価値の転換
- 2015/09/23
- 23:04
私は不思議で仕方がないんですよ。たとえば現在一番高額な絵というとゴッホだと思います。あるいはピカソかもしれませんが、ともかくゴッホの絵って生前には一枚しか売れなかったんですよね。それも弟が同情で買ってくれたと言います。画商である弟ですら気がつかないのに、今は、ケケケ、皆が素晴らしいと言ってる。
何かきっかけでも有りましたかね?
尺八家の福田蘭童。お父さんは言わずと知れた青木繁です。彼も生前は全く売れませんでした。当時は写実主義の時代なので評価されなかったと言いますがね。ある時を境に人の美意識がコロッと変わったとでも言うのですかいな。青木繁にも写実主義に迎合して画いた絵が有ります。「秋声」ですが、それでも高評価を得ると言うわけにはいきませんでした。
その様な例はイチイチ挙げきれないほど有ります。絵画の場合は現物が一つなので価値のデッチアゲは比較的簡単です。理論的に不特定多数の支持を必要としないのですからね。
ですから政治家への裏金、賄賂に使われたことは周知の事です。政治家が購入した絵画を「欲しいと言う人がいる」と画商が数倍で買い戻す。それを欲しい人、つまり企業が買う。誰でも分かる猿芝居ですが、けっして賄賂には認定されません。平和相銀にからんだ竹下事務所で秘書が自殺した「金屏風事件」なんか有名ですよね。それというのも価格の客観基準が存在しないからです。
誤解しなさんな、イイカゲンと言うてるのとチャイまっせ。イイカゲンが介在しうると言うてますねん。
絵画はまだ現物が残っているから良いですな、後で評価されることも有ります。これが文学だと、とりあえず活字に成らなくては。
これまで没原稿の段階で、人の目にふれずに終わった偉大な小説は膨大な量でしょう。
大学の卒論は余程のことが無い限り読者は担当教授ただ一人です。ただ書き手が若い学生であることから考えても、教授の頭では理解できないレベルの、途方もない分析や大発見がかなり有ったはずです。
尺八では芸大の修士過程の論文等に私達プロが本当は目を通さなければならないものが多々有ると思います。私達尺八のプロは、演奏も製作も不勉強ですわな。プロは職能にすぎませんから、長くやっていると勉強しなくなります。もっとシビアな競争にさらされている世界だと、また違うんでしょうな。「伝統の世界」なんぞは地位を築くのは大変でも、一度出来てしまうと楽ですね。ですから本当は誰でも知っていて口に出さないだけですが、世襲で代々続くんですよ。
もう30年くらい前になりますが、芸大で北村英山さんが凄い論文を発表しました。あらゆるタイプの歌口の吹きやすさに関する研究レポートです。
大勢の尺八奏者に目隠しで吹いて貰った結果を集計したものです。尺八本体は一本で、歌口部だけ取り換えられるようになっています。この研究に協力した泉州工房に行くと今でも実物を吹くことが出来ます。
圧倒的多数が吹きやすいと感じる尺八の歌口。深さ5ミリ、幅が広くてアゴが急傾斜で落ちているのです。
ではこのタイプを実際に作ったら? 売れません。
この事は、お弟子さんから一度は質問されます。前は「理論上はそれで間違い無い。けど多くの人が慣れている現在のタイプと極端に違っている以上、目を開けた状態では鳴らない。すくなくとも吹きにくいと感じる」。こう言って説明しました。
今ですと、「理想の歌口は一種類では無い。あの歌口が理想形の一つである事は、実験を背景に持っている以上は否定できない。ただ楽器はソフトによって発揮できる能力が異なる。単音を出すのとは違う。今の主流の尺八ソフトだと、あのタイプは人気が出ない」こう説明します。
最高の水彩画用の筆が油絵だと役立たずになるようなものでしょうかね。
ところで人の価値観、美意識がコロッと変わって、あのタイプの歌口が主流に成ることって有るんでしょうか?私には分かりません。ただこのところ、あの歌口の尺八が表現するのに最も使いやすい曲が増えてきています。
何かきっかけでも有りましたかね?
尺八家の福田蘭童。お父さんは言わずと知れた青木繁です。彼も生前は全く売れませんでした。当時は写実主義の時代なので評価されなかったと言いますがね。ある時を境に人の美意識がコロッと変わったとでも言うのですかいな。青木繁にも写実主義に迎合して画いた絵が有ります。「秋声」ですが、それでも高評価を得ると言うわけにはいきませんでした。
その様な例はイチイチ挙げきれないほど有ります。絵画の場合は現物が一つなので価値のデッチアゲは比較的簡単です。理論的に不特定多数の支持を必要としないのですからね。
ですから政治家への裏金、賄賂に使われたことは周知の事です。政治家が購入した絵画を「欲しいと言う人がいる」と画商が数倍で買い戻す。それを欲しい人、つまり企業が買う。誰でも分かる猿芝居ですが、けっして賄賂には認定されません。平和相銀にからんだ竹下事務所で秘書が自殺した「金屏風事件」なんか有名ですよね。それというのも価格の客観基準が存在しないからです。
誤解しなさんな、イイカゲンと言うてるのとチャイまっせ。イイカゲンが介在しうると言うてますねん。
絵画はまだ現物が残っているから良いですな、後で評価されることも有ります。これが文学だと、とりあえず活字に成らなくては。
これまで没原稿の段階で、人の目にふれずに終わった偉大な小説は膨大な量でしょう。
大学の卒論は余程のことが無い限り読者は担当教授ただ一人です。ただ書き手が若い学生であることから考えても、教授の頭では理解できないレベルの、途方もない分析や大発見がかなり有ったはずです。
尺八では芸大の修士過程の論文等に私達プロが本当は目を通さなければならないものが多々有ると思います。私達尺八のプロは、演奏も製作も不勉強ですわな。プロは職能にすぎませんから、長くやっていると勉強しなくなります。もっとシビアな競争にさらされている世界だと、また違うんでしょうな。「伝統の世界」なんぞは地位を築くのは大変でも、一度出来てしまうと楽ですね。ですから本当は誰でも知っていて口に出さないだけですが、世襲で代々続くんですよ。
もう30年くらい前になりますが、芸大で北村英山さんが凄い論文を発表しました。あらゆるタイプの歌口の吹きやすさに関する研究レポートです。
大勢の尺八奏者に目隠しで吹いて貰った結果を集計したものです。尺八本体は一本で、歌口部だけ取り換えられるようになっています。この研究に協力した泉州工房に行くと今でも実物を吹くことが出来ます。
圧倒的多数が吹きやすいと感じる尺八の歌口。深さ5ミリ、幅が広くてアゴが急傾斜で落ちているのです。
ではこのタイプを実際に作ったら? 売れません。
この事は、お弟子さんから一度は質問されます。前は「理論上はそれで間違い無い。けど多くの人が慣れている現在のタイプと極端に違っている以上、目を開けた状態では鳴らない。すくなくとも吹きにくいと感じる」。こう言って説明しました。
今ですと、「理想の歌口は一種類では無い。あの歌口が理想形の一つである事は、実験を背景に持っている以上は否定できない。ただ楽器はソフトによって発揮できる能力が異なる。単音を出すのとは違う。今の主流の尺八ソフトだと、あのタイプは人気が出ない」こう説明します。
最高の水彩画用の筆が油絵だと役立たずになるようなものでしょうかね。
ところで人の価値観、美意識がコロッと変わって、あのタイプの歌口が主流に成ることって有るんでしょうか?私には分かりません。ただこのところ、あの歌口の尺八が表現するのに最も使いやすい曲が増えてきています。
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