天狗
- 2016/04/22
- 23:11
今はいなくなりましたねえ。25年前ですと、「自分の作った尺八を見てくれ」とショッチュウ素人製管師の訪問が有りました。
10人のうち5人は全く尺八を知らない人。噂に「尺八が20万くらいで良く売れてるらしい」と小耳にはさんで、「オイラにも出来るだろう」と、その辺の竹を掘って作ったのでしょう。それでプロの所に持ちこむという心情が分かりません。
聴けば、様々な職で、それなりに身を立ててきた人達です。それが、吹いたことも無い尺八を、百科事典か何かを見て作り、それがもしかして何万かで売れるかも知れないと考えられる思考回路が理解できませんでした。
10人中4人はそこそこに作れるものの、中学か良くて高校生の工作レベルでしたが、ここが一番話していて面白かった。正直言って、素人の発見でプロが参考になることなど無いのです。現在の3Ⅾプリンターの尺八は素人の作ですが、これは最新の科学技術を尺八作りに応用したのでであって、厳密な意味では尺八の製作法ではありません。
尺八製作の工程は、素人の考えつく程度の事は、すでにプロが一度や二度は実験しています。
では何処が面白かったのかと言うと、そのテングぶりです。たぶん小説とか絵画、陶芸とかも同じですよ。数字や勝敗で自分の位置が客観視できない世界の特徴でした。
皆さん、あわよくば私の所で販売して欲しいとの希望を持っていらしゃるのだと思いますが、ハッキリ言葉に出して「技術未熟」だと言って断らなければなりません。初めは、この辺が良く分からずに遠まわしに断っていましたが、それではテング様には通じません。
残りの十人中一人の方。技術的には、もうプロと言って良いのですが・・・。
私の所で扱っても良いですよ。5万で入れて下さい。「え~、尺八は20万でも安い方でしょう?」
それは一流の場合。この程度の技術だと5万。(当時は鹿山、仙山、仙秋といった一流が普及品を2万6千円で作っていました)
「作るのに時間がかかるんですよ。5万では手間にもなりません」
下地は入れるのに何回かかりますか? 「結構かかります。丁寧に入れますから」。(プロって基本的に一回で入るんですが)。
それでは根にどのくらいかけてますか? 「2時間くらいですかね」。レジンダーだと最後までで30分ですが。「でも、その作業がまた楽しいのです」
ここで終わりです。別に姿勢が悪いとは思いませんが、ともかく私の所ではそこでオシマイです。
この人は学校の先生を辞めて製管師になったのですが、プロとして生活できませんでしたね。理由はプロなら誰でも分かります。手間がどれだけかかろうと関係有るのは「剰余価値論」だけですわ。
何でもそうではないかと思いますが、楽しいのは趣味でやっているうちですよ。
こういう人は時代が平成になると、めっきり減りました。昭和と平成の境くらいに「バブル崩壊」が有りましたし、何か世は堅実主体になったような気がします。
中村草田男が「ふる雪や 明治は遠く なりにけり」と詠んだのは昭和6年。まだ明治が終って20年です。昭和が終ってからは、もうそれ以上になってしまいました。
たかが元号が変っただけなのに、不思議な事に劇的に世相も変わったように思います。携帯電話、コンピューターの進化と普及というような目に見える違いだけでなく、人の心。価値観、人生観、生活感とか、うわっついた所が無くなったような気がするのですよ。
私はかつての尺八テングさん達は、昭和30年代までは演奏でもタクサンいたと思います。もう私の時代にはいなかったですね。情報や交通の発達が段々とテングの棲家を消していきました。
10人のうち5人は全く尺八を知らない人。噂に「尺八が20万くらいで良く売れてるらしい」と小耳にはさんで、「オイラにも出来るだろう」と、その辺の竹を掘って作ったのでしょう。それでプロの所に持ちこむという心情が分かりません。
聴けば、様々な職で、それなりに身を立ててきた人達です。それが、吹いたことも無い尺八を、百科事典か何かを見て作り、それがもしかして何万かで売れるかも知れないと考えられる思考回路が理解できませんでした。
10人中4人はそこそこに作れるものの、中学か良くて高校生の工作レベルでしたが、ここが一番話していて面白かった。正直言って、素人の発見でプロが参考になることなど無いのです。現在の3Ⅾプリンターの尺八は素人の作ですが、これは最新の科学技術を尺八作りに応用したのでであって、厳密な意味では尺八の製作法ではありません。
尺八製作の工程は、素人の考えつく程度の事は、すでにプロが一度や二度は実験しています。
では何処が面白かったのかと言うと、そのテングぶりです。たぶん小説とか絵画、陶芸とかも同じですよ。数字や勝敗で自分の位置が客観視できない世界の特徴でした。
皆さん、あわよくば私の所で販売して欲しいとの希望を持っていらしゃるのだと思いますが、ハッキリ言葉に出して「技術未熟」だと言って断らなければなりません。初めは、この辺が良く分からずに遠まわしに断っていましたが、それではテング様には通じません。
残りの十人中一人の方。技術的には、もうプロと言って良いのですが・・・。
私の所で扱っても良いですよ。5万で入れて下さい。「え~、尺八は20万でも安い方でしょう?」
それは一流の場合。この程度の技術だと5万。(当時は鹿山、仙山、仙秋といった一流が普及品を2万6千円で作っていました)
「作るのに時間がかかるんですよ。5万では手間にもなりません」
下地は入れるのに何回かかりますか? 「結構かかります。丁寧に入れますから」。(プロって基本的に一回で入るんですが)。
それでは根にどのくらいかけてますか? 「2時間くらいですかね」。レジンダーだと最後までで30分ですが。「でも、その作業がまた楽しいのです」
ここで終わりです。別に姿勢が悪いとは思いませんが、ともかく私の所ではそこでオシマイです。
この人は学校の先生を辞めて製管師になったのですが、プロとして生活できませんでしたね。理由はプロなら誰でも分かります。手間がどれだけかかろうと関係有るのは「剰余価値論」だけですわ。
何でもそうではないかと思いますが、楽しいのは趣味でやっているうちですよ。
こういう人は時代が平成になると、めっきり減りました。昭和と平成の境くらいに「バブル崩壊」が有りましたし、何か世は堅実主体になったような気がします。
中村草田男が「ふる雪や 明治は遠く なりにけり」と詠んだのは昭和6年。まだ明治が終って20年です。昭和が終ってからは、もうそれ以上になってしまいました。
たかが元号が変っただけなのに、不思議な事に劇的に世相も変わったように思います。携帯電話、コンピューターの進化と普及というような目に見える違いだけでなく、人の心。価値観、人生観、生活感とか、うわっついた所が無くなったような気がするのですよ。
私はかつての尺八テングさん達は、昭和30年代までは演奏でもタクサンいたと思います。もう私の時代にはいなかったですね。情報や交通の発達が段々とテングの棲家を消していきました。
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