ジェンダー
- 2023/03/30
- 17:54
1976年だったと思うんですが、横山勝也先生の高円寺の稽古場で言われました。「僕も世界のいろんな国に行かせてもらいました。それで思うのですが、大橋さん、日本て先進国なんでしょうか?」。
「大橋にモノを訊くなんて最低の人間だぞ」と法政大学三曲会のОBなら誰もが言うでしょうが、相手は私の事を「世界を股にかける青年実業家」だと買い被っていた横山師です。こういう場合に知ったかぶりをしなくては私の虚栄心が許しませんよ。
ですから「横山先生のおっしゃる事は分かります。私も先進国ではなく、日本て先進国と中進国(当時の言葉)の間のように感じます」と答えました。
西欧やアメリカを見てきた横山先生の目に、1976年当時の日本は、「まだまだ欧米には及ばない」と映ったのは当然だったと思います。日本が豊かになってから、まだ間がない時代です。戦前はGNP(当時の数え方)ではアメリカの15分の1.それが敗戦で1回国家破産をして、「貧乏な四等国と自ら卑下する境遇から、ようやくGNP世界3位、アメリカの5分の1にまで盛り返したんです。1960年代まで、日本のテレビはアメリカのホームドラマを流していましたが、その圧倒的な「豊かさの差」の前に、誰もが驚嘆し憧れました。そう言った面は、1970年代前半には追いつきました。
でも欧米は、百年も前から豊な社会だったので、個人の財産はもとより、社会資本の蓄積という点で、日本とは比較になりませんでした。ちなみに、この1976年の日本の1人あたりのGNPは4千4百ドル(1ドル=240円)世界第16位です。でも、道路、橋梁、通信はじめ社会インフラのお粗末さは「中進国レベル」だったと思います。高速道路だって、始めから終わりまで繋がっていたのは東名と名神だけだったんですよ。通勤ラッシュは今でも有るけど、この頃は去年起きた梨泰院のハロウィンの事故みたいなもんが、何時起きたって不思議は無かった・。そして公共マナーが酷く悪かったですね。
文化面ですが、当時はテレビが主導していて、まだ先進国の様に嗜好の細分化が起きず、大多数の人達がテレビの提供する画一的なモノで満足していました。ですから、その時代に流行していた歌や映画は、好き嫌いを別にして皆が知っていました。いまだ日本は、夥しい分野で後進性を抱えていました。
価値観や嗜好の細分化や多様化、これなくして「先進国」なんて恥ずかしくて言えませんぜ。欧米も基本的には「伝統」を重んじる保守的な社会だと思います。でも、戦後の日本より約5,60年早く豊かな社会を築き上げていただけに、個人の好みを主張出来る段階に達していました。
現在の東アジアで、北米、西欧に匹敵する大国、先進国と言うレベルの経済力、自由度、個人所得、国内市場規模を有する国は日本と韓国、台湾の3か国です。そして、この3国は、いずれも地理的には孤立した「島国(韓国は事実上の島国)」です。ですから文化的には解放されていて、金銭的には何でも享受可能な反面、「いまだ半ば閉ざされている」という面白い形態を持ち得ています。
でも韓国は日本ほど国内市場が大きくないので、音楽はいちはやく海外市場をターゲットにしました。日本はいまだに歌詞、メロディ重視、独自の市場を守っています。もう世界の音楽の主役はロックではありません。「ブラックミュージック」に移りました。かつてのジャズと同じく、ロックはマイナー音楽への道を歩んでいます。でも、日本にいると、この推移はピンときません。またアメリカでは去年はレコードの売り上げがⅭⅮを上回りました。でも、これも日本では遠い話です。でも、もう「遅れている」と受け取る人は少ないです。
では、今の日本で最も後進性を示しているものは何か?。なお欧米を手本としなければならない点は何処か?。誰でも男女の機会不均等を挙げると思います。日本のジェンダーギャップ指数は116位。これは欧米の基準とは言え、それでもヒドイですね。世界でも下位、それより下は、「男女不平等は当然」というイスラム圏とか紛争国とかですからね。16世紀に日本に来たルイス・フロイスは「日本の女性はヨーロッパより格段に自由で解放されている」と驚嘆したのに、その後は、この有り様ですわ。
