オタクの力

尺八の世界はオタクの絶対数が不足しています。
プロ、専門家というのは言わば職能であって、そこから一歩はずれた事になると、その生活している世界の事であっても知識の無いものなのです。守備範囲が違うと言うか、それより尺八吹奏のプロは他流派のことはチンプンカンプンでしょう。そういうものと言えば分かりやすいかしら・・・。　みんな専門家は得意分野を持っていますから、そこを売っているんです。

そこを埋めるものこそオタクです。人気の有る世界ほどオタクが多くいます。このオタク知識ほど役に立つと言えば役に立つ物はありません。特に20歳以下のオタクの知識は専門家なんて問題じゃ無い。　　これってホントですよ。
たとえば、鉄道の時刻表を丸暗記していて、聞かれたら何によらず即答できるのはオタク以外いません。

どんな分野でもオタク少年は専門家といわれる人達の知識の無さ、記憶力の悪さをコバカにしています。
青年期になると専門家との知識の質の違いが分かって来るので、流石に専門家を頭からバカにしたりしませんが、それでも知識量では自分の方が上だと思っている人が多い様に感じます。

私の若い頃は、尺八界にオタク老人がたくさんいました。その方達がだいたい吹奏下手だったのは、練習時間がオタク知識の収集にまわったからでしょうか？　知識の量は多くても、、いろいろ憶えているだけで分析力や真偽の分別力が乏しかったので、私は感心したことが有りません。でも、その人達の「オレは尺八が大好きだ～」という気持ちは良く分かりました。

今はオタク老人も見なくなりました。オタク少年はもともと尺八界には存在しないでしょう。オタクのいない世界に発展の可能性を探るのは困難です。

1972年に設立された全日本プロレスは長く客の入らない団体でした。日本テレビからの放映権料で運営されていたと言っても過言では有りません。
それが90年代になって観客動員数は驚くべき増加を示しました、これは、ジャイアント馬場がそれまで素人とバカにしていた人達を本格的にブレーンとしたことが原因です。

今の尺八界の壊滅的状況を改善したくとも、私を含めて業界人には皆目見当が付きません　。業界に長くいると業界の常識や過去の成功体験にとらわれて、あまり突飛な発想が出てこないのです。


こんな時代こそオタクがいてくれたら。私はマジそう思っています。展示会などで私が客と長話をするのは、そうした理由が大きいのです。
尺八界にとってオタクの力が今ほど必要な時は有りません。