声と尺八
- 2016/10/06
- 23:22
尺八の音には人間の声みたいな個性が有って、長い時が経っても記憶の底に沁み込んでいるみたいです。これからお話しする事は、そういうチョット不思議な話です。
今から53年も前、私は早稲田中学に入学しました。同じクラスにKという、ヒトに言わせると「大橋とKは外見が双子みたいによく似てる」というヤツがいました。
私の学校は中高一貫でしたので、そのKとは以後6年間の腐れ縁でした。その頃は「喧嘩しないと仲良くならない」と言われた時代です。ですから御多分にもれずKとも何度も喧嘩し、そして非常に仲が良かったのです。
Kは怒ると理性が飛ぶところが有って、幾つもの思い出が有ります。
高校2年の秋、文化祭ではプロレス仲間と3日間にわたってプロレス興行をやりました。最終日には駒(マシオ)、永源(遥)、高千穂(グレート・カブキ)の3人の本物が参加してくれ、またジャイアント馬場が試合で使ったガウンと靴を貸してくれて、興行は高校の学園祭としては記録的な入りになりました。
その初日。「いやしくも早稲田高校の文化祭でプロレスをやってるヤツラがいる。こんな事は学校の品位にかかわる」と言い出した本物のパーがいて、私が「事前に許可が下りてるから」と取り合わないので、生活指導の教師に訴えたんですよ。
パーと教師がプロレス会場の教室に入ってきた、その瞬間。
覆面を被ったKが、覆面にベイゴマを入れて対戦相手に頭突きをぶちかましたんです。絶叫をあげて額を押え蹲る相手。その後、本物の喧嘩にならなかったのは、丁度おり良く教師が教室に入ってきたからです。私だって慌てましたよ。Kには「プロレスだから、くれぐれもホントをやるな」と言っておいたのに、肝心な所で、このテイタラクです。
それでどうなったか? 当時の男子校ですよ、そんな事ぐらいで教師も動揺したりしませんわ、ニガワライして「マア、ケガのないようにな」で終わりですよ。
同じ時期に運動会も有りましたが、その時に同じプロレス仲間のIと何かで険悪になったんですな、KはチビでIは巨体です。サンザンにぶちのめされて恨みを抱いたんです。理性のキレたKは途方も無い仕返しを企みました。
Iはブラスバンド部にも属していて、その巨体を見込まれてチューバを吹いていました。運動会の応援たけなわの時、チューバを吹いているĪの後ろから、こっそりKが忍び寄ります。
何をするのか、Kを知ってる人間なら誰でも分かります。後ろから重いチューバを吹いているĪのズボンをパンツごと下げて、たくさんの生徒や父兄の前で男性器を丸出しにする目的なのは明瞭です。
寸前の所で、これもガタイの良い優等生(少し前まで東工大の教授でした)がKの耳を掴んで、引きずるようにして引き離しました。
今振り返っても残念です。もう少しで第三幕まで有る面白いミモノが見れたのに・・・。
第一幕、チューバを吹いていたĪはどうしたか?吹くのを止めてパンツを上げたか、そのまま吹いていたか?
第二幕、ĪはKをどうしたか? 第三幕、学校はKをどうしたか?退学か沈黙か? チクショウ、惜しかったな、柿本、テメエのせいだぞ。余計な事をしやがって・・・。
そのKとは大学に進学しても半年くらいは一緒に遊びましたが、段々と疎遠になり、2,3年経つと、すっかり会わなくなっていました。
大学卒業の年の夏です。友人達と伊豆に海水浴に行きました。夕食後に民宿で尺八を吹いていると「大橋」と言ってKが入って来ました。「狐につままれる」とは、こういう事ですよ。
昔聞いた尺八の音で私と分かったとの事ですが、初めは本気にしなかったです。Kも海に行きたくなって、私を誘う為に家に電話して、家族から行っている場所を訊いて、それで来たのだと思いました。
ところが本当に偶然も偶然。Kも海に来ていてタマタマ尺八の音がして、昔聞いた私の尺八だと疑いもせずに入ってきたそうです。
尺八の音色が人の個性を反映する事は、尺八吹きの誰もが知っています。ただ、尺八をほとんど聞いた事の無い人間の方が、サンプルが少ないせいか、声そのものなんですかね。
「尺八なんて滅多に吹いているヤツなんかいないだろ。すぐオマエだと分かったよ」がKの言です。私達は尺八は沢山の人が吹いている事を知っていますから、たとえ音を聞いて「はてな」と思っても、それで即訪ねては行けませんや。
その後、Kとは今に至るも会っていません。お互い容貌も変わりました(私はますます良くなっています)。でもクラス会でもそうですが、会った瞬間誰だか分かるんですよ。人間の不思議です。
