着物屋の知恵
- 2016/02/03
- 21:59
私の大学の1年上に着物屋さんに就職した人がいました。過去形なのは、その後で独立して皮製品の専門店を経営しているからです。日本屈指の着物屋で取締役になるくらいですから器量は相当なものです。外観の器量の方は、仮にも先輩ですから大変に言いずらいのですが、まあ劣悪といって良いでしょうな。法政大学三曲会の委員長だったので「ゴリラ委員長」と呼ばれていました。「天は二物を与えない」とはよく言ったものですよ。
私は尺八屋を開業するにあたって、この先輩から販売方法を聞きました。似ているんですよ、尺八屋と着物商売は。そして着物業界は尺八のタブン3桁は大きいですから、その練りに練られた営業戦略や顧客管理のノウハウは尺八業界の比ではありません。
尺八と同じく「時代遅れ産業」の中にあっても大きな売り上げをあげている所も有れば、ずっと多くのオチブレテ廃業している店も有ります。
そういう世界にあって無借金経営で新宿駅南口に大きな自社ビルを持つ勝組の商売の仕方をうかがいました。
商売に詭道は無いまずこれが第一声でした。
変わった事で注目されても一時的な事。だからこそ常に変わったことをやって、人の目を引く必要が有る。
安売りは可能にする仕組みを造らないと単なるダウンピングになってしまう。ダウンピングで買った客は二度と正規の価格では買わない。
ダイレクトメールは手書きで書け。印刷された活字の封書は捨てられる。
礼状は自分で書け、毎日数件なら自分で書いて客の住所と名前を頭にいれろ。
教わった事は参考になりましたなあ、私はこれを今も実行しています。
モチロン完全にイコールではありませんからアレンジも必要です。たとえば・・・。
展示会に「見立て役」として主演級女優を呼ぶとなれば1980年当時でも1日百万はかかりました。でも、客は着物と同時に「自慢のタネ」を購入するのです。パーティで「アラア、奥様、ステキなお召し物」 「有難う、実は佐久間良子(司葉子でも山本富士子でも良いですわ)がわざわざ見立ててくれましたの」
こういうのは尺八ではチョットね・・・。本来、着物は「虚栄心充足産業」の面も濃厚に有るんですわ。
ちょっとオカシナ着物業界の話も聞きました。「他山の石」とする為もありご披露しましょう。
着物の売り方に「キャラバン」と言われる方法が有るそうです。これは一か所一回限りの「渡り商売」です。地元の主婦に高額のアルバイト料を払って大勢バイト販売員に雇うワケです。
「皆さん、皆さんのお友達にも展示会にいらっしゃるよう声をかけて下さい。皆さんのお友達の場合には社員紹介ということで2割引きします。そして皆さんにも1割のマージンを差し上げます。勿論アルバイト料の他にです。ローンも出来ますが、現金の場合さらに1割引きますよ」
宣伝は新聞の折り込みで十分です。主婦のお友達に見せて信用させることが第一なんですから。
そして1日限りの商売をして風のように去る。想像はつくと思いますが、原価は定価の十分の一以下。後に残るのは、着物になった粗悪な布と壊れた主婦達の人間関係です。
着物も尺八と同じく、価格が良く分からない物ですから、こういう商売方法が成立するのです。
「すぐ悪い評判が立つだろうって、それは悪い評判は少しは立つだろうよ、けど何てことは無い。世の中は広いし、商売はそんな甘い物じゃないよ。そうやって大きくなった所だって有るんだぜ。でもまあ、尺八は世界が狭いから、悪い評判が行きわたるのも早いだろうよ」。
ナルホド、それでも尺八でさえ10年やそこらは平気なのですし、もっと世界の広い業界なら上手くやれば半永久的に大丈夫なのでしょう。
「大橋、オマエが後で買った客の顔を思い浮かべて良心が痛まなければ、それも商売の詭道では無いさ。昔から有る売り方だ。ただウチはやらない。それで一流になった所なんて無いよ。それとだ、そういう倫理観の無い商売をやってると段々とエスカレートする奴が多い。サギとか脱税で、これは本当の終わりになる」
