神風
- 2015/10/08
- 21:31
私は若い時から老人と話すのが好きで、自分が老人になった今も好きですから、尺八屋は自分に向いていると思います。これも幼い時に老人達から聞いた昔ばなしの影響でしょう。今の若い人だとテレビの「日本昔ばなし」で見ていたでしょうが、私達の子供の頃はジジババが夜話で語ってくれたものです。
20代まで私は、様々な事をオリに触れて祖父に聞きました。明治25年生まれの祖父は、小学校だけしか出ていませんでしたが、バツグンの記憶力で豊富な知識を持っていました。当時としては珍しい短大卒で小学校の教員をしていた私の母など問題にならないと、小学校高学年では分かっていました。
でも一つ祖父の知識には大きな欠陥が有りました。「キツネは人を化かす」といった類のヨタを信じていて、それが何の矛盾も無く、まともな知識と共存していたのです。明治の庶民とは、そういうものだったのですかね。
キツネと言えば、祖父はお稲荷さんを信仰していて、小さい頃、私は祖父のお供で、よく一緒にお参りしました。その時分は二人の叔父がまだ家に同居していましたので、「良縁祈願」が多かったですね。
「ねえ、おじいちゃん、良縁が来ますようにってお稲荷さんにお願いするって変じゃない?」 「何で?」 「だって答えはコンに決まってるじゃん」
「この前の戦争だけど神風って吹くと思ってた?」 「バカ言え。そんな事を本気にしていたヤツなんかいるもんか」
元寇の時に吹いたのは台風で、単なる偶然だと戦前の人の大多数も思っていたらしいです。
しかし戦前の歴史教育を受けた庶民の大半は、神武天皇の肇国は信じていて、学者や研究者、高度教育を受けた人とか一部の人だけが「そんなアホな」と思っていたようです。
「金の鳶が飛んでくるワケが無いって。そりゃそうだ」 物凄く不自然な所は信じていないまでも、こういう事を突き詰めて考えることはしなかった。
「神武天皇からで昭和15年は二千六百年(和暦は皆が知っていました)。エッ、その頃の日本は縄文時代で国なんか無いって・・・、フーンそうなのか。まあオレには良く分からないな」
「天孫降臨だと?、バカ、天からヒトが降りてくるわけが無いだろ」 でも、ここで思考は停止で、その先には進みません。
歴史の中に神話が混在しているのは、まあそういうもの、そんな感じで保留していたんですね。事実とオハナシとの境界は曖昧でした。
昭和30年代40年代は軍国主義者や戦犯への日本人の憎悪は大変なものでしたが、それでも私の話した範囲の人は、朝鮮や中国への侵略自体はサホド悪い事とは思っていなかったフシが有る。
「ABⅭⅮって知ってるか?日本は追い詰められて戦争したんだ」 こう言う人が昔でもいましたが、今より声が大きくなかったのは、直接体験者だけに、「ABⅭⅮ包囲」が突如として出てきたわけではなく、度重なる国際法や警告を無視した結果であることも熟知していたからです。
それで敗戦に至るワケですが、「今に神風が吹く」と本気で思っていた人は流石にいなかったようです。
「神風」を尺八界は、というより私はズット待望してきました。長くNHKの尺八講座が「神風」だと思っていましたが、どうも違う方向から吹いてきたようです。今はまだ微風。気がつかない人が多いですが、段々と風は強まります。
私の所は今から増産に入っていますが、私が将来への楽観的見通しを語るのは実に25年ぶりです。これから起こるであろうものは、尺八ブームではあっても、伝統邦楽ブームではありませんよ。
20代まで私は、様々な事をオリに触れて祖父に聞きました。明治25年生まれの祖父は、小学校だけしか出ていませんでしたが、バツグンの記憶力で豊富な知識を持っていました。当時としては珍しい短大卒で小学校の教員をしていた私の母など問題にならないと、小学校高学年では分かっていました。
でも一つ祖父の知識には大きな欠陥が有りました。「キツネは人を化かす」といった類のヨタを信じていて、それが何の矛盾も無く、まともな知識と共存していたのです。明治の庶民とは、そういうものだったのですかね。
キツネと言えば、祖父はお稲荷さんを信仰していて、小さい頃、私は祖父のお供で、よく一緒にお参りしました。その時分は二人の叔父がまだ家に同居していましたので、「良縁祈願」が多かったですね。
「ねえ、おじいちゃん、良縁が来ますようにってお稲荷さんにお願いするって変じゃない?」 「何で?」 「だって答えはコンに決まってるじゃん」
「この前の戦争だけど神風って吹くと思ってた?」 「バカ言え。そんな事を本気にしていたヤツなんかいるもんか」
元寇の時に吹いたのは台風で、単なる偶然だと戦前の人の大多数も思っていたらしいです。
しかし戦前の歴史教育を受けた庶民の大半は、神武天皇の肇国は信じていて、学者や研究者、高度教育を受けた人とか一部の人だけが「そんなアホな」と思っていたようです。
「金の鳶が飛んでくるワケが無いって。そりゃそうだ」 物凄く不自然な所は信じていないまでも、こういう事を突き詰めて考えることはしなかった。
「神武天皇からで昭和15年は二千六百年(和暦は皆が知っていました)。エッ、その頃の日本は縄文時代で国なんか無いって・・・、フーンそうなのか。まあオレには良く分からないな」
「天孫降臨だと?、バカ、天からヒトが降りてくるわけが無いだろ」 でも、ここで思考は停止で、その先には進みません。
歴史の中に神話が混在しているのは、まあそういうもの、そんな感じで保留していたんですね。事実とオハナシとの境界は曖昧でした。
昭和30年代40年代は軍国主義者や戦犯への日本人の憎悪は大変なものでしたが、それでも私の話した範囲の人は、朝鮮や中国への侵略自体はサホド悪い事とは思っていなかったフシが有る。
「ABⅭⅮって知ってるか?日本は追い詰められて戦争したんだ」 こう言う人が昔でもいましたが、今より声が大きくなかったのは、直接体験者だけに、「ABⅭⅮ包囲」が突如として出てきたわけではなく、度重なる国際法や警告を無視した結果であることも熟知していたからです。
それで敗戦に至るワケですが、「今に神風が吹く」と本気で思っていた人は流石にいなかったようです。
「神風」を尺八界は、というより私はズット待望してきました。長くNHKの尺八講座が「神風」だと思っていましたが、どうも違う方向から吹いてきたようです。今はまだ微風。気がつかない人が多いですが、段々と風は強まります。
私の所は今から増産に入っていますが、私が将来への楽観的見通しを語るのは実に25年ぶりです。これから起こるであろうものは、尺八ブームではあっても、伝統邦楽ブームではありませんよ。
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