無銘尺八
- 2016/02/24
- 12:44
ネットで中古尺八オークションにかけられる現在では皆無ですが、20年くらい前まで、しばしば各地の古道具屋から「古い尺八が持ち込まれたんだが、どの程度の物か教えて欲しい」という電話が有りました。
原則として銘が有るから電話してくるのです。無銘尺八は、旧家の蔵から出ても、古道具屋の買い取り価格は5~10本纏めて1万とか5千円とかだと言います。ダイイチ無銘だったら、電話で聞かれても分かりませんよ。
古道具屋の扱いからも分かるように、無銘の尺八は十中八九はガラクタ。素人がその辺の竹で作ったモノです。ですが例外的に驚くような上質の尺八が有るのです。その理由をこれからお話ししましょう。
例外的にはプロで無銘ということも有ります。35年くらい前に亡くなった製管師で吉沢秀三という方がいました。この方は専業者ですが無銘でした。理由は聞いたけど答えてくれませんでした。横山勝也先生の所で売ってもらっていましたから、横山先生が印を入れるからですかね。でも、それにしては民謡にも出していましたし、当時は民謡が盛んでしたから、売れる数はその方がズット多かったと思います。
吉沢さんは民謡の伴奏も巧みで、作る尺八も当時の民謡でなら十分に売れたと思います。変な言い方ですが、価格が琴古相場なので高く、見た目がイマイチなので都山ではチョット苦しいですね。
トモカク、それでいて焼印無しの無銘尺八で出していました。
また、名の有る製管師に格安で練習管を頼むと、「作るけど、他の客の手前も有るから焼印は勘弁してね」ということも有ります。
けど、それより多いのが独立前の人が親方に内緒でコズカイ稼ぎをするケースです。
製管も前は「徒弟奉公」でした。住み込みで食事と寝る所は付きますが、給料は微々たるものです。そして期間は長い。本当は3年程度で十分なのですが、安い手間賃で働く下職が必要なので「しっかりした技を身に付ける為には10年かかる」とかいう事にして長い期間にわたって下積みをやらすのです。
本当にそう信じていた親方がいないとまでは言いませんが、まあほとんどが親方の都合でしょう。ですから、ある程度に技術を身に付けた者が小使い稼ぎをする場合が有るのです。
「頼むよ、安い尺八が必要なんだ。先生に内緒で作ってよ」、「内緒ですね。本当に内緒ですよ、キットですよ。バレたら私も困るんですよ。ただ私は印は持ってないから焼印無しですよ」、「カマヘン、カマヘン。そんなら頼むで。師匠の半分の値段で作ってや」、こういうわけで弟子は師匠から竹をクスねて作る人がいたわけです。
寿司屋でも「10年かかる」とか言いますよね。それがもし本当なら、数か月しか修行していない人がミシュランで星を貰ったり、外国で大成功したり出来ないはずです。
全てのノウハウを初めから公開して、作業工程の非合理的な部分を改善する、その上でなら修行期間の長短は説得力をもつでしょうよ。その上にたって師匠が自分なりではあっても信念を持って「何年の修行が必要」と言うなら良いのですがねえ。
だけど、そう言うまでもないですわ。永廣真山さんの以前の小さな家の納戸に住み込み5年、外からの通いで5年、律儀に修行して筋金入りの技を身に付けた小林一城さんみたいな真面目で辛抱強い人はもう出ないでしょう。
平成になってからは、そんな話は聞いた事もありません。念の為に言いますが、前記の話は小林さんの事ではありませんよ。彼は休みの日に尺八の演奏で稼いでいました。私も経験が有りますが、当時は一日五千円から一万の「寸志」の仕事なら、結構有ったものですよ。独り者なら十万で暮らせた時代ですから、五千円といってもバカには出来ませんや。
原則として銘が有るから電話してくるのです。無銘尺八は、旧家の蔵から出ても、古道具屋の買い取り価格は5~10本纏めて1万とか5千円とかだと言います。ダイイチ無銘だったら、電話で聞かれても分かりませんよ。
古道具屋の扱いからも分かるように、無銘の尺八は十中八九はガラクタ。素人がその辺の竹で作ったモノです。ですが例外的に驚くような上質の尺八が有るのです。その理由をこれからお話ししましょう。
例外的にはプロで無銘ということも有ります。35年くらい前に亡くなった製管師で吉沢秀三という方がいました。この方は専業者ですが無銘でした。理由は聞いたけど答えてくれませんでした。横山勝也先生の所で売ってもらっていましたから、横山先生が印を入れるからですかね。でも、それにしては民謡にも出していましたし、当時は民謡が盛んでしたから、売れる数はその方がズット多かったと思います。
吉沢さんは民謡の伴奏も巧みで、作る尺八も当時の民謡でなら十分に売れたと思います。変な言い方ですが、価格が琴古相場なので高く、見た目がイマイチなので都山ではチョット苦しいですね。
トモカク、それでいて焼印無しの無銘尺八で出していました。
また、名の有る製管師に格安で練習管を頼むと、「作るけど、他の客の手前も有るから焼印は勘弁してね」ということも有ります。
けど、それより多いのが独立前の人が親方に内緒でコズカイ稼ぎをするケースです。
製管も前は「徒弟奉公」でした。住み込みで食事と寝る所は付きますが、給料は微々たるものです。そして期間は長い。本当は3年程度で十分なのですが、安い手間賃で働く下職が必要なので「しっかりした技を身に付ける為には10年かかる」とかいう事にして長い期間にわたって下積みをやらすのです。
本当にそう信じていた親方がいないとまでは言いませんが、まあほとんどが親方の都合でしょう。ですから、ある程度に技術を身に付けた者が小使い稼ぎをする場合が有るのです。
「頼むよ、安い尺八が必要なんだ。先生に内緒で作ってよ」、「内緒ですね。本当に内緒ですよ、キットですよ。バレたら私も困るんですよ。ただ私は印は持ってないから焼印無しですよ」、「カマヘン、カマヘン。そんなら頼むで。師匠の半分の値段で作ってや」、こういうわけで弟子は師匠から竹をクスねて作る人がいたわけです。
寿司屋でも「10年かかる」とか言いますよね。それがもし本当なら、数か月しか修行していない人がミシュランで星を貰ったり、外国で大成功したり出来ないはずです。
全てのノウハウを初めから公開して、作業工程の非合理的な部分を改善する、その上でなら修行期間の長短は説得力をもつでしょうよ。その上にたって師匠が自分なりではあっても信念を持って「何年の修行が必要」と言うなら良いのですがねえ。
だけど、そう言うまでもないですわ。永廣真山さんの以前の小さな家の納戸に住み込み5年、外からの通いで5年、律儀に修行して筋金入りの技を身に付けた小林一城さんみたいな真面目で辛抱強い人はもう出ないでしょう。
平成になってからは、そんな話は聞いた事もありません。念の為に言いますが、前記の話は小林さんの事ではありませんよ。彼は休みの日に尺八の演奏で稼いでいました。私も経験が有りますが、当時は一日五千円から一万の「寸志」の仕事なら、結構有ったものですよ。独り者なら十万で暮らせた時代ですから、五千円といってもバカには出来ませんや。
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