ドリアン
- 2023/05/21
- 09:42
リンゴ、梨、柿、スイカ、ミカン、桃、葡萄、これらは私の子供の頃にも有りました。昭和30年代はパイナップルは全て缶詰でした。また当時はバナナが政治利権による独占輸入で、とても高く、病気や遠足の時しか食べられませんでした。日本人になじみの無い熱帯フルーツでも、バナナだけは、台湾を領有していた、まだほんの10数年前までの安くて美味かった記憶が残っていて、高くても売れたからこそ利権に出来たのです。
レモンだって統制品だったのです。、レモンの輸入自由化が公表された日の朝、横浜港にレモンを満載した貨物船が着岸しました。自民党の河野一郎の雇った船です。政治家と組めば、こういうミエミエのボロ儲けが通用した時代も有ったんですわ。今は無いってんじゃネエけどね・・・。
いずれにしても果物となると日本は種類も少ない。その点、熱帯は種類、量ともに宝庫と言うにふさわしいですな。私が熱帯で買った初めての果物はランブータン。香港の市場で買いましたが、とても安く、そのイソギンチャクの様なグロテスクな外形と痺れる様な甘さが印象に残りました。以来、熱帯に足を延ばす度に、市場には名も分からない果物が豊富に有って目を見張りました。ドリアン、マンゴー、パパイア、マンゴスチンはじめ随分たくさんの種類を食べましたが、,どれも凄く美味しくて、熱帯旅行の楽しみの最たるものです。その幾種類かは今では日本でも手に入りますが、産地の5~10倍の値段ですから買う気がしません。
私も大好きな「果物の王」と言われるドリアンですが、「笑ったけど笑えない話」が有ります。メロンとチーズケーキとソフトクリームを混ぜた様な味で人気が有りますが、問題は、その強烈な臭い。ですから、多くの航空会社やホテルでは持ち込み禁止です。
10年ほど前、上海で仕事をした時、出発間際に中国の商売相手が「土産に」と海南島産のドリアンを持ってきました。中国の南の果て海南島は、靄齢、慶齢、美齢の宋三姉妹の如く配偶者(孔祥熙、孫文、蒋介石)と共に歴史を動かした美人だけでなく、ドリアンも産するのです。林嵐山が、そのまま飛行機に持ち込もうとするので、「やっぱマズイよ」と私が反対し、上海空港のコーヒーショップの女子店員が「欲しい」と言うのであげてきました。
成田に向かう機内での事、そばにいた中国人乗客が「何か酷い臭いがする」と騒ぎだしました。ドリアンを入れていたカバンが匂ったのです。アメリカ人のスチュアーデスが林のカバンを見つけて、物凄い剣幕で英語で捲くし立てます。「機内消臭の支払いや出発が遅れたら賠償金を求めるかも知れない」とまで言うので、あまりにも大袈裟なので、私が思わず大笑いすると、ますますイキり立って、「笑い事では有りません」と怒ります。同行していた善村鹿山さんが、「何事が起ったか?」と心配するので、「何でも有りません。騒いだ乗客の手前、大袈裟に抗議しているだけです」と言いました。だって実物は無いんだし、カバンは機内持ちこみ検査を通っているのですもの・・・。
それにしても、ドリアンの臭いって凄いですね。短時間入れていたカバンすらアウトです。
実は、このドリアンは熱帯フルーツの例外として、現地で検査証明書さえもらえば、日本への持ち込みはオーケーなのです。熱帯植物の多くが持ち込み禁止なのは、害虫が日本に入るからですが、ドリアンの虫は日本の植物には付かないし、たとえ沖縄であっても寒さに耐えられないのが理由です。でも、だからと言って林嵐山の行為は正当化出来ません。一度は検疫無視で持ち込もうとしたのですから、私が止めなければ、悪くすると「3百万円以下の罰金または3年以下の懲役」で、言ってみれば、国家転覆、要人暗殺、爆弾テロに次ぐ重大犯罪です。いくら未遂とは言え、私も林みたいな重犯罪未遂犯を友人に持って、とても恥ずかしい。
