尺八の地政学
- 2016/12/10
- 20:35
地政学という言葉を最近頻繁に聞くようになりました。この地政学というものは立派な科学らしいのですが、私達の年代の者、あるいは私個人なのかも知れませんけど、この言葉にはイカガワシイという先入観がまず先にたってしまいます。
1977年頃からしばらくの間、「右」の論客として、A大のKという教授が活躍しましたが、その人が「地政学」を事有る毎に持ち出して、噴飯ものの主張を繰り広げましたよ。
言ってる事は、当時の少し右がかった大学生にすら笑われるレベルで、当然その活躍の場もフジテレビや産経系出版物などの保守系メディア等に限られましたが、当時はサヨクや共産主義が現在では考えられないほどの支持を得ていた時代だったので、すこしラインの右外側にはみ出した意見も必要とされた社会状況が有りました。
Kセンセイは元々は防衛関係の研究機関にいたそうですが、そういう処が使い物にならない人材を大学に教授として押し込むのは、まあ珍しい事ではありません。
「共産主義信用失墜」が日本でも起きたのは、私が思うに1980年です。ソ連の「アフガニスタン侵攻」が契機となり、後は1980年代末の崩壊まで一直線で下落しましたな。でも、その前となるとね、政財界の支配者達も一定の危機感は持っていたのでしょう。ですからKセンセイも一定の役割を立派に果たしたわけです。
尺八で今分かっている範囲で地域解説をしますと。
アメリカ 日本に次ぐ尺八人口を持つ。ただ広大な国土の中で、尺八人口濃密なのは東部と西海岸で、悪いことに相互に仲が良くない。
何より尺八屋を躊躇させるのは、その「消費者絶対」の商習慣と訴訟癖。例えばですよ、アメリカのスーパーやデパートで冬にコートを買うとしますな。買って一週間着て返品する。これを冬中くりかえすと、タダでコートが着られるのです。これ、特別のケースを言ってるんじゃないですぜ、普通の事です。
割れ、漆カブレ、これらは1年たっても返品を要求されますし、悪くすると訴訟です。
つまりは強力なエージェント無しには危なくて尺八を売れません。
それに、ここには優秀なアメリカ人製管師がいますので、日本人製管師はハンディが有ります。性能が良い、修理対応が速い、アメリカ人ですから説明も「微に入り細を穿つ」です。
ヨーロッパ 尺八を買うのに慎重ですよ。「ミズテン買い」はマズ有りません。お金を貯めて現金で買う人が多く、安い尺八でなくとも良いみたいです。
私の尺八が一番売れている国はエージェントのいるフランスですが、それでも年5本がセイゼイです。国ごとの割拠性はEUになっても変わりませんよ。国によって気質がまるで違いますからね。ですから、毎年の様に行くのは信頼できて優秀なエージェントが国ごとに欲しいからです。
地理的にも近く英語を使うアメリカの製管師は、事前の予想と異なり、思ったほど入り込んでいません。「日本の伝統楽器で日本製が本物」との意識が有るのでしょう。
オーストラリア 現在の尺八人口は200前後。台湾と同じくらいです。ですから日本、アメリカ、中国、ヨーロッパの次でしょう。
ライリー・リーさんに「展示会をやりたいので協力してよ」と話をもちかけて、「いいよ」と言ってもらってからから、はや4年。まだ果たしていません。オーストラリアは文字通りに「リーランド」です。また、ここは孤立系のイメージが有りますが、東南アジアと近いんですよ。今度展示会を開く香港にもリーさんの弟子がいます。
中国 急速に大きくなった尺八市場。消費意欲は最も高い。民族楽器の高度技能者には国から補助金が出ており、プロ演奏家には生活が楽だが、補助金を確保出来てる間に生活基盤を確立しようと教授も盛んに行ない弟子を集めようとしています。
ですから、ここでは「尺八は中国の楽器で、里帰りしている」との理屈で押し通します。でも専門的な人は本当の所が分かっています。
台湾 もう安定した尺八の世界を創り上げています。大陸尺八界との交流は意外に有りませんが、ここ2,3年、マイケル王が急速に大陸各地に勢力を広げています。ピーター・ヒルもそうですが、中国語が完全に使えるという強みが有ります。
東南アジア 最近になって尺八が普及しはじめました。でも、いずれにしろ華僑の人達です。財力が有る事もそうですが、それと「華僑ネットワーク」ですね。今から四半世紀以前は台湾と中国は厳しい対立関係にありました。
中国は「台湾は必ず解放する」と言っていましたが、台湾海峡を押し渡る能力が無いので、せめて意志だけでも示そうと、隔日で金門島を砲撃したりしていました。
一方の台湾はと言えば、よせば良いのに「大陸に反攻して、光復を果たす」と呼号。でも無理なので、せめてもと街中に「毋忘在莒」とか「大陸光復」とかのデカイ看板を掲げて景観を損ねていました。
でも、そういう時代でも「華僑ネットワーク」は健在でした。前は共産圏には「ココム」、中国だけを狙い撃ちにした「チンコム」などの貿易制限が存在していましたが、台湾の華僑の「裏線」で中国にも輸出できました。エッ、「それは密輸だぞ」ですと、マサか。
