いとしき新曲
- 2015/07/29
- 21:38
ほんの20年前まで、上野にトキワ楽器というのが有ったのを覚えていらっしゃる人も多いでしょう。ここへ行けば尺八に関する一切が手に入ったものです。特に譜面が何でも揃っていて随分と重宝したもんです。
あまりハッキリとした事情を述べるとマズイのでボカシますが、箏屋に勤務していた御主人が独立するにあたって、事情があって邦楽関連の商品では尺八に関する物しか扱えず、追い詰められた形で、やむおえず尺八や尺八グッズの店を開いたところ、おりからの民謡が引っ張った「尺八ブーム」に乗って大繁盛、昭和30年代40年代は千客万来の状態でした。
私が尺八を始めた昭和44年は「新邦楽時代」と「現代邦楽」の丁度変わり目で、私は大学2年いっぱいまで「新曲」ばかり吹いていました。最初のクラブ内演奏発表で吹かされたのが中村双葉の「若草」です。、そして久本玄智の「飛躍」、宮城道雄「小鳥の歌」へと進み、2年生になると、森岡章「湖の詩」、「山里の春」、久本玄智「春の恵」、「初夏の印象」、山川園松の「抒情詩曲」、「冬の組曲」、「花咲く頃」、宮城道雄の「こほろぎ」、「遠砧」なんかを日がな稽古しました。
まだコピーが一般的でなかった時代、新しく譜面を購入するのにトキワ楽器は何とも便利な存在でした。当時は箏屋やデパートの楽器売場でも尺八の譜面を売っていた良い時代でしたが、流石に「新曲」の譜面が何でも揃うのはトキワ楽器以外には有りません。
尺八を始めた最初の頃は、古曲や本曲がつまらなく、洋楽の影響を濃厚にうけた「新曲」の抒情性と分かり易さが好きでした。4年になると、もうダメでしたね。宮城道雄の幾つかの曲を除いて「新曲はもうタクサン」の心境になりました。「新曲」は作曲者が箏曲家なので尺八の長所があまり生かされていませんし、何より曲想や手が簡単なので練習にならないのですよ。アナタもそう思うでしょ・・・。良いとか悪いを言ってるんじゃないですよ。
大学4年の夏合宿です、1年の箏の男に「夜の円舞曲なんかを弾くために箏を始めたんじゃない」と啖呵をきられ、二の句が継げませんでした。もう新曲の時代とのズレは明らかでした。
何年か前、私の先輩の主宰する箏の演奏会で、客のアンケートでの一番人気は「夜の円舞曲」でした。堺の会でしたが、小田原の演奏会でも「小鳥の歌」でした。
分かりますよね。一般の人には他の曲がいかにツマラナカッタか。そしてアンケートに「夜の円舞曲」や「小鳥の歌」と書いた人は「ガチ」であれば二度と来ない。
でも今は「新曲」は懐かしく、あの可憐な曲たちが私には何とも愛しい。
あまりハッキリとした事情を述べるとマズイのでボカシますが、箏屋に勤務していた御主人が独立するにあたって、事情があって邦楽関連の商品では尺八に関する物しか扱えず、追い詰められた形で、やむおえず尺八や尺八グッズの店を開いたところ、おりからの民謡が引っ張った「尺八ブーム」に乗って大繁盛、昭和30年代40年代は千客万来の状態でした。
私が尺八を始めた昭和44年は「新邦楽時代」と「現代邦楽」の丁度変わり目で、私は大学2年いっぱいまで「新曲」ばかり吹いていました。最初のクラブ内演奏発表で吹かされたのが中村双葉の「若草」です。、そして久本玄智の「飛躍」、宮城道雄「小鳥の歌」へと進み、2年生になると、森岡章「湖の詩」、「山里の春」、久本玄智「春の恵」、「初夏の印象」、山川園松の「抒情詩曲」、「冬の組曲」、「花咲く頃」、宮城道雄の「こほろぎ」、「遠砧」なんかを日がな稽古しました。
まだコピーが一般的でなかった時代、新しく譜面を購入するのにトキワ楽器は何とも便利な存在でした。当時は箏屋やデパートの楽器売場でも尺八の譜面を売っていた良い時代でしたが、流石に「新曲」の譜面が何でも揃うのはトキワ楽器以外には有りません。
尺八を始めた最初の頃は、古曲や本曲がつまらなく、洋楽の影響を濃厚にうけた「新曲」の抒情性と分かり易さが好きでした。4年になると、もうダメでしたね。宮城道雄の幾つかの曲を除いて「新曲はもうタクサン」の心境になりました。「新曲」は作曲者が箏曲家なので尺八の長所があまり生かされていませんし、何より曲想や手が簡単なので練習にならないのですよ。アナタもそう思うでしょ・・・。良いとか悪いを言ってるんじゃないですよ。
大学4年の夏合宿です、1年の箏の男に「夜の円舞曲なんかを弾くために箏を始めたんじゃない」と啖呵をきられ、二の句が継げませんでした。もう新曲の時代とのズレは明らかでした。
何年か前、私の先輩の主宰する箏の演奏会で、客のアンケートでの一番人気は「夜の円舞曲」でした。堺の会でしたが、小田原の演奏会でも「小鳥の歌」でした。
分かりますよね。一般の人には他の曲がいかにツマラナカッタか。そしてアンケートに「夜の円舞曲」や「小鳥の歌」と書いた人は「ガチ」であれば二度と来ない。
でも今は「新曲」は懐かしく、あの可憐な曲たちが私には何とも愛しい。
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