演歌
- 2014/11/30
- 12:11
本曲、三曲、新曲、現代曲、そして民謡、詩吟。これが尺八家の生活を立てる職場ですが、もう一つ、数少ない選ばれた人の生活手段として演歌歌手の伴奏があります。
この道の魁は何と言っても今年初めに亡くなった村岡実さんでしょう。もともと最初に話が来ていたのは民謡尺八の第一人者・菊池淡水さんで、村岡さんは初め菊池さんの「手伝い」として行っていたのが、そのうち村岡さんにばかり話が来るようになったと言うことです。
村岡さんは戦争中は陸軍の軍楽隊でラッパ吹きでしたが、復員後は尺八を職業にして、後ろ盾の無い環境から身を起こし大成功しました。
陽気で話し好き、開けっ広げな性格でお電話をもらうと大体30分以下では終わりませんでした。
この方の吹いていた一尺八寸管を2回、それぞれ2週間くらいかけて手を入れました。横山蘭畝の作ですが、8孔(ツの中メリも有り)に改作してあり、3孔4孔5孔(小孔は数えない)が孔一つ分高く開け直してあります。この方の「吹き癖」で、通常の位置ではチ、リ、イが低くなるのです。
大家でありながら少しも偉ぶらない方で反論も平気で受け入れる。「OO尺八はピッチが良くないね」 「違いますよ、それって先生の吹きグセですよ。演奏家って、みんなスゴイ癖があっても自分ではクセが無いと思っていますからね」 「オオそうですか、ワハハハ・・・」そいいう感じです。
「演歌歌手で誰が一番良かったですか?」 「人柄だと村田英雄さんだね。熱海なんかで興行をやると、打ち上げは彼のハライ、旅館の大広間に他のお座敷の芸者衆まで集まってね、そりゃ賑やかだったよ」
「紅白歌合戦で小柳ルミ子の漁火恋歌に尺八を付けていましたが、彼女に尺八って、かなりの短管でしょう?」 「あの子ってね、プロ意識もすごくてね、しっかりした子だったな・・・、何寸かって?もう憶えていないよ」
「美空ひばりって厳しい人なんでしょ?」 「芸には厳しいけど、人柄は悪くないですよ」
こういう楽しい話を幾度となくしました。私が今でも心残りなのは、村岡さんをメインに香川一朝、林嵐山で計画していた台湾公演が、私の入院で寸前に中止になったことです。村岡さんもとても楽しみにしてらして、約束のギャラはお支払いしましたが、今でも申し訳なく思っています。台湾公演は2年後に再開しましたが、もう村岡さんも香川さんも参加できる状態ではありませんでした。
演歌の尺八伴奏のギャラは村岡実、坂田誠山の時代で2~3万円。大学出の初任給が手取り3万円の時代です。
今、吉幾三と上遠野衛さん、藤あや子と加藤秀和さん、細川たかしと高橋織山さんなどが有名な組み合わせですが、一舞台大学出の初任給は夢のまた夢です。
この道の魁は何と言っても今年初めに亡くなった村岡実さんでしょう。もともと最初に話が来ていたのは民謡尺八の第一人者・菊池淡水さんで、村岡さんは初め菊池さんの「手伝い」として行っていたのが、そのうち村岡さんにばかり話が来るようになったと言うことです。
村岡さんは戦争中は陸軍の軍楽隊でラッパ吹きでしたが、復員後は尺八を職業にして、後ろ盾の無い環境から身を起こし大成功しました。
陽気で話し好き、開けっ広げな性格でお電話をもらうと大体30分以下では終わりませんでした。
この方の吹いていた一尺八寸管を2回、それぞれ2週間くらいかけて手を入れました。横山蘭畝の作ですが、8孔(ツの中メリも有り)に改作してあり、3孔4孔5孔(小孔は数えない)が孔一つ分高く開け直してあります。この方の「吹き癖」で、通常の位置ではチ、リ、イが低くなるのです。
大家でありながら少しも偉ぶらない方で反論も平気で受け入れる。「OO尺八はピッチが良くないね」 「違いますよ、それって先生の吹きグセですよ。演奏家って、みんなスゴイ癖があっても自分ではクセが無いと思っていますからね」 「オオそうですか、ワハハハ・・・」そいいう感じです。
「演歌歌手で誰が一番良かったですか?」 「人柄だと村田英雄さんだね。熱海なんかで興行をやると、打ち上げは彼のハライ、旅館の大広間に他のお座敷の芸者衆まで集まってね、そりゃ賑やかだったよ」
「紅白歌合戦で小柳ルミ子の漁火恋歌に尺八を付けていましたが、彼女に尺八って、かなりの短管でしょう?」 「あの子ってね、プロ意識もすごくてね、しっかりした子だったな・・・、何寸かって?もう憶えていないよ」
「美空ひばりって厳しい人なんでしょ?」 「芸には厳しいけど、人柄は悪くないですよ」
こういう楽しい話を幾度となくしました。私が今でも心残りなのは、村岡さんをメインに香川一朝、林嵐山で計画していた台湾公演が、私の入院で寸前に中止になったことです。村岡さんもとても楽しみにしてらして、約束のギャラはお支払いしましたが、今でも申し訳なく思っています。台湾公演は2年後に再開しましたが、もう村岡さんも香川さんも参加できる状態ではありませんでした。
演歌の尺八伴奏のギャラは村岡実、坂田誠山の時代で2~3万円。大学出の初任給が手取り3万円の時代です。
今、吉幾三と上遠野衛さん、藤あや子と加藤秀和さん、細川たかしと高橋織山さんなどが有名な組み合わせですが、一舞台大学出の初任給は夢のまた夢です。
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