サラ金

私が初めてサラ金の戸をくぐったのは大学4年の時でした。私は別に必要なかったのですが、友人に頼まれたのです。そいつは何らかの事情が有って（見当はつきますがね）、要するにサラ金に断られたのです。それまで学生相手のサラ金が有るとは知りませんでした。金の無い学生に担保も無しに金を貸してくれるとは思いませんでした。
初めて行ったサラ金は簡単に貸してくれました。金利は月９分ですけど、それは質屋と同じですから別にどうということはありませんし、ダイイチいくら金利が高くとも払うのは私ではありません。
クチの軽い私がクラブで言い回ったところ、たちまち法政大学三曲会の演奏会にサラ金の社長がご祝儀を持ってくるまでになりました。お世話になっていた部員は２０人近かったでしょう。セイガクのクズですね。私も尺八を一本買えるくらいの利子を運びましたけどね・・・。

それまで法政大学三曲会様の御用達は質屋です。ある時、私が「利アゲ」に行くと質屋に呼び止められました。私の先輩が家重代の家宝だと言って尺八を持ち込んだのです。それで五千円せしめたのですが、実は垣根の竹で作った先輩お手製のブッコヌキです。質屋はうすうす気がついたらしく、くれぐれも流さないように先輩に伝えて欲しいと言っていました。下宿学生の家からの仕送りが月三万円の時代ですから質屋の目が蒼く光るのも分かります。
以来、法政大学三曲会は信用を失いましたのでサラ金は「渡りに船」でした。

私の所へ前はよく古道具屋から尺八の目利きの依頼が有りましたが、質屋から問い合わせが来たことは皆無です。質屋は質草に多様な品を持ち込まれるので、自分の鑑定眼にプライドを持っています。今の様にサラ金の金利が規制されている時代にも、相変わらず月9分の高金利が許されているのはサラ金か古物商かの判断がファジーだからでしょう。

私がプロレスで給料を貰った頃、東富士が癌で亡くなったと聞きました。東富士は相撲の横綱で、引退後プロレスラーになった人です。力道山と折り合いが悪く、プロレスを辞めた後、しばらくは相撲の解説者をしていましたが、その後サラ金を始めました。有名な武富士です。武井保雄の武、東富士の富士。もし東富士が生きていたら武富士はあれほど大きくならなかったのと違いますか？なにしろ東富士は有名なお人好しでしたから。
そのサラ金の雄として「我が世の春」を謳歌していた武富士も会社更生法申請ですから諸行無常、栄枯盛衰を痛感しますなあ・・・。