ある虚無僧の死
- 2015/07/06
- 19:15
もう10年以上前かと思いますが、小田原で、ある虚無僧が死にました。自殺だという事です。
仮にHさんとしましょう。Hさんは私の地元・小田原で尺八で暮らしていました。亡くなった時が50前後に見えましたから、断続的とはいえ20年は尺八で生活したのでしょう。私が知り合った頃は、二尺八寸くらいの太い地無し管を「蚊の鳴くような」小さな音で吹いていました。
地無し管を作る竹材を譲って欲しいとの理由でいらしゃり、ご希望が私の所では使えない太すぎる竹なので、お使いいただけるならと数本ですが無料でお譲りしました。
その時いろいろ話ましたが、相互に価値観や人生観の大きな隔たりを感じたと思います。
その前もその後もHさんの噂は耳に入ってきました。小田原で一番売れている和菓子チェーンの社長は自社の寮を無償で提供したし、蕎麦屋は「尺八を聴いて蕎麦を食べる会」を企画してくれたりで、それなりに応援してくれた人はいたのです。だが継続しなかった。
Hさんの尺八を聴いた人で、その演奏を評価する人はいませんでした。「オマエはどう思うんだ?」と問われれば「下手だと思う」としか感想を述べられません。良い悪いより先に音が小さすぎるのです。
生活の為のアルバイトを紹介する人もいて、しばらくはやっていたかと思いましたが続かなかった様で、アルミ缶の収集でイクバクかの金を稼ぎ、古いお堂に寝泊まりしていましたが、そこも追い立てをくっていたと聞きました。結局窮して死を選んだようです。
私には不思議な事ばかりです。
何故アルバイトしないのか? あの本曲に本当に惚れ込んでいたのか? どうして托鉢すらしないのか? 確信を持ってあの本曲を演奏していたのか? 選択の上であの地無し尺八に辿り着いたのか?
小田原の人で手助けする人達はいたのです。誰も商売に利用しようとは思っていませんでしたし、ダイイチ集客や宣伝に使うつもりなら初めからHさんは対象外ですよ。「今どきアンナ生き方をしている人間をささやかでも応援したかった」という気持ちでしょう。
応援していて途中で降りた人達の言う理由はモットモな事ばかりです。普通、人は自分の余力のホンの一部をしか人の為には使う事は出来ませんし、それだけでも有難いことです。
ともかく、その一部をさいて下さる人達のおかげで我々尺八で生きる者達の生活は成り立っています。尺八に何を求るにしろ、所詮は生活に密着したもので無い以上、無いなら無いで人は支障無く生きていけます。
その基本をHさんは把握していなかったと思えてなりません。今の時代に山頭火や尾崎放裁のように生きようとすれば、そんなに時間をおかずに八方塞がりになるでしょう。
若いプロ尺八家を目指す方々、ユメユメ生活するという基本を軽視しなさんな。
仮にHさんとしましょう。Hさんは私の地元・小田原で尺八で暮らしていました。亡くなった時が50前後に見えましたから、断続的とはいえ20年は尺八で生活したのでしょう。私が知り合った頃は、二尺八寸くらいの太い地無し管を「蚊の鳴くような」小さな音で吹いていました。
地無し管を作る竹材を譲って欲しいとの理由でいらしゃり、ご希望が私の所では使えない太すぎる竹なので、お使いいただけるならと数本ですが無料でお譲りしました。
その時いろいろ話ましたが、相互に価値観や人生観の大きな隔たりを感じたと思います。
その前もその後もHさんの噂は耳に入ってきました。小田原で一番売れている和菓子チェーンの社長は自社の寮を無償で提供したし、蕎麦屋は「尺八を聴いて蕎麦を食べる会」を企画してくれたりで、それなりに応援してくれた人はいたのです。だが継続しなかった。
Hさんの尺八を聴いた人で、その演奏を評価する人はいませんでした。「オマエはどう思うんだ?」と問われれば「下手だと思う」としか感想を述べられません。良い悪いより先に音が小さすぎるのです。
生活の為のアルバイトを紹介する人もいて、しばらくはやっていたかと思いましたが続かなかった様で、アルミ缶の収集でイクバクかの金を稼ぎ、古いお堂に寝泊まりしていましたが、そこも追い立てをくっていたと聞きました。結局窮して死を選んだようです。
私には不思議な事ばかりです。
何故アルバイトしないのか? あの本曲に本当に惚れ込んでいたのか? どうして托鉢すらしないのか? 確信を持ってあの本曲を演奏していたのか? 選択の上であの地無し尺八に辿り着いたのか?
小田原の人で手助けする人達はいたのです。誰も商売に利用しようとは思っていませんでしたし、ダイイチ集客や宣伝に使うつもりなら初めからHさんは対象外ですよ。「今どきアンナ生き方をしている人間をささやかでも応援したかった」という気持ちでしょう。
応援していて途中で降りた人達の言う理由はモットモな事ばかりです。普通、人は自分の余力のホンの一部をしか人の為には使う事は出来ませんし、それだけでも有難いことです。
ともかく、その一部をさいて下さる人達のおかげで我々尺八で生きる者達の生活は成り立っています。尺八に何を求るにしろ、所詮は生活に密着したもので無い以上、無いなら無いで人は支障無く生きていけます。
その基本をHさんは把握していなかったと思えてなりません。今の時代に山頭火や尾崎放裁のように生きようとすれば、そんなに時間をおかずに八方塞がりになるでしょう。
若いプロ尺八家を目指す方々、ユメユメ生活するという基本を軽視しなさんな。
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