尺八家の収入の変遷

昔の尺八家は貧乏だったと聞きます。戦前で途方もなく稼いだ人と言えば中尾都山ですが、それ以外ではあまり稼いだ人を知りません。強いて言うなら川瀬順輔ですかね.。
戦前で一番良かった昭和10年代でも内実は厳しかったと言います。

お金が入ってきても、プロ尺八家は体面を保つ為や交際費に出費も多く、尺八界の第一人者達でも実は金銭的に困窮していたという話は、その御子孫達がショッチュウ話していました。「後を継ぐな」ということは多くの人が言われたそうです。また奥さんが息子がお父さんのマネをして尺八のプロになることに反対したり、娘さんが尺八家に嫁ぐのに反対したりしていました。

戦後の高度経済成長が有って、尺八家の暮らしも見違えるように良くなったように見えますが、それは大型社中の形成に成功した人とか一部のスター達の話しで、大半の人は同年輩のサラリーマンに収入は遠く及びません。今も年収一千万円以上という人は誰に聞いてみても10人いません。これが尺八、いや日本におけるプロ音楽家の実態です。

30年くらい前にダン・池田さんが自分の年収を六百万円と公表しました。あれほど有名でテレビにも頻繁に出ていた人でもそのくらいなのです。
また十何年か前、女優の松坂慶子の夫のギタリスト高内春彦さんを「アイツは慶子のヒモだ」と松坂慶子の父親が罵倒していましたが、そのジャズギタリストとしての年収は七百万円で、これは一流の収入だそうです。
ピアノで国際的なコンクールに入賞するクラスの人でも年収は2～300万程度と聞きました。

尺八を将来の仕事にしようと思っている若い人、こういう事をハッキリ承知したうえで覚悟を決めて、この世界に入ってきなさいよ。