スベラナイように
- 2015/07/15
- 00:04
1975年ですから40年前ですけど、私の企画する演奏会で「五段砧」を山田、生田でやってみようと思いました。山田は宮下伸。問題は生田の誰を組み合わせるかです。沢井忠夫、野坂恵子、羽賀幹子の3人に候補をしぼり、まず沢井先生に話をもっていきました。
沢井先生には「私と宮下さんでは咬みあわないと思います」と断られてしまいましたが、親切な方なので、同じ目黒に有った別邸に移動して一緒に考えて下さいました。それで結論として羽賀、宮下でということになりましたが、沢井先生はその後も気にかけてくださり「あの話、うまく纏まりましたか?」と御電話くださり、いろいろアドヴァイスいただきました。
宮下先生は気難しい所の無い方なので「良いよ、誰が相方でも。でもな生田と山田は爪が違うからな、高音は生田でないと駄目だよ」それでスンナリ。
羽賀幹子先生には少しイヤな顔をされましたが、藤田都志先生が「やってあげなさいよ、せっかく若い人が企画したんだから」と口をきいてくださり、それで宮下、羽賀で「五段砧」が実現しました。
反省心が湧いて来たのは3年くらい経った頃です。私は若かったから「流派の壁なんぞに阻まれて思い切ったことの出来ない邦楽界」という固定観念が強く出てしまい、ただの「企画倒れ」の案が多く、邦楽家のプロとしての気配りに考えが至りませんでした。
別に「邦楽の流派がどうの」、なんて大沢井忠夫にすればナンてこと無いですね、実際のところ羽賀、宮下みんなそうでしたよ、「あまり良く分かっていない若いモノが、それなりに考えたんだから、せめてスベラナイようにしてあげよう」という気持ちが今は痛いほど分かります。
修正しても結局は承知してくださったのは私に譲ってくれたのです。若い私を育ててくださったのです。
プロの邦楽家は必要さえ有れば流派の壁を越えることに逡巡はありませんが、無益な摩擦は避けます。でも箏の世界で使われているのは、いつの間にか山田箏ばかりになったように、尺八では都山タイプが琴古でも主流になったように、ハードの方はより簡単に変わります。
ことほど左様に一流の邦楽家は良い演奏をするということを何より大切に考えます。
私はお客のヘンテコな要望をもっとも受け入れる尺八屋です。他の製管師が嫌がるのは無理も無い、自分の印をいれて作る以上、いくら金を積まれても、五十万円以下では出来ないことって有りますが、私は実験品でも安くても受けます。ただ、その場合には予想されるプラス面とマイナス面を説明して、マイナスは成るべくカバーしようと思います。お客の為に、そして自分の為に。
それであっても受けられない注文って有ります。一番最近の断ったケースでは「歌口の裏にもう一つ歌口を作ってくれ」 「何か意味があるんですか?」 「そういうのだと上管をひっくり返しても使える」 「だから何か意味ってありますか?」
あまりバカらしいから断った? いいえ、条件が折り合わなかったからです。こんなバカな注文はかえってプライドは傷つかないもんですわ、焼印なんて意味も無いから二つでも三つでも入れまっせ。だけど絶対返品無しで最低10万でなければやりません。
沢井先生には「私と宮下さんでは咬みあわないと思います」と断られてしまいましたが、親切な方なので、同じ目黒に有った別邸に移動して一緒に考えて下さいました。それで結論として羽賀、宮下でということになりましたが、沢井先生はその後も気にかけてくださり「あの話、うまく纏まりましたか?」と御電話くださり、いろいろアドヴァイスいただきました。
宮下先生は気難しい所の無い方なので「良いよ、誰が相方でも。でもな生田と山田は爪が違うからな、高音は生田でないと駄目だよ」それでスンナリ。
羽賀幹子先生には少しイヤな顔をされましたが、藤田都志先生が「やってあげなさいよ、せっかく若い人が企画したんだから」と口をきいてくださり、それで宮下、羽賀で「五段砧」が実現しました。
反省心が湧いて来たのは3年くらい経った頃です。私は若かったから「流派の壁なんぞに阻まれて思い切ったことの出来ない邦楽界」という固定観念が強く出てしまい、ただの「企画倒れ」の案が多く、邦楽家のプロとしての気配りに考えが至りませんでした。
別に「邦楽の流派がどうの」、なんて大沢井忠夫にすればナンてこと無いですね、実際のところ羽賀、宮下みんなそうでしたよ、「あまり良く分かっていない若いモノが、それなりに考えたんだから、せめてスベラナイようにしてあげよう」という気持ちが今は痛いほど分かります。
修正しても結局は承知してくださったのは私に譲ってくれたのです。若い私を育ててくださったのです。
プロの邦楽家は必要さえ有れば流派の壁を越えることに逡巡はありませんが、無益な摩擦は避けます。でも箏の世界で使われているのは、いつの間にか山田箏ばかりになったように、尺八では都山タイプが琴古でも主流になったように、ハードの方はより簡単に変わります。
ことほど左様に一流の邦楽家は良い演奏をするということを何より大切に考えます。
私はお客のヘンテコな要望をもっとも受け入れる尺八屋です。他の製管師が嫌がるのは無理も無い、自分の印をいれて作る以上、いくら金を積まれても、五十万円以下では出来ないことって有りますが、私は実験品でも安くても受けます。ただ、その場合には予想されるプラス面とマイナス面を説明して、マイナスは成るべくカバーしようと思います。お客の為に、そして自分の為に。
それであっても受けられない注文って有ります。一番最近の断ったケースでは「歌口の裏にもう一つ歌口を作ってくれ」 「何か意味があるんですか?」 「そういうのだと上管をひっくり返しても使える」 「だから何か意味ってありますか?」
あまりバカらしいから断った? いいえ、条件が折り合わなかったからです。こんなバカな注文はかえってプライドは傷つかないもんですわ、焼印なんて意味も無いから二つでも三つでも入れまっせ。だけど絶対返品無しで最低10万でなければやりません。
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