このドリアンの様に異常な臭気を嫌って手を出さない人もいれば、平気どころか、それ自体が魅力だと言う人もいます。こういうのって日本で思いつくのはクサヤです。またトリュフやマツタケも民族が違うと評価されません。昭和40年代までの日本だと、ニンニクが駄目でした。韓国の生エイを発酵させたヤツ、あれ強いアンモニア臭ですが、我慢しているのか臭いも魅力なのか、一度好きだと言う人に訊いてみたものです。
同じ物が、ある人には生理的嫌悪感を感じさせ、別の人には官能的なまでの恍惚感すら与える。こういう人間生理の不思議は、そのまま「芸術の不思議」です。醜いと感じていたモノに美を見出してしまう。ではどうしてか?。簡単に言うと慣れ。だってイヤって、つまりは人間が先天的に受け付けない少数のモノを除けば、不快な記憶でしょう。ならば、全部、全員とは限らないが、慣れると嫌悪感が蠱惑感に変わる場合が有るし、そこまでではなくとも、嫌悪感を感じなくなる。蛇を気持ち悪いと思うのは、心理学者によれば、人間心理のかなり根深い部分だそうですが、それだって食料にしている人達は、慣れと言うより、「食物としての記憶」が積み重なって、平気になってしまう。中米人の好物イグアナとかフランス人の好きな蛙、カタツムリ。タコ、イカ、ウナギ皆そうですよ。
言わば「人間の生物としての適応力」ですかね。この能力が有ったればこそ、昆虫さえも生きられない極地にまで住んでいるように、人類は環境適応力を武器に、単一種の生物としては最大級の生息域を持てました。故に今日まで絶滅を蒔逃れました。
アフリカ東部にいた人類の祖先が、その場所に固執していたら、おそらく気候変動による食料難か疫病か、あるいは生活圏を争い殺し合ったか、いずれにしろ絶滅していたと思います。
様々な物を食料化出来る雑食性。工夫で新しい土地に移っても生きられる適応力。新規の環境を求める冒険心。こういった事が生き残りに必須だと思えばこそ、もう30年前から尺八は、そう言う方向で動いているのです。様々な土地に根差したソフトも新たに尺八レパートリーに加えるべく、世界に出て行ってます。
先は発展か絶滅か、それは分かりません。ただ「邦楽界」というものの中にだけいたら、すでに生存環境が末期ですから滅びる。それは間違いありません。
レモンだって統制品だったのです。、レモンの輸入自由化が公表された日の朝、横浜港にレモンを満載した貨物船が着岸しました。自民党の河野一郎の雇った船です。政治家と組めば、こういうミエミエのボロ儲けが通用した時代も有ったんですわ。今は無いってんじゃネエけどね・・・。
いずれにしても果物となると日本は種類も少ない。その点、熱帯は種類、量ともに宝庫と言うにふさわしいですな。私が熱帯で買った初めての果物はランブータン。香港の市場で買いましたが、とても安く、そのイソギンチャクの様なグロテスクな外形と痺れる様な甘さが印象に残りました。以来、熱帯に足を延ばす度に、市場には名も分からない果物が豊富に有って目を見張りました。ドリアン、マンゴー、パパイア、マンゴスチンはじめ随分たくさんの種類を食べましたが、,どれも凄く美味しくて、熱帯旅行の楽しみの最たるものです。その幾種類かは今では日本でも手に入りますが、産地の5~10倍の値段ですから買う気がしません。
私も大好きな「果物の王」と言われるドリアンですが、「笑ったけど笑えない話」が有ります。メロンとチーズケーキとソフトクリームを混ぜた様な味で人気が有りますが、問題は、その強烈な臭い。ですから、多くの航空会社やホテルでは持ち込み禁止です。
10年ほど前、上海で仕事をした時、出発間際に中国の商売相手が「土産に」と海南島産のドリアンを持ってきました。中国の南の果て海南島は、靄齢、慶齢、美齢の宋三姉妹の如く配偶者(孔祥熙、孫文、蒋介石)と共に歴史を動かした美人だけでなく、ドリアンも産するのです。林嵐山が、そのまま飛行機に持ち込もうとするので、「やっぱマズイよ」と私が反対し、上海空港のコーヒーショップの女子店員が「欲しい」と言うのであげてきました。