今から53年も前、私は早稲田中学に入学しました。同じクラスにKという、ヒトに言わせると「大橋とKは外見が双子みたいによく似てる」というヤツがいました。
私の学校は中高一貫でしたので、そのKとは以後6年間の腐れ縁でした。その頃は「喧嘩しないと仲良くならない」と言われた時代です。ですから御多分にもれずKとも何度も喧嘩し、そして非常に仲が良かったのです。
Kは怒ると理性が飛ぶところが有って、幾つもの思い出が有ります。
高校2年の秋、文化祭ではプロレス仲間と3日間にわたってプロレス興行をやりました。最終日には駒(マシオ)、永源(遥)、高千穂(グレート・カブキ)の3人の本物が参加してくれ、またジャイアント馬場が試合で使ったガウンと靴を貸してくれて、興行は高校の学園祭としては記録的な入りになりました。
その初日。「いやしくも早稲田高校の文化祭でプロレスをやってるヤツラがいる。こんな事は学校の品位にかかわる」と言い出した本物のパーがいて、私が「事前に許可が下りてるから」と取り合わないので、生活指導の教師に訴えたんですよ。
パーと教師がプロレス会場の教室に入ってきた、その瞬間。
覆面を被ったKが、覆面にベイゴマを入れて対戦相手に頭突きをぶちかましたんです。絶叫をあげて額を押え蹲る相手。その後、本物の喧嘩にならなかったのは、丁度おり良く教師が教室に入ってきたからです。私だって慌てましたよ。Kには「プロレスだから、くれぐれもホントをやるな」と言っておいたのに、肝心な所で、このテイタラクです。
それでどうなったか? 当時の男子校ですよ、そんな事ぐらいで教師も動揺したりしませんわ、ニガワライして「マア、ケガのないようにな」で終わりですよ。
同じ時期に運動会も有りましたが、その時に同じプロレス仲間のIと何かで険悪になったんですな、KはチビでIは巨体です。サンザンにぶちのめされて恨みを抱いたんです。理性のキレたKは途方も無い仕返しを企みました。
Iはブラスバンド部にも属していて、その巨体を見込まれてチューバを吹いていました。運動会の応援たけなわの時、チューバを吹いているĪの後ろから、こっそりKが忍び寄ります。
何をするのか、Kを知ってる人間なら誰でも分かります。後ろから重いチューバを吹いているĪのズボンをパンツごと下げて、たくさんの生徒や父兄の前で男性器を丸出しにする目的なのは明瞭です。
寸前の所で、これもガタイの良い優等生(少し前まで東工大の教授でした)がKの耳を掴んで、引きずるようにして引き離しました。
今振り返っても残念です。もう少しで第三幕まで有る面白いミモノが見れたのに・・・。
第一幕、チューバを吹いていたĪはどうしたか?吹くのを止めてパンツを上げたか、そのまま吹いていたか?
第二幕、ĪはKをどうしたか? 第三幕、学校はKをどうしたか?退学か沈黙か? チクショウ、惜しかったな、柿本、テメエのせいだぞ。余計な事をしやがって・・・。
そのKとは大学に進学しても半年くらいは一緒に遊びましたが、段々と疎遠になり、2,3年経つと、すっかり会わなくなっていました。
大学卒業の年の夏です。友人達と伊豆に海水浴に行きました。夕食後に民宿で尺八を吹いていると「大橋」と言ってKが入って来ました。「狐につままれる」とは、こういう事ですよ。
昔聞いた尺八の音で私と分かったとの事ですが、初めは本気にしなかったです。Kも海に行きたくなって、私を誘う為に家に電話して、家族から行っている場所を訊いて、それで来たのだと思いました。
ところが本当に偶然も偶然。Kも海に来ていてタマタマ尺八の音がして、昔聞いた私の尺八だと疑いもせずに入ってきたそうです。
尺八の音色が人の個性を反映する事は、尺八吹きの誰もが知っています。ただ、尺八をほとんど聞いた事の無い人間の方が、サンプルが少ないせいか、声そのものなんですかね。
「尺八なんて滅多に吹いているヤツなんかいないだろ。すぐオマエだと分かったよ」がKの言です。私達は尺八は沢山の人が吹いている事を知っていますから、たとえ音を聞いて「はてな」と思っても、それで即訪ねては行けませんや。
その後、Kとは今に至るも会っていません。お互い容貌も変わりました(私はますます良くなっています)。でもクラス会でもそうですが、会った瞬間誰だか分かるんですよ。人間の不思議です。
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