破門

今の尺八界で破門って有るんでしょうか？今は聞きませんが、私の若いころには破門された人達がいました。私が直接知っている人は青木鈴慕門下以外にはいませんから、もう４０年前には珍しいことだったのでしょう。

ところで破門って何ですかね、ヤクザの世界では破門と絶縁が有り、破門はケジメをつければ許される事が有りますが、絶縁はダメ、未来永劫その組織に戻れません。同時に破門状、絶縁状が回り、もし対象となった者を拾ったなら、その組織に表立って喧嘩を売ったことになります。
私の師匠の青木鈴慕は筋を通すことにやかましく、破門する場合はキチンと破門状を出し、若いころは箏の先生にも破門状を回したと言われています。それを知って使った人の演奏会には本人はモチロン、一門の人達も出演拒否です。いろんな感想が有るでしょうが、私はこういう強い姿勢を示す人がいても良いと思います。破門処分を受けた人達のことは良く知っていますが、落ち度が有ったとは思いません。結局は見解の相違でしかありませんが、自分がこうと思ったら押し通す、それで良いじゃありませんか。「師弟関係を断つ」それだけの事ですから。
後の悶着を怖れて破門された者を使わない人もいるでしょうし、捨てる神あればナントやら、「面白い自分が使おう」という人もいる、これが大人の世界の面白さです。

今の尺八界では何をしても怖いことは、もう無いでしょう。２０年くらい前、高平さんが理事長だったころの都山流楽会ですと時として厳しい姿勢で臨むことも有りましたがね・・・。今だと仮に破門処分を受けても「それで何か困ることって有るのか？」という感じですね。
昔の尺八界、たとえば初代中尾都山の在世中ですと今と全く違った状況になります。都山からは数多くの流派が分離独立しましたが上田流を除いては、ある規模以上に成長した所は有りません。上田にしても独立当初から都山からの妨害を受けていました。
長く朝鮮にいて２４人もの職格者を出していた島原帆山先生を広島に戻したのも上田対策です。朝鮮の大地盤を放棄して広島に帰った島原先生もスゴイですが、戻せた都山のスゴサは今日の感覚では到底計れません。

今の尺八状況では、たとえ何をしでかして、どういう処分を受けたにしろ「鬱陶しい事になったもんだ」という以上の事態にはならないでしょう。なにしろ有効な報復手段が無いんですからね。こういう時代にこそ青木先生のような方が貴重だと思うんですがね・・・.。
べつに破門行為を奨励しているわけじゃなくて、硬派の師匠も必要だと思うだけです。