尺八の宿題
- 2017/04/28
- 22:56
尺八で辛いのは割れるからです。昔、尺八が割れたというクレームに対して、作り手が「それは良かった」と答弁している現場に居合わせ、本当に驚きました。その人は開き直っているわけではなく、むしろ良心的な人で、どうもそう本気で思っていたみたいです。
その論理は① 硬い竹は割れる ② 硬い竹で作った尺八は音が良い ③ だから割れて良かった。
この無茶苦茶な論理はトモカクも当時は多少の説得力が有ったようです。勿論、②は全く根拠の無いタワゴトの類ですが、①は一定の科学性が認められています。でも②が迷信であるからには③は成り立ちません。
私達は尺八を作る上で、竹の購入に始まり保管、下処理など本当に気を使っています。それでも割れる尺八が出る事は避けられない。「私の作った尺八はあまり割れていないけど」とか言う人だっていましたよ。アタリメエだ。オレッチは年にアンタの20倍作って売ってんだ。単純計算だけど、アンタの尺八が割れる数は私の5パーセントだよ。だったら幾らでもないでしょうよ。
「自分の尺八は割れにくい」と堂々と広告コピーに打っていた人もいましたよ。冗談じゃない、ショッチュウその人の尺八が私の所に割れ修理に持ちこまれていましたよ。仕事を殖やしてくれたお礼に盆暮れの付け届けをしなくては悪いと思うくらいに・・・。
買ったお客から「今まで他で買った尺八は割れていない。今度初めてアンタから買ったけど割れた。どうしてだ?」とのクレームも珍しくないです。この真逆のケースで褒められる事も有りますので、簡単に言うと運ですが、御客は総サンプル数が圧倒的に少ないので、こういうナマの言い方は禁物です。
尺八の材料である竹ですが、細胞は表面に近くなるほど小さく密になります。内側は大きく粗い。ですから外的要因、主として乾燥ですが、その影響で縮む時に内側ほど大きく縮みますので、その力の歪みで割れが生じるわけです。
「これだけ科学が発達しているんだから割れくらい防止できねえのか」と言う感想をお持ちの方もいるでしょう。「絶対に割れない竹製尺八」は存在します。
① 一種のパラフィンに青竹の時に漬けるのです。ただ、これだと地が乗らない。内部がプラスチック流し込みの尺八なら良いでしょうね。
② 圧力をかけて樹脂を浸み込ませる方法。6~7割はその時に割れる。
③ 割れ防止剤に1週間ほど漬ける。変形する竹、汚い色になる竹も多い。
結局ですな、どれも現実にはリスクが大きい。
江戸時代の尺八の高級品は、予め「割れ止め」が施して有りました。それがまた一種の「景色」となっていて美しい。ですから、海外向けには、こういう具合にするのが良いと思います。
ただ、一辺倒はイケマセン。ヨーロッパだと新品の尺八に「割れ止め」を希望する人が多いですね。アメリカだと内陸部は確かによく割れますが、これまでカリフォルニアや東部沿岸部に売った尺八って、割れはほとんど無いのです。
中国だと、前に神崎さんから「北京では7~8割は割れている」と聞きましたが、長江の南では割れません。台湾ですと、これまで売れた尺八は私の所だけで単位は百ですが、他社製品を含めて「割れ修理」は2,3本です。
尺八の「割れの問題」は国際化に横たわる大きなハードルです。少しずつ現地生産が拡大していますので、そのうちに修理も各国で出来るようになるでしょうが、その為にも今の改善は必要です。
その論理は① 硬い竹は割れる ② 硬い竹で作った尺八は音が良い ③ だから割れて良かった。
この無茶苦茶な論理はトモカクも当時は多少の説得力が有ったようです。勿論、②は全く根拠の無いタワゴトの類ですが、①は一定の科学性が認められています。でも②が迷信であるからには③は成り立ちません。
私達は尺八を作る上で、竹の購入に始まり保管、下処理など本当に気を使っています。それでも割れる尺八が出る事は避けられない。「私の作った尺八はあまり割れていないけど」とか言う人だっていましたよ。アタリメエだ。オレッチは年にアンタの20倍作って売ってんだ。単純計算だけど、アンタの尺八が割れる数は私の5パーセントだよ。だったら幾らでもないでしょうよ。
「自分の尺八は割れにくい」と堂々と広告コピーに打っていた人もいましたよ。冗談じゃない、ショッチュウその人の尺八が私の所に割れ修理に持ちこまれていましたよ。仕事を殖やしてくれたお礼に盆暮れの付け届けをしなくては悪いと思うくらいに・・・。
買ったお客から「今まで他で買った尺八は割れていない。今度初めてアンタから買ったけど割れた。どうしてだ?」とのクレームも珍しくないです。この真逆のケースで褒められる事も有りますので、簡単に言うと運ですが、御客は総サンプル数が圧倒的に少ないので、こういうナマの言い方は禁物です。
尺八の材料である竹ですが、細胞は表面に近くなるほど小さく密になります。内側は大きく粗い。ですから外的要因、主として乾燥ですが、その影響で縮む時に内側ほど大きく縮みますので、その力の歪みで割れが生じるわけです。
「これだけ科学が発達しているんだから割れくらい防止できねえのか」と言う感想をお持ちの方もいるでしょう。「絶対に割れない竹製尺八」は存在します。
① 一種のパラフィンに青竹の時に漬けるのです。ただ、これだと地が乗らない。内部がプラスチック流し込みの尺八なら良いでしょうね。
② 圧力をかけて樹脂を浸み込ませる方法。6~7割はその時に割れる。
③ 割れ防止剤に1週間ほど漬ける。変形する竹、汚い色になる竹も多い。
結局ですな、どれも現実にはリスクが大きい。
江戸時代の尺八の高級品は、予め「割れ止め」が施して有りました。それがまた一種の「景色」となっていて美しい。ですから、海外向けには、こういう具合にするのが良いと思います。
ただ、一辺倒はイケマセン。ヨーロッパだと新品の尺八に「割れ止め」を希望する人が多いですね。アメリカだと内陸部は確かによく割れますが、これまでカリフォルニアや東部沿岸部に売った尺八って、割れはほとんど無いのです。
中国だと、前に神崎さんから「北京では7~8割は割れている」と聞きましたが、長江の南では割れません。台湾ですと、これまで売れた尺八は私の所だけで単位は百ですが、他社製品を含めて「割れ修理」は2,3本です。
尺八の「割れの問題」は国際化に横たわる大きなハードルです。少しずつ現地生産が拡大していますので、そのうちに修理も各国で出来るようになるでしょうが、その為にも今の改善は必要です。
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