後もどり

ドイツでの写真。良い出来だったので、褒めて写真を撮りました。欧米でレストランに入ると、入れ墨をいれた給仕人を良く見ます。日本では接客商売に入れ墨はアウトですね。欧米で入れ墨が普通のファッションになって20年くらいでしょうか。今は男も女も入れています。

小学生の頃です。入れ墨に憧れました。その頃は、まだ大半の家に「内風呂」が無く、週に1，2回銭湯に行った時代です。入れ墨はヤクザの専売特許ではなく、大工、左官、とび職、板前等、各種の職人にも彫ってる人がいました。勿論、カタギが入れるんですから、本職ヤクザみたいな「錦絵」や胴を一周させる「どんぶり」では無く、体の１部にチョット入れるくらいなものです。今、アメリカやヨーロッパで皆がやってるようなモノだと言えば、分かり易いでしょう。粋な男達を風呂屋で見ていて、オレも欲しいと思いました。
当時、小学校の男子は秘密結社を作っていて、手首や二の腕などの見えない所にボールペンでマークを入れて団員の証にしました。ちなみに私は小学３年の時、スペード団と言う結社を主催していて、団員は手首にスペードを書きます。そして身分を問われた時に見せるのです。「オレに手を出してみろ、他の団員が黙っちゃいねえぞ」で、結構な実利も有りましたな。他にも💀（ドクロ）党とかブラック団とかも有ったな。でも、３月も経たないうちに、担任教師の「すぐ止めなさい」の一言で終わりになりましたっけ。
でも私が欲しかったのは、ボールペンで描いたのではなく、もっと本格的な入れ墨です。「何でだ？」ですって、カッコ良いじゃありませんか。入れ墨を見せて「俺はヤクザだぜ」と言えば、なんぼオレが小学４年生だって、だと世間の狭かった当時のオトナだもの、震え上がるに決まってますよ。でも脅そうってんじゃねえぜ。駄菓子屋なんかに行く、そしてだ、、駄菓子だの三文玩具だのを40円くらい買ってよ、袖口から入れ墨をちらりと見せて、ポンと50円玉を出して、「釣りは要らねえよ、バアサンに甘いモノでも買ってやりな」とか言ったら、カァ～、痺れる、男前だぜ・・・。

高校になって、Kという友人で入れ墨に興味を示したヤツがいました。あれこれ相談を受けるうちに、「じゃあトモカク入れてみよう」と言う事になりまして、まず下書きに徳利の画を二の腕に万年筆で描き、深く入らないように、縫い針の先5ミリ位の所に糸を巻き付けて刺しました。そしたら徳利の首から肩に行くくらいで、もう「大橋、もう止める、痛えは」と泣きが入りました。根性が無えヤツだわ・・・。
そしたら下書きのインクが入ってんでやんの。そいつは1年遅れで法政の法学部に入って来まして、見たら、まだ消えていなかったです。エルみたいな線が薄く入ってるだけですから、せっかく骨を折った私への感謝の念も希薄でしたな。
いつの頃からか温泉やサウナで「刺青お断り」の注意書きを見る様になりました。それがどんどんエスカレートして、プールや海水浴場もダメだってよ。暴力団を締め上げる為の警察からの「指導」と言う名の半強制ですが、これ今じゃ困ってるだろうな。何処も外国人客でイッパイの現状を考えたら、どう線引きするかで頭を抱えますよ。欧米では入れ墨も普通に見ますし、東アジアでも入れている人が多くなりました。それどころか日本でも若者を中心としたファッションになりつつありますな。もう「入れ墨お断り」は時代に合わなくなっています。

『魏志倭人伝』によれば、3世紀の日本では、男子は普通に入れ墨をしていたらしいです。「身体髪膚之を父母に受く…」とか言って体を加工する事を親不幸と考える、儒教の影響が強かった時代の中国でも、体制に順応する気持ちが無い人達が入れたらしいです。『水滸伝』に出て来る九紋龍の史進とか花和尚・魯智深とか有名ですよね。実在の皇帝でも「後周の太祖・郭威は額に雀の入れ墨が有って、若い女性をキャーキャー言わせていた」というのを読んだ事が有ります。でも、今の中国文化圏では日本と同じくらいの比率ですかね。エッ？、だから入れている人の比率ではなくて、そういう男に憧れる女性の比率が、ですよ。まずは「キャーキャー」が有って、それを通り越せば、普通の風景になります。
入れ墨は、かつての日本も明らかにファッションでした。それが「入れ墨イコール暴力団」という警察の洗脳で、単に「カッコ良いから」と言う理由で入れた人達も、現在は多大なハンディを負っているのですわ。こういうのって「入れ墨が悪いか」の本質論とは、また別ですわ。少なくとも「入れ墨イコールやくざ者」というステレオタイプ思考は時代に合っていませんね。
「じゃあオマエは今でも欲しいか？」と言われたら「欲しくない」です。別に痛い思いをしてまで入れたくない。何よりの理由は、1度いれたら消せないという点がネックですね。消す為には大変な手間と時間がかかります。

尺八でも表面に文字や絵を彫る人がいます。「地無し系」に多いですかね。これは、もう消せません。それに、転売は難しい。でも個人の趣味ですから、他人は関係無いでしょう。
しかし、加工、これは人間で言うと整形でしょう。それって、やる人が多いですが、100パーセントやる前より悪くなっています。「当たり前だ。で無けりゃ再調整を頼むわけが無い。上手くいったら、そのまま使っているわ」。そういう意見も有りますがね、その前に持ってる尺八でも加工して有るのを沢山見ていますよ。素人が根拠も無く加工して、それで良くなったらプロは必要無い。何でもそうでしょうが。
謡口やアゴ当たりには個人差が有りますが、それだって結構なお金を出して買ったんでしょう、素人がイジっても平気なんですかね？。ここ３0年は、プロとして生計を立てている製管師は良く研究していますし、自分なりの確信で尺八を製作しています。。前は素人製管師も多かったし、民謡や琴古では素人と差の無い人が尺八を売っていましたが、そんな時代は昭和と共に終わりました。
歌口、内径は独立しているようで、互いに連動している部分が多いのです。いじって何かを得る事も有るでしょうが、何かを失うでしょう。何を得て何を失うか？、加工は、それをプロに訊いてからにした方が良いと思いますが、・・・。なんせ一度やったら完全には元に戻せないのですから。