都山流の譜面

どう考えても尺八の譜面表記として都山譜に勝る物は有りません。五線譜は尺八譜として見た場合には適当とは言い難い、一つの音程を尺八は複数の出し方をしますし、手孔の移行も五線では表記しずらいですね。
異論は有るでしょう。琴古には都山に無い手が有り都山譜では表記できないことも事実ですし、五線譜のように曲の流れが波の形になって見えるという利点も有りません。にもかかわらず私は全てを考慮しても尺八に関しては都山譜が最高と判定します。

ところで、ここでは都山譜の優位を解説することが主旨ではありません。もう20年以上前になりますが、琴古流本曲を全て都山譜で出しました。モチロン私が、です。そのイキサツを話ましょう。
ことの発端は、国際研修館の海童道曲の都山譜での出版を都山流楽会が拒否したことです。しかも「邦楽ジャーナル」に載った拒否のコメントには「もしやれば弁護士と相談して取り締まる」と余計なことまで言っていましたので、それなら私がやるから「本当に取り締まれるものなら、やって見せてもらいましょう」と言うわけで出版しました。

私は当時、初代中尾都山の著作権の在りかも、都山流楽会が何を所有しているかも知っていました。また都山譜による琴古流本曲を出版するにあたって、新都山流の「後見さん」にも、当時の日本尺八連盟の事務局長であった木本勝山さんからも「異議は唱えない」との確言を得ていました。この表記法には、成立のいきさつからも、また譜面表記の常識からも都山流が権利を主張できない確固たる理由が有ります。少し調べれば誰にも分かることです。

「それはそうかも知れないが、それにしろ都山流と喧嘩になるだろう、商売する上でマイナスだろう」と、もし言う人がいたら、その方は尺八界の姿が見えていません。都山流楽会は、他の世界で立派に仕事してきた人達が運営する集団です。尺八の世界しか知らない世間知らずの個人が主催する団体ではないのです。こういう事でキレて、本当に当時の顧問弁護士・中坊公平さんに「取り締まって欲しい」と相談して、呆れられるなどのことは有りえません。予想される反応は間違いなく「完全無視」です。
そんなことは有り得ませんが、もし理事達が頭に血が上り「大橋を徹底的に干す」という通達を出したとします。当然それに同調する人は出ます。しかし、その何倍かの人から「面白いヤッチャ」と支持が入ります。別に独立した生計を持つ成人男子の集団というものの複雑さ面白さです。だからこそ倫理的根拠の無いことでは都山流楽会とは争えません。

そう、安心して、この便利な譜面を使って何でも翻訳転記しましょう。そうなれば、この譜がいかに優れた物か、あらためて都山流の人も認識するでしょう。