シンクロ

私が「超能力」など信じていないのは周りの者は皆知っています。テレパシーやまして念力など有るわけがない。もし有るならカジノへ行って金儲けしてくださいや。３，４回もカジノで連続して大勝ちしていたら、間違いなく調査されます。カジノ側はどういう手段でイカサマを仕組んだかということにしか興味を持ちません。
調べる人間もマジシャンと警察ОBで、間違っても科学者は入りません。科学者はユリ・ゲラーを調査して以来、この種のことにはすっかり信用を失いました。呆れるほど純情で騙されやすい人達であるという定評が出来てしまいました。
今までの「超能力」でマジシャンの鑑定を通リ抜けられたものは有りません。

まあ今回は「超能力」が話題ではないですから、このくらいにしますが、尺八を吹くものだけでなく、誰でも経験している不思議な心理現象が有りますね。
尺八を箏や三弦と合奏していて心が同調する瞬間って有りますよね。相手の呼吸が読めると言うか、相手が何を感じているか自分のことのように分かる短い時間が有るのです。このシンクロしている瞬間は相手も同じように感じているかは分かりません。でも、この瞬間を経験すると、もうやめられませんな。
これは音楽以外の世界でも感じるそうです。芝居や話芸またプロレスでも客の心理がはっきり分かる時があって、そうなると客を手のヒラに乗せたも同然だと言います。思いのままに乗せられるそうです。
こっちのほうは科学者が解説できる、人間に普通に見られる心理現象、言わば「常能力」ですわな。

30年ほど前、ある施設のコケラオトシで青木鈴慕先生が「巣鶴鈴慕」を吹きました。7，80人くらいの人で、音楽関係は一柳慧さんや沢井一恵さん、それと名前は忘れましたが美人のバレリーナの方がいたくらいで、ほとんど地元の人達でした。
青木師匠の尺八演奏の途中から、聴いていた人達との間で心のシンクロ現象が起きました。青木先生の息継ぎのところで聴衆も一斉に息を吸い、鶴の描写の部分では息を呑み、終わると一瞬間息が止まり、次に大拍手が起きました。
全盛期の青木鈴慕の忘れられない演奏です。こういうのを「冥利に尽きる」と言うんでしょうね。