もう20年になります。私はかつて「岐路に立つ尺八」という本を出しましたが、あれから尺八界は岐路を衰退方向に曲がってしまいました。もう岐路に戻ることはありません。今は分かる、きっと、どんなことをしても20年前に繁栄方向に舵をきることはできなっかったのだと思います。
これから尺八界は、と言うより流や会派は消滅にむかい下り坂を急降下して行くのですが、楽器としての尺八が無くなるわけではありません。「それなら良いじゃないか」と言うかもしれませんが、もっと軟着陸できていれば、今の現役プロの苦境は緩和されていたと思います。
これから尺八は短期的には「シルバービジネス」として成立します。短期と言っても、どのくらいの時期かは分かりません。ただ、この先しばらくは確実にそうなります。それはそれで確定してしまえば、シルバーには遅かれ早かれ誰もがなるのですから、産業として安定します。
これからの尺八は60過ぎの人が新規参入の主体ですから次のように変わります。
熱心になんてやりません。あくまで老後の趣味、仲間作りです。
師範になるのに10年かかるなら初めから免状は取得しません。70過ぎて師範になっても仕方ないですし、尺八にそこまでの思い入れは有りません。
年金暮らしで、他にやりたいことがタクサン有るので、価格の高い尺八なんて買いません。
今のシルバーはいわゆる「全共闘世代」ですぜ、「権威」なんぞ信用してかからないです。
若いころから西洋音楽になじんできた世代です。血筋だけでの家元が尊敬を勝ち得るのは容易なことではないですわ。
世間を渡って、ともかくも停年まで大過なくすごしてきた人達です。穏やかに見えても、実は厳しい目で見ています、世間しらずのプロ尺八家では「技能教え屋」と思われてしまいます。これまでの人生経験で「技能」はたくさん教わってきていますので、余程に教える側に魅力が無いと、その範囲でのことと受け止められます。
若い弟子が年配の師匠に習うのと違い、尺八も師匠も、しょせん人生終盤の一風景でしかないのです。人の人生の中での重要度が違います。
シルバーは「きわめたい」より「楽しみたい」が優先しますから、趣味は浅く広くです。つまらなければ、すぐやめます。今さら何十年もかかって、一つの境地を確立したいとは思いませんから、負担も軽いものしか認めません。
「そんなのイカン」と言ったところで、カルチャーでしか人の入ってきていない今の現状を見れば、どうしたって、そうより他に成りようがないですわな。傾向としては「シルバービジネス」に対応した人がプロとして生きていけます。 「フザケルナ」とご自分の信念を貫くのも良いでしょう。皮肉でなく、それも大切なことです。そういう姿勢が評価されて人気が出ることだってあります。
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