんもアイドル級の美貌のTさんも、それは魅力的な女性でした。どの娘にもクラブ内で性欲を燃やしているヤツが複数いました。でも、3人とも法政女子(横浜に在る付属の女子高)出身なので、男と付き合った事が無かったんですわ。また、当時の男は男で、同じクラブ内に密かに思いを寄せている女の子がいても、態度に表すのはヨクヨクの事、ましてアタックなんてしませんでした。
ですから、女性も「自分が男の目にどう見えているんだろうか?。自分て綺麗なのだろうか?」と自信が無かったんですね。
誰が誰に劣情を抱いているか、すっかりゲロった後で、ファン達の存在を確認して上機嫌の3人に訊きましたよ。「普段の態度を見てて分かりませんか?」、「だって私なんか美人じゃないし」、「イヤ3人とも魅力的ですよ。だって鏡を見れば、自分が綺麗かどうか分るでしょう?」。でも、どうもそうではないみたいなのです。ウスウスは判断がつくらしいんですが、それでも他人が口に出してハッキリ言ってくれないと確信が持てないらしいんです。確かに美人女優でも一人一人違いますしね、だから比べたって分からない。
でも、その前に「鬼も十八、番茶も出花」って言うでしょう、ファンの多い少ないは有っても、若い男から見て全然魅力の無い娘って、はたしているものなんでしょうか?。私は会った事が有りませんねえ。当時、女に関しては最も信頼できた木稲先輩も断言しました。「そんな子なんか絶対にいないよ。男ってバカだから、ちょっと優しくされると、すぐポーとなる。そうなりゃアバタもエクボだよ」。参考になったなあ・・・。
世の中、オールマイティとかパーフェクトでなくたって良いんですよ。自分、他にいない自分の魅力ですって。だからこそ世の中は面白いんです。
尺八のプロの場合を考えると、昔はどうして「自分はプロになろう」と思ったんですかね。自分の音を聞ける今は分かりますよ。でも、声ほどでなくとも、尺八の音も骨導音が支配しますから、ほんの70年前までは自分の出している音は自分だけは分らなかったんです。つまり鏡の無い状態で自分の容貌を判断するようなものだったのです。録音して自分の演奏をチェックする事も不可能だったし、音程なんかアナタ、尺八吹きが正確な数値判断が出来る状況になって、まだ50年経っていないですよ。ですから、やはり周りの賞賛ですわ。褒められているうちに、その気になった。
尺八でプロを目指すって、誰でも初めは、言ってみれば「オレ(私)って美男(美女)じゃん」だよ。そういう自惚れが強くない人は、悪い事は言わない、尺八のプロにならない方が良い。だって芸術には勝ち負けとか数字記録みたいな客観評価って無いんだもの。田嶋直士、ネプチューン、三塚泉州、中村明一、初代石垣征山とか私の若い時からの知り合いで、皆ほぼ同時に尺八で生活出来るようになりましたが、誰も「俺は先行きプロで生活できるんだろうか?」なんてクヨクヨ悩むヤツなんかいませんでしたよ。
プロとして生活できるかどうかは知りませんよ。今度は「自分だけの魅力で金を稼げるかどうか」ですからね。それはやってみない事には分かりませんですがな。ですから、とりあえずは他人の賞賛を頼り、自分を信じるしかないと思います。今はユーチューブとか有って、開かれた世界になってます。昔と違って駄目でも納得が行くと思いますがね。
好きな娘がいてアタックして振られたって、40過ぎると「良いかったなあ」と思えますよ。行動しなくても後悔しないなら、それで良いんですがね。でも、とりあえずバットを振らない限りヒットも出ませんわな・・・。
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