台湾に正式に輸出したんですぞ。それが何処にマタ売りされたかなんて誰に訊いてんの・・・。
こういうのが私の「地政学」。せいぜい尺八商売にしか役にたたないけど・・・。
1977年頃からしばらくの間、「右」の論客として、A大のKという教授が活躍しましたが、その人が「地政学」を事有る毎に持ち出して、噴飯ものの主張を繰り広げましたよ。
言ってる事は、当時の少し右がかった大学生にすら笑われるレベルで、当然その活躍の場もフジテレビや産経系出版物などの保守系メディア等に限られましたが、当時はサヨクや共産主義が現在では考えられないほどの支持を得ていた時代だったので、すこしラインの右外側にはみ出した意見も必要とされた社会状況が有りました。
Kセンセイは元々は防衛関係の研究機関にいたそうですが、そういう処が使い物にならない人材を大学に教授として押し込むのは、まあ珍しい事ではありません。
「共産主義信用失墜」が日本でも起きたのは、私が思うに1980年です。ソ連の「アフガニスタン侵攻」が契機となり、後は1980年代末の崩壊まで一直線で下落しましたな。でも、その前となるとね、政財界の支配者達も一定の危機感は持っていたのでしょう。ですからKセンセイも一定の役割を立派に果たしたわけです。
尺八で今分かっている範囲で地域解説をしますと。
アメリカ 日本に次ぐ尺八人口を持つ。ただ広大な国土の中で、尺八人口濃密なのは東部と西海岸で、悪いことに相互に仲が良くない。
何より尺八屋を躊躇させるのは、その「消費者絶対」の商習慣と訴訟癖。例えばですよ、アメリカのスーパーやデパートで冬にコートを買うとしますな。買って一週間着て返品する。これを冬中くりかえすと、タダでコートが着られるのです。これ、特別のケースを言ってるんじゃないですぜ、普通の事です。
割れ、漆カブレ、これらは1年たっても返品を要求されますし、悪くすると訴訟です。
つまりは強力なエージェント無しには危なくて尺八を売れません。
それに、ここには優秀なアメリカ人製管師がいますので、日本人製管師はハンディが有ります。性能が良い、修理対応が速い、アメリカ人ですから説明も「微に入り細を穿つ」です。
ヨーロッパ 尺八を買うのに慎重ですよ。「ミズテン買い」はマズ有りません。お金を貯めて現金で買う人が多く、安い尺八でなくとも良いみたいです。
私の尺八が一番売れている国はエージェントのいるフランスですが、それでも年5本がセイゼイです。国ごとの割拠性はEUになっても変わりませんよ。国によって気質がまるで違いますからね。ですから、毎年の様に行くのは信頼できて優秀なエージェントが国ごとに欲しいからです。
地理的にも近く英語を使うアメリカの製管師は、事前の予想と異なり、思ったほど入り込んでいません。「日本の伝統楽器で日本製が本物」との意識が有るのでしょう。
オーストラリア 現在の尺八人口は200前後。台湾と同じくらいです。ですから日本、アメリカ、中国、ヨーロッパの次でしょう。
ライリー・リーさんに「展示会をやりたいので協力してよ」と話をもちかけて、「いいよ」と言ってもらってからから、はや4年。まだ果たしていません。オーストラリアは文字通りに「リーランド」です。また、ここは孤立系のイメージが有りますが、東南アジアと近いんですよ。今度展示会を開く香港にもリーさんの弟子がいます。
中国 急速に大きくなった尺八市場。消費意欲は最も高い。民族楽器の高度技能者には国から補助金が出ており、プロ演奏家には生活が楽だが、補助金を確保出来てる間に生活基盤を確立しようと教授も盛んに行ない弟子を集めようとしています。
ですから、ここでは「尺八は中国の楽器で、里帰りしている」との理屈で押し通します。でも専門的な人は本当の所が分かっています。
台湾 もう安定した尺八の世界を創り上げています。大陸尺八界との交流は意外に有りませんが、ここ2,3年、マイケル王が急速に大陸各地に勢力を広げています。ピーター・ヒルもそうですが、中国語が完全に使えるという強みが有ります。
東南アジア 最近になって尺八が普及しはじめました。でも、いずれにしろ華僑の人達です。財力が有る事もそうですが、それと「華僑ネットワーク」ですね。今から四半世紀以前は台湾と中国は厳しい対立関係にありました。
中国は「台湾は必ず解放する」と言っていましたが、台湾海峡を押し渡る能力が無いので、せめて意志だけでも示そうと、隔日で金門島を砲撃したりしていました。
一方の台湾はと言えば、よせば良いのに「大陸に反攻して、光復を果たす」と呼号。でも無理なので、せめてもと街中に「毋忘在莒」とか「大陸光復」とかのデカイ看板を掲げて景観を損ねていました。
でも、そういう時代でも「華僑ネットワーク」は健在でした。前は共産圏には「ココム」、中国だけを狙い撃ちにした「チンコム」などの貿易制限が存在していましたが、台湾の華僑の「裏線」で中国にも輸出できました。エッ、「それは密輸だぞ」ですと、マサか。
台湾に正式に輸出したんですぞ。それが何処にマタ売りされたかなんて誰に訊いてんの・・・。
こういうのが私の「地政学」。せいぜい尺八商売にしか役にたたないけど・・・。
スポンサーサイト