テーパー内径
- 2017/01/18
- 23:16
もう40年近く前になりますよ、「大橋さん、鳴り易くて値段の安い尺八を作るんでしたら、いっそのこと水道管で作ったらどうですか」 こう言ったのは三塚幸彦さんです。その頃はと言えば、私の会社の普及品には竹の中にプラスチック管「悠」が入っていました。
永瀬さんに頼んで、悠(当時はこの呼び名は無かったですがね)の売り物にならない外形破損品を2千円で譲ってもらい、旋盤で細く削って竹の中に入れたのです。
それをいっそのこと水道管にしたら、そういう提案です。
「水道管なら百円ですよ。それにプラ(悠)の欠点の中継ぎの弱さだってクリア出来ますよ」。 どうするんですかい?
「水道管の外形を削る時に中継ぎのデッパリだけそのままにするんですよ。上管には引っ込めて竹に入れれば、そのまま中継ぎです」。
結局それをやらなかったのは、一つにはもう青木、山口、横山といった先生方にはプラ管(悠)を入れる事をすでに話しており、全員からお褒めの言葉をいただいておりましたし、あまつさえ青木先生からは推薦文まで書いていただいていましたから、今さら「もっと安い工法に変えました」とはねえ・・・。
特に書きますが、この推薦文について青木鈴慕先生から「私が推薦文を書いてあげます。ついては絶対に謝礼を払わない事。それが約束だ」と釘を刺されていましたので、一銭も払っていません。こういうところが青木鈴慕という人の泣かせるところなんです。青木鈴慕は金では動かない。
「大橋は大金を払ったんじゃないか?」と、周りでも言っていましたが、この事情を青木先生はイッサイ他人に話してはいませんでした。青木先生のお人柄の一端を分かっていただけたら幸いです。
いささか脱線しましたが、やらなかったもう一つの理由ですが、こういう事は秘密にしておけないのですから、いずれ分かった時に、いくら安価でも中が水道管だと非難されると思ったんです。
竹の中がプラスチックだというのは他の有力メーカーでもそうですから、別に構わないでしょう。
水道管で尺八を作る事は「なる八君」以前から、かなり多くのバリエーションを持って作られていました。流という単位でも竹保や菊水で入門者用として製造販売していました。
1981年の秋、まだ初代酒井竹保先生は90過ぎでお元気で、ご自宅にお邪魔した私に「水道管尺八」を見せて、いろいろ説明してくださいました。
黒く塗られていて、吹き口の部分が太くなっており、歌口には金属が嵌まっていました。根に当たる部分が曲げてあり覗いても内径のストレート形状は分からない様になっていました。
当時、竹保流が流として斡旋していた竹製尺八は「美中」ですが、「十分の一価格」の尺八も必要としていたのです。
吹いて下さいまして「どうだね、鳴るだろう」とニコニコなさった事は昨日の事の様の憶えています。
そうです。水道管で作った尺八は鳴るのです。内径がストレートですから、そもそも音波振動の阻害要因が無いのです。フルートは頭部だけ内径が細くなっていて、その下は内径ストレートです。水道管は竹製尺八よりは肉が薄いですが、フルートよりは肉厚です。ですから手孔の容積にもっていかれる分はフルートよりは大きく、内径がストレートだと下に行くほど原理的に内径容積が大きくなる為、ツなどに影響が出てしまいますが、入門用として問題化するほどではありません。
「竹以外で作った尺八は音で分かる」と広言する人がホンの15年くらい前までは珍しくなかった。今はもう、そんな能力を持った人なんか存在しないと皆(でもないか)が知っていますが、この水道管だけは、凄く感覚の鋭い人ですと分かります。内径が見事なまでにストレートですから。
良い悪いは別にして、尺八の内径のテーパー構造、そして最狭部から管尻までの逆テーパー。この特異な内径構造こそ人々を魅了する尺八の音色の秘密なのです。
永瀬さんに頼んで、悠(当時はこの呼び名は無かったですがね)の売り物にならない外形破損品を2千円で譲ってもらい、旋盤で細く削って竹の中に入れたのです。
それをいっそのこと水道管にしたら、そういう提案です。
「水道管なら百円ですよ。それにプラ(悠)の欠点の中継ぎの弱さだってクリア出来ますよ」。 どうするんですかい?
「水道管の外形を削る時に中継ぎのデッパリだけそのままにするんですよ。上管には引っ込めて竹に入れれば、そのまま中継ぎです」。
結局それをやらなかったのは、一つにはもう青木、山口、横山といった先生方にはプラ管(悠)を入れる事をすでに話しており、全員からお褒めの言葉をいただいておりましたし、あまつさえ青木先生からは推薦文まで書いていただいていましたから、今さら「もっと安い工法に変えました」とはねえ・・・。
特に書きますが、この推薦文について青木鈴慕先生から「私が推薦文を書いてあげます。ついては絶対に謝礼を払わない事。それが約束だ」と釘を刺されていましたので、一銭も払っていません。こういうところが青木鈴慕という人の泣かせるところなんです。青木鈴慕は金では動かない。
「大橋は大金を払ったんじゃないか?」と、周りでも言っていましたが、この事情を青木先生はイッサイ他人に話してはいませんでした。青木先生のお人柄の一端を分かっていただけたら幸いです。
いささか脱線しましたが、やらなかったもう一つの理由ですが、こういう事は秘密にしておけないのですから、いずれ分かった時に、いくら安価でも中が水道管だと非難されると思ったんです。
竹の中がプラスチックだというのは他の有力メーカーでもそうですから、別に構わないでしょう。
水道管で尺八を作る事は「なる八君」以前から、かなり多くのバリエーションを持って作られていました。流という単位でも竹保や菊水で入門者用として製造販売していました。
1981年の秋、まだ初代酒井竹保先生は90過ぎでお元気で、ご自宅にお邪魔した私に「水道管尺八」を見せて、いろいろ説明してくださいました。
黒く塗られていて、吹き口の部分が太くなっており、歌口には金属が嵌まっていました。根に当たる部分が曲げてあり覗いても内径のストレート形状は分からない様になっていました。
当時、竹保流が流として斡旋していた竹製尺八は「美中」ですが、「十分の一価格」の尺八も必要としていたのです。
吹いて下さいまして「どうだね、鳴るだろう」とニコニコなさった事は昨日の事の様の憶えています。
そうです。水道管で作った尺八は鳴るのです。内径がストレートですから、そもそも音波振動の阻害要因が無いのです。フルートは頭部だけ内径が細くなっていて、その下は内径ストレートです。水道管は竹製尺八よりは肉が薄いですが、フルートよりは肉厚です。ですから手孔の容積にもっていかれる分はフルートよりは大きく、内径がストレートだと下に行くほど原理的に内径容積が大きくなる為、ツなどに影響が出てしまいますが、入門用として問題化するほどではありません。
「竹以外で作った尺八は音で分かる」と広言する人がホンの15年くらい前までは珍しくなかった。今はもう、そんな能力を持った人なんか存在しないと皆(でもないか)が知っていますが、この水道管だけは、凄く感覚の鋭い人ですと分かります。内径が見事なまでにストレートですから。
良い悪いは別にして、尺八の内径のテーパー構造、そして最狭部から管尻までの逆テーパー。この特異な内径構造こそ人々を魅了する尺八の音色の秘密なのです。
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