物理や天文学の話なんか聞いていると、あまりのスケールに時に呆然としますな。人間が具体的にイメージする宇宙世界はセイゼイが太陽系くらいなものでしょう。さて太陽と地球の距離は?。中学で習いましたが1億5千万キロ。つまり秒速30万キロの光が8分かかって進む距離です。では、太陽系の果てに在る冥王星は?。エッ、「今は冥王星は惑星じゃ無い」って。アンタねえ、野暮は言わないの。「ゆとり教育」の支持者である私には円周率は3だし10も3でキッカリ割れるの。何処までだっけ、そうそう冥王星まで60億キロ。だから光でも5時間ちょっとかかる。そして1光年てえと9兆4600億キロ。こうしてみると宇宙の半径は100億から150億光年だから…、暇だったら歩いて何年かかるか計算してみて。
何が言いたいか、つまり大きさ的に宇宙が地球だったとしたら、太陽系なんて電子顕微鏡でなきゃ見えないんですわ。まして地球は・・・。
私は他人を無神論者にする趣味は持っていませんが、神が宇宙を作ったとか、そのホンの一部としてもパーツとして不足な地球人と対話するとか、天文学的思考では現実感皆無なのですがね。
では広い宇宙に人間以外の知的生命体がいるのでしょうか?。天文学者は「無数の星には地球と同じような環境の星が何千億も有り、知的生命体も存在するのでは」と言いますし、生物学者は「環境がどうあれ、知的生命体誕生は偶然の積み重ねであり、存在するとは思えない」と言います。確率から言うと「100億匹の猿が100億年間、出鱈目にワープロを打って、始めから終わりまで1字の違いも無くメルビルの『白鯨』やドストエフスキーの『罪と罰』を仕立て上げる様なもの」なんだそうです。どっちが正しいか私には分かりませんよ。でも、前にも言いましたが、ともかくも私や貴方が存在しているという途方も無い確率的奇跡に較べたら、宇宙の星の数(何京か何垓かは知りませんが)なんて少ないモノです。そう思えばこそ私は思い上がっているのです。「俺こそ奇跡だ」、そして貴方もまた奇跡です。
時間についてもそうで、物理学者は時に途方も無い事を言います。宇宙の終わり、つまり物質を構成する陽子や中性子が消えてなくなる時間に、「1京年の何千兆倍の時間」とか言いますが、これって実感が有りますか・?。でも、こういう事を私は、とりあえず信じます。イイカゲンなデマカセではなく、何万何十万と言う学者や研究者の科学的な観察と実験を基礎に持っている以上は、私は信じますよ。次の真面目な実験によって新しい見解が出るまでは・・・。
小さな地球にいて宇宙の実相に迫ろうとしているのですから、人間て凄いと思いませんか?。
私達が吹いている、この尺八ってやつ、これはこれで「謎に満ちた宇宙」とも言えます。とは言っても「竹が音に反映する」とか「音に影響するから金属は使用しない」とかの幼稚な話ではありませんぜ。これら30年以前の迷信は、今日では、主張する人はほぼ無くなりました。今では展示会で質問される事も稀になりました。でも、20世紀後半でも、量子論の大科学者スティーブン・ホーキングの講演会で「貴方の言う事は間違っている。この神が造った大地は球体ではなく平らな板の様なモノで、天体は大地を中心として回っている」と異論を述べた御方がいたそうですから、いまだ「音に竹が関わっている」と思っている人がいることは確かでしょう。私も70を過ぎたので、このての人を納得させるような時間の無駄はしません。そういう点を含めて「文化」と受け止めています。
この前の静岡の展示会場で、「内吹き外吹き」について御客に訊かれました。その方は、気圧の上下移動についての知識も有り、尺八内で起きている現象についても知識がありました。そして「それが原因で起こる現象の理由」に質問が及びましたが、私は「分からない」と答えました。事実知らないんです。
人間の生存域の自然現象は、単純な物理理論の組み合わせで、だいたい説明できますし、「オカルト派」以外の人をほぼ納得もさせられるくらいに案外簡単な原理である事が多いのです。でも、実験に基ずく証明が不足していると結論付けられないのです。尺八で起こっている事も、ほとんど全部「ベルヌーイの定理」と「流体力学」で説明出来るはずだと思います。ただ、まだ実験が不足していて分からない事も多いのです。尺八の物理も、ついに「補足証明」の段階に入りました。
「内吹き」は常に尺八内に強い流速が有り、その為、「内吹き」の尺八内は常に(外吹きや外気に対して)低気圧です。したがって「内吹き」は管内気圧によって外に跳ね飛ばされた息が、外気圧で戻るのが「鳴り」の原理ですが、これも相対的に弱い気圧で戻ります。分かっているのは、ここまでです。ここで疑問が出ます。内気圧が低いのに、どうして高い外気に向かって息が跳ね上がるのか?。息はクラリネットのリードみたいに、それ自体が跳ね上がる能力を持ちません。息と歌口周辺の気圧バランスだと思いますが、私には分かりません。
アドヴァイザーを依頼した川村葵山さんが「その先が訊きたくてワクワクしていました」と言いましたが、私には無理です。誰か確かな所を教えてよ。恩にきるからさ・・・。
とにかく、「内吹き」でも川村葵山さんはじめ、真玉和司、(故)石垣征山、野村峰山(人間国宝)、田辺頌山、林鈴麟、船明紫雲など名人も多いのですから、「内吹きだから駄目」と言う事はありません。私は、よく野球に例えます。1塁ベースが右に在る以上、左利きの方が有利です。でも右利きの大選手も多いですね。
尺八は物理と文化の両方の面で興味を持たれています。そして、物理面では急速に解明が進み、私の様な年齢の者でもワクワクします。文化は文化、物理は物理、ようやくそういう時代が来ました。私の若い頃は大家の「私は経験から分かる」で話が終わりました。
スポンサーサイト