プロの会話
- 2017/06/01
- 22:58
私が大学出たての頃は、毎月6万円くらい寿司屋に払っていました。一般の手取り初任給と同じくらいの額です。若造でしたが
分不相応に金を稼いでいましたもんね。
私の住んでいた所は田舎ですから、当時はまだ回転寿司なんてものは無く、寿司屋はツケ台をはさんで職人と会話するのが普通でした。そこで寿司をつまみながら、あれこれ教えてもらうわけですな。
客の中には通ぶってウンチクを述べたりして陰で嗤われているオカタもいました。この「嗤われている」が、チョット微妙なところで、その半可通ぶりが、ある段階にとどまるぶんには、日常よく見る風景であり、寿司屋も、むしろ好意的に受け止めるようです。ウンチクを楽しむのも寿司屋に行く大きな楽しみでした。
寿司屋に訊くと、ものの5分も会話したりすれば、その客の「寿司に関しての本当の処」がはっきり分かると言います。ですから、知識でプロと背比べする様な客は内心でそっと嗤われます。
タブンですが、魚屋とか漁師は魚に関しての知識では寿司屋を上回るのかも知れません。でも、それは寿司に関してではないのです。
その道のプロ同士教え合っていれば良い関係が築けます。一部の知識で突っ張れば、それはギクシャクもしまっせ。
尺八に関してちょっと例を挙げてみましょうか。
展示会場に飛び込みで入って来た人がいました。腕を組んで並んでいる尺八を見ていましたが、一向に吹き出さないので話かけると。
尺八を吹いてどのくらいですか? 「結構長いよ」。師範はとったのですか? 「そこまでは・・・」。 準師範くらいですか? 「まあ、そんなとこかな」。そして、「三角の歌口が琴古、丸いのが都山だな。尺八の孔は5つ」。
はいクイズ。この人ってどのくらいでしょう? 未経験者ではないものの初心者、そしてそぐに尺八を止めた。この短い会話で尺八を吹いている人なら十分に分かりますよね。だって尺八を吹いていたら、こんな初歩も初歩の事なんて口に出しませんもの。
もう一つ。昔よくいた客のタイプですけど、尺八の音階名を悉く和名で言うのです。「イチコツ、オウシキ」とか。さて、このレベルとは?
これは先の例よりはやや難易度が高く、まあ中級編ですかね。 答えは、師範くらいまでは或いは行っているかも知れませんが、まあ素人の旦那、あるいは天狗さんです。
玄人だと、会話の中で必然も無いのに、音を和名でならべたりしないのです。必然とは、たとえばこんな具合です。「これ、明治中期の尺八で神仙管だ」。
つまり何が言いたいかといえば、プロ同士ってけっして特別の用語でなんか会話していません。その内容が時に専門分野に入り込むだけです。
ですから御客様にも、書画骨董とか寿司みたいに会話を通じてウンチクを楽しんでいただきたいのですが、そこは自然体が一番。だって、知ったかぶりしたって、会話のはしばしで背伸びはすぐ分かりますよ。
「何にも知らない」とバカにするプロいたなら、そいつがバカなんです。私達は尺八のプロ。お客はそれぞれの道でプロなんですもの。
分不相応に金を稼いでいましたもんね。
私の住んでいた所は田舎ですから、当時はまだ回転寿司なんてものは無く、寿司屋はツケ台をはさんで職人と会話するのが普通でした。そこで寿司をつまみながら、あれこれ教えてもらうわけですな。
客の中には通ぶってウンチクを述べたりして陰で嗤われているオカタもいました。この「嗤われている」が、チョット微妙なところで、その半可通ぶりが、ある段階にとどまるぶんには、日常よく見る風景であり、寿司屋も、むしろ好意的に受け止めるようです。ウンチクを楽しむのも寿司屋に行く大きな楽しみでした。
寿司屋に訊くと、ものの5分も会話したりすれば、その客の「寿司に関しての本当の処」がはっきり分かると言います。ですから、知識でプロと背比べする様な客は内心でそっと嗤われます。
タブンですが、魚屋とか漁師は魚に関しての知識では寿司屋を上回るのかも知れません。でも、それは寿司に関してではないのです。
その道のプロ同士教え合っていれば良い関係が築けます。一部の知識で突っ張れば、それはギクシャクもしまっせ。
尺八に関してちょっと例を挙げてみましょうか。
展示会場に飛び込みで入って来た人がいました。腕を組んで並んでいる尺八を見ていましたが、一向に吹き出さないので話かけると。
尺八を吹いてどのくらいですか? 「結構長いよ」。師範はとったのですか? 「そこまでは・・・」。 準師範くらいですか? 「まあ、そんなとこかな」。そして、「三角の歌口が琴古、丸いのが都山だな。尺八の孔は5つ」。
はいクイズ。この人ってどのくらいでしょう? 未経験者ではないものの初心者、そしてそぐに尺八を止めた。この短い会話で尺八を吹いている人なら十分に分かりますよね。だって尺八を吹いていたら、こんな初歩も初歩の事なんて口に出しませんもの。
もう一つ。昔よくいた客のタイプですけど、尺八の音階名を悉く和名で言うのです。「イチコツ、オウシキ」とか。さて、このレベルとは?
これは先の例よりはやや難易度が高く、まあ中級編ですかね。 答えは、師範くらいまでは或いは行っているかも知れませんが、まあ素人の旦那、あるいは天狗さんです。
玄人だと、会話の中で必然も無いのに、音を和名でならべたりしないのです。必然とは、たとえばこんな具合です。「これ、明治中期の尺八で神仙管だ」。
つまり何が言いたいかといえば、プロ同士ってけっして特別の用語でなんか会話していません。その内容が時に専門分野に入り込むだけです。
ですから御客様にも、書画骨董とか寿司みたいに会話を通じてウンチクを楽しんでいただきたいのですが、そこは自然体が一番。だって、知ったかぶりしたって、会話のはしばしで背伸びはすぐ分かりますよ。
「何にも知らない」とバカにするプロいたなら、そいつがバカなんです。私達は尺八のプロ。お客はそれぞれの道でプロなんですもの。
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