ない袖は振れぬ
- 2016/03/05
- 22:31
私が高校まで、そう昭和42年くらいまでは「ツケ買い」がかろうじてまだ有りました。酒屋、肉屋などは御用聞きと言われる人、主として中学を出たばかりの少年店員でしたが、毎日勝手口に顔を出して注文を取り、後で配達するのです。
私が物心ついてから後は月末に纏めて代金を払う方式でしたが、その前は3月ごと、半年ごと、あるいは年末支払いとかだったと言います。
「年を越せない」という言い方は、この年末一度払いが頭に無いとピンときませんね。
払う方だって一年分ですから大変ですよ。「ない袖は振れぬ」でホントウに年末になっても払う金が無かったらイッタイどうなったのでしょうか?落語に「言いわけ座頭」というのが有りますが、「無いものは無い」で通うされたら払ってもらう側を処置なしですわ。
戦後の社会は精算からスタートしました。
香川一朝が生きていた頃、よく二人で飲みに行ったスナック、行ってみれば「もぬけの殻」。香川さんの姉さんの家作でしたが、何か月も家賃を溜めていて、その他にも酒屋とかにも支払いが溜まっていたと言います。
そのほかに一軒。やはり香川さんとよく行った居酒屋です。「チョット寄ってみよう、ヒドイから」と言われて戸を開けたら床一面が割れた皿やコップで足の踏み場も有りませんでした。夜逃げした後、借金取りが腹立ちまぎれに店をブチコワシテ行ったのでしょう。
「なあ、ヒドイだろう」と香川さんが慨嘆していましたが、私はそれより意外でした。料理も美味いし店は流行ってたんですよね。
主も50ちょっとに見える風采の良い男で、話術も巧み。前のスナックと違い客のツケも拒否していましたし、どこからどう見ても店を潰す要素なんて無かったんですがね。
まあ思いつくのはバクチか、さもなければ女に入れあげたのでしょう。
プロの製管師って前は絶対に潰れない職種だと言われていました。投資って無いですもんね。最低3畳のスペースが有れば開業できますし、材料、工具の類も金額から言ったら取るに足らないものです。少なくとも、尺八が売れなければ、馬鹿でないかぎり大量には買い込みませんわな。
売れなくなっても倒産ではなく開店休業の段階で止まるはずです。ですからアルバイトをするか他に職業を持てば良いのです。
それが、ここ15年では本当に困窮しての最後を遂げる製管師達が出てきました。どの人も傍目には「どうしてやってるのか不思議」と見えていたほど、市場崩壊を起こしていて、それでも手をうたなかった結果ですが、「ない袖は振れない」で問題を先送りした結果、とうとう製管師も喰い詰めるる時代となりました。
前に親の後を継いで琴屋になった青年が「こんなに借金が多いとは知らなかった」と嘆いていましたが、琴屋は平成になってからで半分になったと聞きました。後10年でさらに3割潰れるととも言われています。
後輩の琴三弦問屋に、どうして問題を先送りしているのか聞きましたよ。「だって手形のジャンプなんてザラで、正直何時落ちるのか分からないんですよ。集金に行っても、ない袖な振れないで結局無駄足。エッ、売ったほうだって困るだろうですって、だから仕入れたほうも、手形はジャンプ、ない袖は振れないんですよ」。
これが邦楽産業の実態です。今が近代産業に脱皮する前の陣痛の段階なのか、それとも大量絶滅に見舞われる直近なのか?いずれにしろ、このままで行くわけがない。問題を先送りし続ければ、崩れる時は激しく崩れる。
私が物心ついてから後は月末に纏めて代金を払う方式でしたが、その前は3月ごと、半年ごと、あるいは年末支払いとかだったと言います。
「年を越せない」という言い方は、この年末一度払いが頭に無いとピンときませんね。
払う方だって一年分ですから大変ですよ。「ない袖は振れぬ」でホントウに年末になっても払う金が無かったらイッタイどうなったのでしょうか?落語に「言いわけ座頭」というのが有りますが、「無いものは無い」で通うされたら払ってもらう側を処置なしですわ。
戦後の社会は精算からスタートしました。
香川一朝が生きていた頃、よく二人で飲みに行ったスナック、行ってみれば「もぬけの殻」。香川さんの姉さんの家作でしたが、何か月も家賃を溜めていて、その他にも酒屋とかにも支払いが溜まっていたと言います。
そのほかに一軒。やはり香川さんとよく行った居酒屋です。「チョット寄ってみよう、ヒドイから」と言われて戸を開けたら床一面が割れた皿やコップで足の踏み場も有りませんでした。夜逃げした後、借金取りが腹立ちまぎれに店をブチコワシテ行ったのでしょう。
「なあ、ヒドイだろう」と香川さんが慨嘆していましたが、私はそれより意外でした。料理も美味いし店は流行ってたんですよね。
主も50ちょっとに見える風采の良い男で、話術も巧み。前のスナックと違い客のツケも拒否していましたし、どこからどう見ても店を潰す要素なんて無かったんですがね。
まあ思いつくのはバクチか、さもなければ女に入れあげたのでしょう。
プロの製管師って前は絶対に潰れない職種だと言われていました。投資って無いですもんね。最低3畳のスペースが有れば開業できますし、材料、工具の類も金額から言ったら取るに足らないものです。少なくとも、尺八が売れなければ、馬鹿でないかぎり大量には買い込みませんわな。
売れなくなっても倒産ではなく開店休業の段階で止まるはずです。ですからアルバイトをするか他に職業を持てば良いのです。
それが、ここ15年では本当に困窮しての最後を遂げる製管師達が出てきました。どの人も傍目には「どうしてやってるのか不思議」と見えていたほど、市場崩壊を起こしていて、それでも手をうたなかった結果ですが、「ない袖は振れない」で問題を先送りした結果、とうとう製管師も喰い詰めるる時代となりました。
前に親の後を継いで琴屋になった青年が「こんなに借金が多いとは知らなかった」と嘆いていましたが、琴屋は平成になってからで半分になったと聞きました。後10年でさらに3割潰れるととも言われています。
後輩の琴三弦問屋に、どうして問題を先送りしているのか聞きましたよ。「だって手形のジャンプなんてザラで、正直何時落ちるのか分からないんですよ。集金に行っても、ない袖な振れないで結局無駄足。エッ、売ったほうだって困るだろうですって、だから仕入れたほうも、手形はジャンプ、ない袖は振れないんですよ」。
これが邦楽産業の実態です。今が近代産業に脱皮する前の陣痛の段階なのか、それとも大量絶滅に見舞われる直近なのか?いずれにしろ、このままで行くわけがない。問題を先送りし続ければ、崩れる時は激しく崩れる。
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