発見
- 2016/04/06
- 22:31
あれは、もう35年も前になります。大阪の河野玉水さんの自宅に三塚幸彦さんと行った時の事です。私はその頃は河野さんと商売していましたので、年に2,3回は顔を出していましたが、その時は仕事の相方であった三塚さんを初めて帯同しました。
その場で、三塚さんが河野さんの作った尺八を10本くらい吹きましたが、どれも完全にチがトゥルルルと回ってしまい、河野さんが青くなりました。
そこで依頼されました。
三塚さんに3泊4日で大阪に来てほしい。交通費、ホテル、食事は実費支給の上で1日あたり2万円の日当を払ってくれるという条件でした。
河野さんにしてみれば、何としても原因を突き止めたいという事です。
今の知識では説明出来ます。つまり完璧なまでの外吹きで、なおかつ、それまでの玉水管の顧客水準をはるかに上回る息圧の三塚さんの息を「内吹き尺八」が受け止められなかったのです。種々の工夫の結果、さすがに河野玉水です、3穴と4穴の間、丁度中継ぎパイプにあたる所の内径を広げると解決する事を発見しました。
これで玉水管も来るべき尺八高度技量時代に耐えうる尺八を確保できました。
同じようなケースとしては、林雅寛(鈴麟)さんの「尺八内径理想曲線」です。彼は今はタイプ別に吹き方を自在に変えられるという、これまでの尺八界で類を見ない超絶技巧の持ち主ですが、前は完全な内吹きでした。ですから25年前に発表された「理想曲線」は外吹きの人達には不評でした。
言っときますが、10人中9人は違いに息が反応しませんよ。すごく高度な吹奏力を持つ人の場合に、そうだと言うにすぎません。
ともかく、それで出てきたのが「理想曲線バージョン3」です。インターネットで検索してプリントして、前のモノと重ね合わせると、内径の傾斜が急になっている事がわかるでしょう。これが今の主流となっている高性能尺八の特徴です。
泉州、澤山などのプロが好んで使う尺八の内径を昔の同工房の尺八と比較すると、いずれも、この傾向に有ります。
天才的な勘で多方面から原因を詰める三塚幸彦、数学的な思考で原因を追い詰めて行く林雅寛。対して、嘗ての河野さんや尾崎澤山は、吹きながらの消去法、いわば職人魂で尺八の高性能化を実現しました。どの方向からであれ、私は心から尊敬します。
でも、ここで思うことが有ります。40年前だって製管師の中には、あくなき探求心と向上心、職人としての良心を持った人はいたに違いありません。ではどうして、尺八の製作にいつまでも問題点が発見できずに残ったのでしょうか?
1に吹奏家の技量。2に情報の未公開。もっとも公開しようにも手段が無かったことは事実ですし、その前に原因と結果の因果関係が判然としなかったので、公表の仕様が無い。
そして3、尺八の範囲に挑戦する曲もほとんど有りませんでした。
ハードである楽器の発達の為には、優れた演奏家、そしてソフトが必要なのですね。この三者が相互に刺激を与えあうわけです。
その場で、三塚さんが河野さんの作った尺八を10本くらい吹きましたが、どれも完全にチがトゥルルルと回ってしまい、河野さんが青くなりました。
そこで依頼されました。
三塚さんに3泊4日で大阪に来てほしい。交通費、ホテル、食事は実費支給の上で1日あたり2万円の日当を払ってくれるという条件でした。
河野さんにしてみれば、何としても原因を突き止めたいという事です。
今の知識では説明出来ます。つまり完璧なまでの外吹きで、なおかつ、それまでの玉水管の顧客水準をはるかに上回る息圧の三塚さんの息を「内吹き尺八」が受け止められなかったのです。種々の工夫の結果、さすがに河野玉水です、3穴と4穴の間、丁度中継ぎパイプにあたる所の内径を広げると解決する事を発見しました。
これで玉水管も来るべき尺八高度技量時代に耐えうる尺八を確保できました。
同じようなケースとしては、林雅寛(鈴麟)さんの「尺八内径理想曲線」です。彼は今はタイプ別に吹き方を自在に変えられるという、これまでの尺八界で類を見ない超絶技巧の持ち主ですが、前は完全な内吹きでした。ですから25年前に発表された「理想曲線」は外吹きの人達には不評でした。
言っときますが、10人中9人は違いに息が反応しませんよ。すごく高度な吹奏力を持つ人の場合に、そうだと言うにすぎません。
ともかく、それで出てきたのが「理想曲線バージョン3」です。インターネットで検索してプリントして、前のモノと重ね合わせると、内径の傾斜が急になっている事がわかるでしょう。これが今の主流となっている高性能尺八の特徴です。
泉州、澤山などのプロが好んで使う尺八の内径を昔の同工房の尺八と比較すると、いずれも、この傾向に有ります。
天才的な勘で多方面から原因を詰める三塚幸彦、数学的な思考で原因を追い詰めて行く林雅寛。対して、嘗ての河野さんや尾崎澤山は、吹きながらの消去法、いわば職人魂で尺八の高性能化を実現しました。どの方向からであれ、私は心から尊敬します。
でも、ここで思うことが有ります。40年前だって製管師の中には、あくなき探求心と向上心、職人としての良心を持った人はいたに違いありません。ではどうして、尺八の製作にいつまでも問題点が発見できずに残ったのでしょうか?
1に吹奏家の技量。2に情報の未公開。もっとも公開しようにも手段が無かったことは事実ですし、その前に原因と結果の因果関係が判然としなかったので、公表の仕様が無い。
そして3、尺八の範囲に挑戦する曲もほとんど有りませんでした。
ハードである楽器の発達の為には、優れた演奏家、そしてソフトが必要なのですね。この三者が相互に刺激を与えあうわけです。
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