尺八の広告

昔は各地区の三曲協会の演奏会パンフへの広告依頼があった場合、製管師はマズ断らなかったものです。
今は断る所が多いです。私も毎年、約百五十万から多い時で二百万円の宣伝広告費を使っていますが、演奏会のパンフ広告は余程の義理が無い限り出しません。効果があまりにも無いからですが、もともと効果は無かったのです。でも尺八界で生きている者として、盛り立てる意味で、皆が「お義理広告」を出していたのです。
パンフ広告は１万～３万円くらいで尺八が一本でも売れれば、イヤ２～３年に一本でも売れれば製管師も嫌な顔はしないでしょう。製管師にとって、今の様に尺八が売れない時代には広告を出す金銭的余裕が無いと言うより、一つ出してしまうと他を断れないということも大きいと思います。
伝統邦楽は今後ますます状況は悪化しますから、地区三曲の苦境は続きます。これまで地区の催しには、尺八と関係無い企業も、お付き合いで名刺広告を出していましたが、もう時代が変わりました。尺八だけでなく、全般の傾向です。これからは日本でも義理では広告はとれない。

少し前ですが、テレビ業界で「ダイハツ・ショック」と呼ばれる事が起きました。自動車では当時４位のテレビ広告出稿量のダイハツが、以後のテレビ広告を抑えると発表したのです。
自動車でも不特定多数の人を対象にした広告は効率が悪いということなのでしょう。興味の有る人だけが見るネット広告の方にシフトすると言われています。

尺八は不特定多数相手の宣伝が効果を持たない典型的な業種です。２０年前に山口のテレビ局が岡寺竹勇さんの番組を作りました。熊谷組という優良企業（この後で不優良になりましたが）にいて、しかもある程度の地位にいながら、２千万近いであろう年収を振り捨てて脱サラ。しかも尺八製作なんぞと言う周りに見当たらない事をやっている。それで地元のテレビ局が３０分のドキュメント番組を作ったのです。
それで、見た人が買いに来たかと言えば、これがゼロ。

分かりますよ。私の例を幾つか紹介しましょう。
①　グラフ雑誌（三大新聞系）でとりあげられました。青森から一本の注文、。
②　雑誌で俳優の藤木悠さんと対談。ハイ、注文ゼロ。
③　私の事を大事に思ってくれた人がいて、無料で数万枚のチラシをクラシック音楽の会でまいてくれました。結果、ゼロ。
④　同じ人が只で発行部数４万５千部のクラシック雑誌に広告を出してくれました。それもゼロ。
⑤　小田原地区の情報誌に広告を出しました。５万部。メデタク一本。
ここ最近の例では、神奈川テレビで紹介されました。注文ゼロ。
例外は赤旗です。かねて顔見知りの記者さん自身が、琴古流の尺八吹きという事もあって、かなり好意的に大きく取り上げてくれましたので、６本注文が来ました。赤旗も日曜版は百三十万部を越えていますからね。ただ発行部数だけでなく記事の書き方なのでしょう。何故なら、全くゼロの人もいますから。

広告のうちかたも今後は相当に変わると思います。１１月７日は台北での和楽器バンドの公演が有ります。チケットは即日完売です。開場の前の行列にチラシを渡すことを検討していましたが、大阪展示会の当日なので見送りました。