袖すりあうも 其六(井上ひさしさん)
- 2014/12/23
- 22:10
1982年。まだ千葉県の船橋の住んでいた作家の井上ひさしさんに原稿を戴きに行きました。
朝の8時に渡すということだったので、早起きしてご自宅に行ったのですが・・・
ご老人が出てきて「すみませんねえ、昨夜は徹夜だったので、まだ寝てるんですよ。起きたらすぐ書きますから」 そういう事です。それから一人で延々と・・・
10時になると秘書の女性が二人仕事しに来ました。「ごめんなさい、もう起きて原稿にかかってると思います」 恐縮すること恐縮すること。別に私は腹もたてていないし退屈してもいません。 「はあー、これが井上ひさしの家の応接間かあ」と物珍しかったので、むしろ楽しんでいました。菅田万美さんという女性秘書の方が申し訳ながって、何かと親切にしてくれました。
お昼もいただいて、コーヒーもいただいて、ついでに出たばかりの「吉里吉里人」もいただきました。
結局、原稿を受け取ったのは午後2時です。
群馬の高崎で行なったピアノリサイタルのパンフ原稿でしたので、2か月後に御本人にコンサート会場でお会いしました。その時のことを井上さんばかりでなく当時の奥さん、西舘好子さんまで一緒に丁寧に謝られました。ご夫妻ともども腰が低く、とても感じが良い夫妻でした。何度も謝られますので、そんな些細な事を憶えていて下さって、こちらが恐縮するばかりでした。
ここで済めば「良い人だったなあ」で終わりですが、世の中はままならない物ですね。
会の翌日の朝、一緒に来ていた菅原文太さんにインタビューしたいとの「季刊邦楽」の依頼を朝食の時に 文太さんに取り次ぐと・「ああ、良いですよ。その前にオレの部屋に行って荷物を持って来てくれよ」私に部屋の鍵を渡します。
「えっ、入って良いんですか?」と私。 「なんだよ、女なんか連れ込んでいないぜ」と笑いますが・・・
実は菅原文太さんも文子夫人と一緒に来て、ホテルに泊まっていたのです。部屋にいると思うじゃありませんか。
後で聞いたら、前の晩に井上夫人と菅原夫人は大喧嘩して、あげく井上夫妻、文子夫人はタクシーをとばして東京まで帰っていたのです。
あの優しい井上夫妻を怒らせるんだから菅原文太の奥さんはトンデモナイ人だなと、その時は思いました。
西舘好子さんの著書「修羅の棲む家」を読んでも、あの優しく感じの良いご夫妻が、凄まじい家庭内暴力を互いにふるって、相互に傷つけあっていたとは信じられない思いです。
「尺八って難しいでしょう?どのくらい練習したら吹けるようになりますか?」と小声で聞かれた大作家に暴力夫の影を見ることは困難でした。優しく謙虚な井上さんと家庭内暴力をふるう井上さん。どちらも井上ひさしなのでしょう・。非凡な仕事をなさる人の内面には修羅が住んでいるのでしょうか?
良かった、私の周りは皆凡人で。
朝の8時に渡すということだったので、早起きしてご自宅に行ったのですが・・・
ご老人が出てきて「すみませんねえ、昨夜は徹夜だったので、まだ寝てるんですよ。起きたらすぐ書きますから」 そういう事です。それから一人で延々と・・・
10時になると秘書の女性が二人仕事しに来ました。「ごめんなさい、もう起きて原稿にかかってると思います」 恐縮すること恐縮すること。別に私は腹もたてていないし退屈してもいません。 「はあー、これが井上ひさしの家の応接間かあ」と物珍しかったので、むしろ楽しんでいました。菅田万美さんという女性秘書の方が申し訳ながって、何かと親切にしてくれました。
お昼もいただいて、コーヒーもいただいて、ついでに出たばかりの「吉里吉里人」もいただきました。
結局、原稿を受け取ったのは午後2時です。
群馬の高崎で行なったピアノリサイタルのパンフ原稿でしたので、2か月後に御本人にコンサート会場でお会いしました。その時のことを井上さんばかりでなく当時の奥さん、西舘好子さんまで一緒に丁寧に謝られました。ご夫妻ともども腰が低く、とても感じが良い夫妻でした。何度も謝られますので、そんな些細な事を憶えていて下さって、こちらが恐縮するばかりでした。
ここで済めば「良い人だったなあ」で終わりですが、世の中はままならない物ですね。
会の翌日の朝、一緒に来ていた菅原文太さんにインタビューしたいとの「季刊邦楽」の依頼を朝食の時に 文太さんに取り次ぐと・「ああ、良いですよ。その前にオレの部屋に行って荷物を持って来てくれよ」私に部屋の鍵を渡します。
「えっ、入って良いんですか?」と私。 「なんだよ、女なんか連れ込んでいないぜ」と笑いますが・・・
実は菅原文太さんも文子夫人と一緒に来て、ホテルに泊まっていたのです。部屋にいると思うじゃありませんか。
後で聞いたら、前の晩に井上夫人と菅原夫人は大喧嘩して、あげく井上夫妻、文子夫人はタクシーをとばして東京まで帰っていたのです。
あの優しい井上夫妻を怒らせるんだから菅原文太の奥さんはトンデモナイ人だなと、その時は思いました。
西舘好子さんの著書「修羅の棲む家」を読んでも、あの優しく感じの良いご夫妻が、凄まじい家庭内暴力を互いにふるって、相互に傷つけあっていたとは信じられない思いです。
「尺八って難しいでしょう?どのくらい練習したら吹けるようになりますか?」と小声で聞かれた大作家に暴力夫の影を見ることは困難でした。優しく謙虚な井上さんと家庭内暴力をふるう井上さん。どちらも井上ひさしなのでしょう・。非凡な仕事をなさる人の内面には修羅が住んでいるのでしょうか?
良かった、私の周りは皆凡人で。
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