箏三絃はもともと女性の方がプロは多く、また長く盲人に生活の場を提供してきた世界でした。そう言った点では早くにジェンダー平等を達成した世界に見えます。尺八も近年急速に女性が参入してきまして、女性プロ尺八家も多数輩出しております。今では女性が尺八を吹く事は、あまり違和感のない風景となっています。本当に良い時代になったものだと思います。
でも、尺八界は今だ女性にハンディを科す世界でもあります。「ドカタやボケナスサラリーマンがカラカウのか?」って、アホ、もう居酒屋文化は、その段階を脱しているわ。ガラの悪いドカタ飲屋なんか、もう何処を探しても有りゃしねえよ。
「女性は尺八に向いていないって聞いた事があるぞ」ってか、確かに、そう言った学者も評論家もいた。でも、それで影響を受けた人なんて存在しない。だって彼らは尺八の素人だもん。
「尺八の手孔の大きさ、長管演奏、孔の間隔などは女性にはハンディが有る」、なるほど大分マシな意見になってきた。でも、ハンディって「それに最適な人」以外は有るものなんです。たとえばトロンボーン。「最も伸ばした状態だと腕の短い日本人にはキツイ」と言われます。でも、昔の人は谷啓を憶えていますでしょ。彼って160センチの身長ですが、日本屈指のトロンボーン奏者ですわ。ピアノだって片手のプロがいるくらいです。
そのハンディの最たるもの。まず若い女性の師匠に男の年配の弟子は付きにくい。弟子への注意、指導がイマイチ踏み込めないで、ある範囲にとどまる。結婚とか子育てと尺八活動の両立が難しい。ざっと挙げても、今の社会そのものです。これが解消されるのは尺八界では日本社会の改善より、かなり早いと思いますよ。現在の新規参加者は尺八だと女性が3割。地方によっては5割を越えてるみたいです。
尺八界全体の女性比率が3割くらいになれば、意識の変更が起きます。笛やフルートの様に、女性奏者に皆が特別に意識しなくなる。先に挙げた悪条件も大筋の所で解消されている。それが10年後だと思うのです。その頃、尺八界も先進国並みのジェンダー平等を打ち立てられるのです。
「大橋にモノを訊くなんて最低の人間だぞ」と法政大学三曲会のОBなら誰もが言うでしょうが、相手は私の事を「世界を股にかける青年実業家」だと買い被っていた横山師です。こういう場合に知ったかぶりをしなくては私の虚栄心が許しませんよ。
ですから「横山先生のおっしゃる事は分かります。私も先進国ではなく、日本て先進国と中進国(当時の言葉)の間のように感じます」と答えました。
西欧やアメリカを見てきた横山先生の目に、1976年当時の日本は、「まだまだ欧米には及ばない」と映ったのは当然だったと思います。日本が豊かになってから、まだ間がない時代です。戦前はGNP(当時の数え方)ではアメリカの15分の1.それが敗戦で1回国家破産をして、「貧乏な四等国と自ら卑下する境遇から、ようやくGNP世界3位、アメリカの5分の1にまで盛り返したんです。1960年代まで、日本のテレビはアメリカのホームドラマを流していましたが、その圧倒的な「豊かさの差」の前に、誰もが驚嘆し憧れました。そう言った面は、1970年代前半には追いつきました。
でも欧米は、百年も前から豊な社会だったので、個人の財産はもとより、社会資本の蓄積という点で、日本とは比較になりませんでした。ちなみに、この1976年の日本の1人あたりのGNPは4千4百ドル(1ドル=240円)世界第16位です。でも、道路、橋梁、通信はじめ社会インフラのお粗末さは「中進国レベル」だったと思います。高速道路だって、始めから終わりまで繋がっていたのは東名と名神だけだったんですよ。通勤ラッシュは今でも有るけど、この頃は去年起きた梨泰院のハロウィンの事故みたいなもんが、何時起きたって不思議は無かった・。そして公共マナーが酷く悪かったですね。
文化面ですが、当時はテレビが主導していて、まだ先進国の様に嗜好の細分化が起きず、大多数の人達がテレビの提供する画一的なモノで満足していました。ですから、その時代に流行していた歌や映画は、好き嫌いを別にして皆が知っていました。いまだ日本は、夥しい分野で後進性を抱えていました。
