亀の歩み

前から雑誌に依頼されていた原稿が有ったので、リハビリの意味で久しぶりに手書きで書きました。４００字詰め原稿用紙８枚という話だったのですが、このところパソコンばかり使っていましたので何と３時間もかかりました。
私が一番原稿用紙を埋めたのは大学時代です。学校の提出論文に加えてプロレス雑誌やファンクラブの機関誌に頼まれてペンネームで書いていたので８枚だったら１時間で書けました。

病気になってからは、もう７年も尺八の演奏をしていないので、もし右手の機能が復活しても、しばらくは勘が戻らないと思います。昔、異常にケチな男がいました。勿体ないというので左目には常に眼帯をしていましたが、そのうちに右目が失明してしまい、それならと眼帯を外して左目を使う事にしました。「それでどうなった？」。見た事の無い人ばかりになりました。

昨日の同窓会でも、「オマエは動かなくて良い」とか「おいカタワ、何が欲しい。持ってくるから言え」とか言って、たちまち私の前には酒や食い物が並びました。オマエら、こんな良いヤツだったっけ。若い頃、金玉を蹴り上げて白目をむかせたヤツが何人もいるのに・・・。ありがとうよ・・・。

中に横浜の癌センターで外科部長をしていたヤツがいて、つねずね「オマエの世話にだけはなりたくない」と言ってきましたが、その度に方々から「オレも癌にかかったけど」という声がかかりました。癌は怖いけど、もう直らない病気では無いという事ですね。
私の半身不随も要は脳の障害ですから、前述の「右目のケース」とちがって治療法が進むと直る可能性が有るそうですので、その日が来るのが楽しみです。
その時にそなえてリハビリしていますが、このリハビリも果たして効果が出ているのだろうかと疑わしい思いにかられる時もありますが、でも何にせよやらない事には何も始まりません。

私が尺八吹奏の弟子をとっていた時、口癖のように「どんな大木も種から始まり、その伸びている瞬間を見た者はいない。常に稽古をしていれば成長が見えない日が有っても、その実、間違いなく成長している」と言っていました。
私の経験でも突如として伸びる時が有り、長期に渡って上達を自覚できない時も有ります。そして、稽古を何日かやらないでいると勘が狂い、人によっては、そのまま尺八を止めてしまいます。
でも、だからと言って稽古を休まざるをえない場合だってありますね。その時はお気楽に。山道で途中休憩して体のリズムが狂った程度と受け止めましょう。くれぐれも必要以上に深刻に受け止めないこと。「一日休むと三日の戻り」なんて嘘だと思いましょう。