放浪

若いころ放浪に憧れませんでしたか？私が大学に入学した1969年、カルメン・マキという歌手が出てきました。けだるい雰囲気のオネエチャンで、年末の紅白の舞台に裸足で出て美空ひばりを怒らせた歌手ですよ。
すぐ売れなくなりましたがね、デビュー曲「時には母のない子の様に」に次ぐ2枚目が「山羊にひかれて」ですが、あてもない旅の憧れみたいなモノをかきたてて若い者に人気が有りました。
だいたい、その頃は誰もが多少なり現実からのドロップアウトの願望が有ったんとチャイまっか。

今も仕事で海外、特に東南アジアやインドに行くと、いますな、スゴイ人達が・・・。日本を出てから何年？さあ、もう桁が一つ上とか。パスポートもとっくに無し。
どうやって生活するんでしょうか？私がラオスで通訳をお願いしたオカタは、日本で何年か働いてお金を貯め、普段はインドで暮らしていて月に2万円しか使わないと言っていました。身ぎれいで上品な人でヒッピーとかコジキ旅行者とかいう感じではありませんよ。
感覚ですがインドやベトナム、ラオスでなら一日七百円でたしかに生活できますわ。一泊二百円の処に泊まって一食百円。なるほど出来ますよ。それほど悲惨でも無く。
そう言えば、私が倉庫として借りている築50年、六畳一間、風呂無しのアパート、月七千五百円ですもんね。そう考えると日本でも、オレでも出来るかも、月三万の生活。まてよ電話、電気、水道、ぎりぎり5万か・・・。

ホームレスは昔はルンペンと言いました。冗談抜きで言いますが、本当に好きでルンペンをやっていた人もいたんです。学生時代に知り合いになりましたもの。皆さんルンペンになる前は結構な会社にいたといいますよ、ホラかも知れませんが。
今のホームレスに自ら望んでやっている人がいるかどうかは知りませんが、昔は住民票が無くとも働ける所が幾らでも有りましたから、ルンペン以外にも選択肢が有り、切羽詰まった感じがしなかったです。とは言え、お仲間に入ろうとまでは思いませんでした。

私ね、もう年金をもらっていますけど、年金だけで生活するのは大変だと思うんです。いよいよとなったら中国あたりで尺八を売りながら暮らすのも良いかなと思います。実際やっている人がいます。塚本さんといって、定年後に中国に単身で移住、地無し尺八を教えて、もう十年生活しています。初め杭州、今は北京にも広がっていて、もう弟子の数も五十人はいるでしょう。
仮に年金の半額を奥さんに置いてくるとしても、また弟子がいなくても、尺八が売れなくても、これなら生きていけますね。