成田に向かう機内での事、そばにいた中国人乗客が「何か酷い臭いがする」と騒ぎだしました。ドリアンを入れていたカバンが匂ったのです。アメリカ人のスチュアーデスが林のカバンを見つけて、物凄い剣幕で英語で捲くし立てます。「機内消臭の支払いや出発が遅れたら賠償金を求めるかも知れない」とまで言うので、あまりにも大袈裟なので、私が思わず大笑いすると、ますますイキり立って、「笑い事では有りません」と怒ります。同行していた善村鹿山さんが、「何事が起ったか?」と心配するので、「何でも有りません。騒いだ乗客の手前、大袈裟に抗議しているだけです」と言いました。だって実物は無いんだし、カバンは機内持ちこみ検査を通っているのですもの・・・。
それにしても、ドリアンの臭いって凄いですね。短時間入れていたカバンすらアウトです。
実は、このドリアンは熱帯フルーツの例外として、現地で検査証明書さえもらえば、日本への持ち込みはオーケーなのです。熱帯植物の多くが持ち込み禁止なのは、害虫が日本に入るからですが、ドリアンの虫は日本の植物には付かないし、たとえ沖縄であっても寒さに耐えられないのが理由です。でも、だからと言って林嵐山の行為は正当化出来ません。一度は検疫無視で持ち込もうとしたのですから、私が止めなければ、悪くすると「3百万円以下の罰金または3年以下の懲役」で、言ってみれば、国家転覆、要人暗殺、爆弾テロに次ぐ重大犯罪です。いくら未遂とは言え、私も林みたいな重犯罪未遂犯を友人に持って、とても恥ずかしい。
このドリアンの様に異常な臭気を嫌って手を出さない人もいれば、平気どころか、それ自体が魅力だと言う人もいます。こういうのって日本で思いつくのはクサヤです。またトリュフやマツタケも民族が違うと評価されません。昭和40年代までの日本だと、ニンニクが駄目でした。韓国の生エイを発酵させたヤツ、あれ強いアンモニア臭ですが、我慢しているのか臭いも魅力なのか、一度好きだと言う人に訊いてみたものです。
同じ物が、ある人には生理的嫌悪感を感じさせ、別の人には官能的なまでの恍惚感すら与える。こういう人間生理の不思議は、そのまま「芸術の不思議」です。醜いと感じていたモノに美を見出してしまう。ではどうしてか?。簡単に言うと慣れ。だってイヤって、つまりは人間が先天的に受け付けない少数のモノを除けば、不快な記憶でしょう。ならば、全部、全員とは限らないが、慣れると嫌悪感が蠱惑感に変わる場合が有るし、そこまでではなくとも、嫌悪感を感じなくなる。蛇を気持ち悪いと思うのは、心理学者によれば、人間心理のかなり根深い部分だそうですが、それだって食料にしている人達は、慣れと言うより、「食物としての記憶」が積み重なって、平気になってしまう。中米人の好物イグアナとかフランス人の好きな蛙、カタツムリ。タコ、イカ、ウナギ皆そうですよ。
言わば「人間の生物としての適応力」ですかね。この能力が有ったればこそ、昆虫さえも生きられない極地にまで住んでいるように、人類は環境適応力を武器に、単一種の生物としては最大級の生息域を持てました。故に今日まで絶滅を蒔逃れました。
アフリカ東部にいた人類の祖先が、その場所に固執していたら、おそらく気候変動による食料難か疫病か、あるいは生活圏を争い殺し合ったか、いずれにしろ絶滅していたと思います。
様々な物を食料化出来る雑食性。工夫で新しい土地に移っても生きられる適応力。新規の環境を求める冒険心。こういった事が生き残りに必須だと思えばこそ、もう30年前から尺八は、そう言う方向で動いているのです。様々な土地に根差したソフトも新たに尺八レパートリーに加えるべく、世界に出て行ってます。
先は発展か絶滅か、それは分かりません。ただ「邦楽界」というものの中にだけいたら、すでに生存環境が末期ですから滅びる。それは間違いありません。
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