西村鈴鼎さん逝く

４月の人間ドックで指摘された胃のデキモノ、当初から「癌の可能性は低い」と言われていましたが、胃カメラや超音波などで何回か検査を繰り返しましたが、まだ良く分からないそうで、１泊２日の検査入院という運びとなりました。
前回の脳梗塞の時は、はじめは３泊４日のはずが、結局そのまま３月半の長期入院になってしまいました。カクノゴトク、人生には三っつの坂が有るそうですな。上り坂、下り坂、そして「まさか」。加えて今、私が夢中なのは乃木坂、欅坂ですけど・・・。
でも私の人生に坂は無かったように思うのです。他人にはどう見えようとも、自分では波乱の少ない凡々たる人生だったと感じています。
これって尺八界というものが、ヨソの世界と比較して非常に穏やかな波乱の無い環境に在るからでしょう。勿論、個々人単位で見たら、それなりに「浮き沈み」も有りますわな。でも他の熾烈な競争社会と比べたら問題になりゃしませんわ。

最近、オーストラリアの中島さんから電話をもらい、話の途中名古屋ので西村鈴鼎さんが亡くなった事を教えてもらいました。これが「まさか」です。早速、同じ鈴慕会の林鈴麟さんに電話しましたが、「自動車事故」とかで実に痛ましい事です。御両親のお嘆きは如何ばかりでしょう。
彼は渓流釣りが趣味なので、深夜に山に自動車で向かう途中で事故に遭ったそうです。まだ若いのに残念です。
西村鈴鼎さんは、お母さんが青木鈴慕先生の実のお姉さんで、お父さんも鈴慕会の会員です。愛知の西村姓で家紋は「五つ割りの織田木瓜」ですから、戦国以来の尾張・美濃の名族なのでしょう。
御本人はもとより御両親とも親しくさせていただきました。心よりお悔やみを申し上げます。

西村鈴鼎さんは多彩な才能に恵まれた人で、尺八も非常に上手でしたが、その他にも俳優、歌手、事業家と多方面に才能を発揮していました。体格や顔はもとより、冗談も反応の極めて良い人で、私とは、たまさか会う機会があると冗談を言い合ったものです。
でも肝心なのは、彼の覇気と冒険をものともしない楽天的性格でした。居酒屋経営をしていた時に、集客、宣伝、税金、はてはヤクザ対策まで随分と細かい点にまで私が質問しても、曖昧にせず明確に答える事からも卓抜な頭の良さを感じました。

私ごとですが、私も居眠り運転で事故を起こしかけた事が有ります。４０年以上前ですが、早朝の東名高速で横浜インターを過ぎた辺りで、突如けたたましいクラクションの音。ハッとして目が覚め、ドウシテか分からないけど左にハンドルをきったところ、大型ダンプが凄いスピードで右のサイドミラーをもぎ取りました。
何時しか眠っていたのです。間の悪い事に隣に乗っていた後輩も寝ていました。ダンプは命の恩人です。もしダンプが来なかったら？そのまま壁に激突。右にハンドルをきっていたら？ダンプと衝突。
そう考えた時、私と西村さんを分けたのは単に運。それも人間、遅かれ早かれ逝くのは定まった道ですから、私の様に来世とか霊魂とか信じていない者は「一たび泫然たる気持ち」になります。

だからって、宗教の勧誘なんかに来るんじゃネエぞ。前に脳梗塞で半身不随になった時は、マジで二人来たもんな・・・。