邦楽の情報力
- 2017/03/08
- 23:16
平成4年だったですか、旧通産省が日本の伝統文化の実態を調査しました。人口とか業界規模とか収入実態とか、ともかく知られていなかった伝統文化の世界をかなり深く調べ上げたのです。
どうしてまた通産省が?と思うでしょう。演奏会場とかアクセス関係の投資と整備ですよ。バブルがはじけたとは言え、まだ軌道復帰が可能かも知れないと思われていた時代でした。それで通産省が乗り出したわけです。
古典邦楽の関係は、今は池坊短大で教鞭をとっている臼井喜芳さん、連盟の尺八家の臼井風山ですが、彼が調査を担当していました。
全くの偶然なのですが、私も『邦楽ジャーナル』からの依頼で、尺八人口を公表する事になり、数字の再整備をしていたところでした。臼井さんから「大橋さんが尺八界で一番数字を把握していると聞きました。ついては調査に協力してもらえないだろうか」という依頼が有り、私は尺八だけですが、ともかくお互いの数字を突き合わせました。結果、笑ちゃうんですが、事前相談なんかは勿論無しで、ほとんどピタリです。臼井さんの調査には民謡は入っていませんでしたが、古典尺八の規模を人口約3万とすることで一致、差はわずか3パーセント千人でした。
プロ製管師は私が40人、臼井さんが50人でしたが、これはどこのラインまでをプロとするかでの差違であり、その年商推定などでは大筋で一致しました。
ここで感心したのがプロ調査員の調査能力でした。だって私は、その時点で15年以上尺八で喰っていて、「この世に自分以上に尺八界の実態を知ってる人間なんかいない」と自惚れ、オットット、しごくまっとうな自己評価をしていました。そのラインまで、プロがその気になると僅か2~3ヶ月の調査で到達してしまうんです。
これって、私が一度、たしか平成7年に日本三曲協会の総会で質問しました。総会の進行はいつも同じ、質問に立つのは私の大学の先輩で法政大学三曲会の創始者でもある前原鳳童さんが一人だけ。そういう「御約束総会」でしたので、その時は青木先生に私ともう一人、同じ鈴慕会の飯野鈴春さんが呼ばれ、「総会に出席して、それぞれが差しさわりの無い質問をするように」との指示を受けました。
それで私が質問したのです。「通産省の調査数字を日本三曲協会として、どう役立てるかの試案は有りますか?」。司会の邦山先生はじめ理事全員が調査自体が初耳だったらしく、しばらく協議していましたが、結局、邦山先生が「とりたてて計画は有りません」と答えて終わりました。
総会後で中嶋靖子先生と藤井治童先生は個別に感想を私に述べられました。「本当は協会も情報収集にもっと敏感でないとイケないんですがね」とは藤井先生の感想でした。
私と言えば、こうなるのは分かっていましたから、別段の感慨などは有りませんでした。長期低落傾向に在る「ぬるま湯組織」ってこういうものですよ。
今、尺八界の実体調べは日本だけの事に止まらず、ついに世界網羅が必要な段階に入りました。「何の為に?」って聞くのかい?いいのいいの、勝手に首を捻っていなよ、そういう人が製管師でない事を他人事ながら祈りますわ。
もう欧米や中国文化圏では尺八は成長軌道に乗りました。次の有望市場は東南アジアです。まだまだ種蒔き以前の土起しの段階なんですよ。ここを数字も持たずにやる度胸は私には無いな・・・。
それにしても、尺八みたいに「伝統の世界」でかったるく生きて来た業界って、あらゆる分野でまだまだプロが足りていませんな。
どうしてまた通産省が?と思うでしょう。演奏会場とかアクセス関係の投資と整備ですよ。バブルがはじけたとは言え、まだ軌道復帰が可能かも知れないと思われていた時代でした。それで通産省が乗り出したわけです。
古典邦楽の関係は、今は池坊短大で教鞭をとっている臼井喜芳さん、連盟の尺八家の臼井風山ですが、彼が調査を担当していました。
全くの偶然なのですが、私も『邦楽ジャーナル』からの依頼で、尺八人口を公表する事になり、数字の再整備をしていたところでした。臼井さんから「大橋さんが尺八界で一番数字を把握していると聞きました。ついては調査に協力してもらえないだろうか」という依頼が有り、私は尺八だけですが、ともかくお互いの数字を突き合わせました。結果、笑ちゃうんですが、事前相談なんかは勿論無しで、ほとんどピタリです。臼井さんの調査には民謡は入っていませんでしたが、古典尺八の規模を人口約3万とすることで一致、差はわずか3パーセント千人でした。
プロ製管師は私が40人、臼井さんが50人でしたが、これはどこのラインまでをプロとするかでの差違であり、その年商推定などでは大筋で一致しました。
ここで感心したのがプロ調査員の調査能力でした。だって私は、その時点で15年以上尺八で喰っていて、「この世に自分以上に尺八界の実態を知ってる人間なんかいない」と自惚れ、オットット、しごくまっとうな自己評価をしていました。そのラインまで、プロがその気になると僅か2~3ヶ月の調査で到達してしまうんです。
これって、私が一度、たしか平成7年に日本三曲協会の総会で質問しました。総会の進行はいつも同じ、質問に立つのは私の大学の先輩で法政大学三曲会の創始者でもある前原鳳童さんが一人だけ。そういう「御約束総会」でしたので、その時は青木先生に私ともう一人、同じ鈴慕会の飯野鈴春さんが呼ばれ、「総会に出席して、それぞれが差しさわりの無い質問をするように」との指示を受けました。
それで私が質問したのです。「通産省の調査数字を日本三曲協会として、どう役立てるかの試案は有りますか?」。司会の邦山先生はじめ理事全員が調査自体が初耳だったらしく、しばらく協議していましたが、結局、邦山先生が「とりたてて計画は有りません」と答えて終わりました。
総会後で中嶋靖子先生と藤井治童先生は個別に感想を私に述べられました。「本当は協会も情報収集にもっと敏感でないとイケないんですがね」とは藤井先生の感想でした。
私と言えば、こうなるのは分かっていましたから、別段の感慨などは有りませんでした。長期低落傾向に在る「ぬるま湯組織」ってこういうものですよ。
今、尺八界の実体調べは日本だけの事に止まらず、ついに世界網羅が必要な段階に入りました。「何の為に?」って聞くのかい?いいのいいの、勝手に首を捻っていなよ、そういう人が製管師でない事を他人事ながら祈りますわ。
もう欧米や中国文化圏では尺八は成長軌道に乗りました。次の有望市場は東南アジアです。まだまだ種蒔き以前の土起しの段階なんですよ。ここを数字も持たずにやる度胸は私には無いな・・・。
それにしても、尺八みたいに「伝統の世界」でかったるく生きて来た業界って、あらゆる分野でまだまだプロが足りていませんな。
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