価値観や嗜好の細分化や多様化、これなくして「先進国」なんて恥ずかしくて言えませんぜ。欧米も基本的には「伝統」を重んじる保守的な社会だと思います。でも、戦後の日本より約5,60年早く豊かな社会を築き上げていただけに、個人の好みを主張出来る段階に達していました。
現在の東アジアで、北米、西欧に匹敵する大国、先進国と言うレベルの経済力、自由度、個人所得、国内市場規模を有する国は日本と韓国、台湾の3か国です。そして、この3国は、いずれも地理的には孤立した「島国(韓国は事実上の島国)」です。ですから文化的には解放されていて、金銭的には何でも享受可能な反面、「いまだ半ば閉ざされている」という面白い形態を持ち得ています。
でも韓国は日本ほど国内市場が大きくないので、音楽はいちはやく海外市場をターゲットにしました。日本はいまだに歌詞、メロディ重視、独自の市場を守っています。もう世界の音楽の主役はロックではありません。「ブラックミュージック」に移りました。かつてのジャズと同じく、ロックはマイナー音楽への道を歩んでいます。でも、日本にいると、この推移はピンときません。またアメリカでは去年はレコードの売り上げがⅭⅮを上回りました。でも、これも日本では遠い話です。でも、もう「遅れている」と受け取る人は少ないです。
では、今の日本で最も後進性を示しているものは何か?。なお欧米を手本としなければならない点は何処か?。誰でも男女の機会不均等を挙げると思います。日本のジェンダーギャップ指数は116位。これは欧米の基準とは言え、それでもヒドイですね。世界でも下位、それより下は、「男女不平等は当然」というイスラム圏とか紛争国とかですからね。16世紀に日本に来たルイス・フロイスは「日本の女性はヨーロッパより格段に自由で解放されている」と驚嘆したのに、その後は、この有り様ですわ。
箏三絃はもともと女性の方がプロは多く、また長く盲人に生活の場を提供してきた世界でした。そう言った点では早くにジェンダー平等を達成した世界に見えます。尺八も近年急速に女性が参入してきまして、女性プロ尺八家も多数輩出しております。今では女性が尺八を吹く事は、あまり違和感のない風景となっています。本当に良い時代になったものだと思います。
でも、尺八界は今だ女性にハンディを科す世界でもあります。「ドカタやボケナスサラリーマンがカラカウのか?」って、アホ、もう居酒屋文化は、その段階を脱しているわ。ガラの悪いドカタ飲屋なんか、もう何処を探しても有りゃしねえよ。
「女性は尺八に向いていないって聞いた事があるぞ」ってか、確かに、そう言った学者も評論家もいた。でも、それで影響を受けた人なんて存在しない。だって彼らは尺八の素人だもん。
「尺八の手孔の大きさ、長管演奏、孔の間隔などは女性にはハンディが有る」、なるほど大分マシな意見になってきた。でも、ハンディって「それに最適な人」以外は有るものなんです。たとえばトロンボーン。「最も伸ばした状態だと腕の短い日本人にはキツイ」と言われます。でも、昔の人は谷啓を憶えていますでしょ。彼って160センチの身長ですが、日本屈指のトロンボーン奏者ですわ。ピアノだって片手のプロがいるくらいです。
そのハンディの最たるもの。まず若い女性の師匠に男の年配の弟子は付きにくい。弟子への注意、指導がイマイチ踏み込めないで、ある範囲にとどまる。結婚とか子育てと尺八活動の両立が難しい。ざっと挙げても、今の社会そのものです。これが解消されるのは尺八界では日本社会の改善より、かなり早いと思いますよ。現在の新規参加者は尺八だと女性が3割。地方によっては5割を越えてるみたいです。
尺八界全体の女性比率が3割くらいになれば、意識の変更が起きます。笛やフルートの様に、女性奏者に皆が特別に意識しなくなる。先に挙げた悪条件も大筋の所で解消されている。それが10年後だと思うのです。その頃、尺八界も先進国並みのジェンダー平等を打ち立てられるのです。
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