内吹き外吹き。この奇妙な現象を私が目のあたりにしたのは25年くらい前です。
三塚(泉州)さんと船明(紫雲)さんが私の家にいらして その折に見せて下さいました。「大橋さん、面白いものをお見せしますので、ロウソクを用意してください」と三塚さん・・・
三塚さんがロの乙を吹き、火のついたロウソクを管尻に持って行くと炎は僅かに揺れるだけ。それが口元に持って行くと炎は一瞬にして消える。そして船明さんは、その逆。
つまり三塚さんは完全な外吹き、船明さんは完全な内吹きなのです。こういう現象が有ることを恥ずかしながら私はそれまで全く知りませんでした。この二人ほど高度な吹奏力を持ち、しかも典型的な外吹きと内吹きで、一つの工房で共同作業していたということが無ければ、もっと発見が遅れたとと思います。
外吹き内吹きを、カリ吹きメリ吹きと混同している人がいますが、全く別の現象です。この現象を詳しく調べた菅原久仁義さんにお聞きしたところ、プロ尺八家の約三分の二が外吹き、三分の一が内吹きだとの事です。
少数派の内吹きの名人達。 亡くなった石垣征山、田辺頌山、林鈴麟。そして我師匠・青木鈴慕もどうやら内吹きらしいのです。三塚さんは「内吹きは良くない」との見解をお持ちですが、内吹きはハンデイが有ることは事実らしいですが、それでも、これだけの名人がそうなのですから、内吹きでも悲観することは無いです。
野球は左利きの方が理論的に有利だと言っても、右利きの大選手も多いですからね。
「内吹きだと不利だから、外吹きに換えました」とおっしゃる方がいますがね、まだ本当に「変わった人」なんか見たことないんですけど・・・
「自分がどっちなのか知りたい」とおっしゃる人も多いですが、最も簡単な見分け方。ロの乙、必ずロの乙です。それを吹いている時に、他の人に歌口の所と管尻に手を当てて、どちらの方が息が多く出ているかを見てもらいましょう。ほとんどの人が「あんまり変わらない」と言われるでしょう。つまり下手なのです。「内吹きを外吹きに変える」とタワゴトを言う前に、どちられでも良いですから、とりあえず、どちらかハッキリ分かる様にしましょうね。
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