36年も前の事ですが、勉強になりました。
私は尺八屋を開業するにあたって、この先輩から販売方法を聞きました。似ているんですよ、尺八屋と着物商売は。そして着物業界は尺八のタブン3桁は大きいですから、その練りに練られた営業戦略や顧客管理のノウハウは尺八業界の比ではありません。
尺八と同じく「時代遅れ産業」の中にあっても大きな売り上げをあげている所も有れば、ずっと多くのオチブレテ廃業している店も有ります。
そういう世界にあって無借金経営で新宿駅南口に大きな自社ビルを持つ勝組の商売の仕方をうかがいました。
商売に詭道は無いまずこれが第一声でした。
変わった事で注目されても一時的な事。だからこそ常に変わったことをやって、人の目を引く必要が有る。
安売りは可能にする仕組みを造らないと単なるダウンピングになってしまう。ダウンピングで買った客は二度と正規の価格では買わない。
ダイレクトメールは手書きで書け。印刷された活字の封書は捨てられる。
礼状は自分で書け、毎日数件なら自分で書いて客の住所と名前を頭にいれろ。
教わった事は参考になりましたなあ、私はこれを今も実行しています。
モチロン完全にイコールではありませんからアレンジも必要です。たとえば・・・。
展示会に「見立て役」として主演級女優を呼ぶとなれば1980年当時でも1日百万はかかりました。でも、客は着物と同時に「自慢のタネ」を購入するのです。パーティで「アラア、奥様、ステキなお召し物」 「有難う、実は佐久間良子(司葉子でも山本富士子でも良いですわ)がわざわざ見立ててくれましたの」
こういうのは尺八ではチョットね・・・。本来、着物は「虚栄心充足産業」の面も濃厚に有るんですわ。
ちょっとオカシナ着物業界の話も聞きました。「他山の石」とする為もありご披露しましょう。
着物の売り方に「キャラバン」と言われる方法が有るそうです。これは一か所一回限りの「渡り商売」です。地元の主婦に高額のアルバイト料を払って大勢バイト販売員に雇うワケです。
「皆さん、皆さんのお友達にも展示会にいらっしゃるよう声をかけて下さい。皆さんのお友達の場合には社員紹介ということで2割引きします。そして皆さんにも1割のマージンを差し上げます。勿論アルバイト料の他にです。ローンも出来ますが、現金の場合さらに1割引きますよ」
宣伝は新聞の折り込みで十分です。主婦のお友達に見せて信用させることが第一なんですから。
そして1日限りの商売をして風のように去る。想像はつくと思いますが、原価は定価の十分の一以下。後に残るのは、着物になった粗悪な布と壊れた主婦達の人間関係です。
着物も尺八と同じく、価格が良く分からない物ですから、こういう商売方法が成立するのです。
「すぐ悪い評判が立つだろうって、それは悪い評判は少しは立つだろうよ、けど何てことは無い。世の中は広いし、商売はそんな甘い物じゃないよ。そうやって大きくなった所だって有るんだぜ。でもまあ、尺八は世界が狭いから、悪い評判が行きわたるのも早いだろうよ」。
ナルホド、それでも尺八でさえ10年やそこらは平気なのですし、もっと世界の広い業界なら上手くやれば半永久的に大丈夫なのでしょう。
「大橋、オマエが後で買った客の顔を思い浮かべて良心が痛まなければ、それも商売の詭道では無いさ。昔から有る売り方だ。ただウチはやらない。それで一流になった所なんて無いよ。それとだ、そういう倫理観の無い商売をやってると段々とエスカレートする奴が多い。サギとか脱税で、これは本当の終わりになる」
36年も前の事ですが、勉強になりました。
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