初めの1本
- 2015/11/22
- 23:57
1980年以来、尺八を作り売り、もう35年経ちました。これまで売った尺八は1万5千本くらいでしょうか、最初の何年かの記録が失われているのでハッキリしませんが、そのくらいだと思います。
さて、初めの1本は誰に買っていただいたのか? 実は、生産前から「29800円で尺八を出す」と言ってましたので、友人知人から「出来たら買う」との予約が50本以上も入っていました。
そういう以外、つまり全く見知らぬ人からの最初のお買い上げということですが、これが実は良く分からないのです。1989年に車上荒らしに遭って、持ち去られた物の中に顧客名簿も入っていました。半分くらいは復元できたのですが、もう分からない人も多いのです。それに販売宣伝の開始と同時に注文が押し寄せ、誰が最初に入金してくれたのか記憶がはっきりしません。
その時期は、今から思うと、言わば試作品同様の尺八を出荷していまして、返品も3,4割有りました。外観がお粗末という理由が1番多かったですが、中には、「手孔の位置が違っている、先生の尺八と並べたら全然違う」とか「長さが違っている」とかの、ショウモナイ理由での返品も意外に多く、その度に「尺八を吹いている人達って何も分かっていない。本当に楽器をやっている人達なんだろうか?」と首をかしげました
最初の1本が売れた時は嬉しかったはずです。でも当時の客は2割くらいの人が、いきなり現金書留を送ってきました。それで送って気に入らなくて返金した記憶がほとんど有りませんから、そういう方達は初心者が多く、とりあえず買おうと思っていらしたんですね。今じゃ考えられないですよ。
ともかく記憶を混乱させる様々な要因が有ったということです。
最初にギャラを貰った尺八演奏、初めて尺八で受けた接待、初めて原稿料をいただいた文章なんかは良く憶えています。そして初めて断った注文。この記憶は今も鮮明です。今までもオリにふれて注文拒否の話はしてきましたが、これが最初の1本です。
歩くのもおぼつかない御老人が娘さんか息子のお嫁さんとおぼしき中年の女性と一緒にいらしゃいました。
か弱い声で、「家内からは50万円までで買って良いと言われていますので、良い尺八を出してください」
聞くと、退院したばかりとのこと。本人は全快したと言いますが、女の人は見えないところで懸命に「売ってくれるな」ととれるサインを送ってきます。きっと余命いくばくも無いのでしょう。ここでみすみす無駄になると分かっている高い買い物をさせたくないということが、言葉で言う様にはっきり分かります。
皆さんならどうします?下手に断って、相手に変な危惧を抱かせたら何にもなりません。定価50万、3割引きで35万は私の尺八の価格上限です。経験した方は御存知の様に、私はまず「中継ぎに金を使うとか外観上だけのことだから、やめたほうが良い」と言います。でも、退職記念とか何かの祝いに買うとか言われれば有難く作ります。その時も本人は「全快の祝い」のつもりなのです。
私の出した答え 「作らせていただきますが、何分にも高額なので時間がかかります。それまでお手持ちの尺八を吹いて、楽しみにお待ちください」 その時の女の人のホッとした表情は良く憶えています。
案の定、その後その方の来店も催促の問い合わせも有りませんでした。1年後くらいに元気な声で「まだか、楽しみにまっている」と催促の電話でも有れば二重に嬉しいのですがね。
さて、初めの1本は誰に買っていただいたのか? 実は、生産前から「29800円で尺八を出す」と言ってましたので、友人知人から「出来たら買う」との予約が50本以上も入っていました。
そういう以外、つまり全く見知らぬ人からの最初のお買い上げということですが、これが実は良く分からないのです。1989年に車上荒らしに遭って、持ち去られた物の中に顧客名簿も入っていました。半分くらいは復元できたのですが、もう分からない人も多いのです。それに販売宣伝の開始と同時に注文が押し寄せ、誰が最初に入金してくれたのか記憶がはっきりしません。
その時期は、今から思うと、言わば試作品同様の尺八を出荷していまして、返品も3,4割有りました。外観がお粗末という理由が1番多かったですが、中には、「手孔の位置が違っている、先生の尺八と並べたら全然違う」とか「長さが違っている」とかの、ショウモナイ理由での返品も意外に多く、その度に「尺八を吹いている人達って何も分かっていない。本当に楽器をやっている人達なんだろうか?」と首をかしげました
最初の1本が売れた時は嬉しかったはずです。でも当時の客は2割くらいの人が、いきなり現金書留を送ってきました。それで送って気に入らなくて返金した記憶がほとんど有りませんから、そういう方達は初心者が多く、とりあえず買おうと思っていらしたんですね。今じゃ考えられないですよ。
ともかく記憶を混乱させる様々な要因が有ったということです。
最初にギャラを貰った尺八演奏、初めて尺八で受けた接待、初めて原稿料をいただいた文章なんかは良く憶えています。そして初めて断った注文。この記憶は今も鮮明です。今までもオリにふれて注文拒否の話はしてきましたが、これが最初の1本です。
歩くのもおぼつかない御老人が娘さんか息子のお嫁さんとおぼしき中年の女性と一緒にいらしゃいました。
か弱い声で、「家内からは50万円までで買って良いと言われていますので、良い尺八を出してください」
聞くと、退院したばかりとのこと。本人は全快したと言いますが、女の人は見えないところで懸命に「売ってくれるな」ととれるサインを送ってきます。きっと余命いくばくも無いのでしょう。ここでみすみす無駄になると分かっている高い買い物をさせたくないということが、言葉で言う様にはっきり分かります。
皆さんならどうします?下手に断って、相手に変な危惧を抱かせたら何にもなりません。定価50万、3割引きで35万は私の尺八の価格上限です。経験した方は御存知の様に、私はまず「中継ぎに金を使うとか外観上だけのことだから、やめたほうが良い」と言います。でも、退職記念とか何かの祝いに買うとか言われれば有難く作ります。その時も本人は「全快の祝い」のつもりなのです。
私の出した答え 「作らせていただきますが、何分にも高額なので時間がかかります。それまでお手持ちの尺八を吹いて、楽しみにお待ちください」 その時の女の人のホッとした表情は良く憶えています。
案の定、その後その方の来店も催促の問い合わせも有りませんでした。1年後くらいに元気な声で「まだか、楽しみにまっている」と催促の電話でも有れば二重に嬉しいのですがね。
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