風の予兆

ついに風が吹き始めた。中国からです。同国の動画サイトにＹoukuが有ります。日本のYouTubeみたいなものですよ。そこに所属している天人慧致という会社が尺八の教習に乗り出しました。
すでに小湊昭尚と「き乃はち」が独占契約を結んだようです。今後は月に1回、上海と北京で講習をやり、すでに多数の教習希望者が確保されている模様です。まだ、確認がとれない点が多いのですが、ここまでは、まず確報といって良いでしょう。
日本でも藤原道山に次ぐ売れっ子の小湊さんが動くのですから、かなりの好条件が提示されたと思われます。き乃はち・佐藤康夫さんは日本では知られていませんが、中国では藤原道山に次ぐ知名度を有しており、4年前の上海のミュージックチャイナに私が参加した時点では、人気は中国ではナンバーワン尺八家でした。

中国での尺八熱は年毎に高まり、ついに異次元の領域に入ろうとしています。Youkuに乗って今後は中国の各地で尺八を吹く人が「ネズミ算」式に増え、地方の都市でも尺八教室が開かれます。勿論、天人慧致もここで止まるとは思えません。その段階では新たな企業体の参入も呼び込みましょう。
先行の上海の一音無心の計画だけでも、2か月に一度は日本人尺八家による演奏会や講習会が開かれ、さらに3月には真山が、そして6月と9月には私が尺八展示会を開く事が決定しています。
これはまだ同社の企画の序の口なのです。まだ口を割れない計画が多数有ります。

日本で、これに似た現象が起きたのは昭和30年代の終わり、民謡ブームが始まりかけた時です。私は、その時の事は知りませんが、たとえば古賀晴邦という製管師がいました。山崎竹陰の弟子で九州を代表する人でした。この方の話を紹介しましょう。
「尺八を作っても売れず、大きな長持ちに何杯も溜まってしまった。それが民謡ブームでアッと言う間にはけてしまい、それからは大忙しで・・・」、その結果、御自宅も三階建てのビルになりました。
民謡ブームは15年以上続きましたが、その間の製管師の金満ぶりは今も語り草になっています。大阪の某製管師は家を4軒も建てましたし、竹仙は真山との2人で毎月80本の尺八を製作し、真山の独立後には多数の弟子を指揮して年３千本を達成しました。
河野玉水は親子2人でずっと年２百本を生産しましたが、これは上限設定していた為で断った注文も有ったと言います。それにしても1本が大学出初任給の平均2倍でしたから、かなりの所得になりますわな。
また民謡フェアが日大講堂で行われた時は、5日間で尺八が4百本も売れました。

こういう事が再び起こるのですよ。もっとも、かなり様相は違ってきますがね。どうなるのか？ですって、ダイブ明らかにはなってきましたがね、まあ、まだハッキリしないとしておきましょう。でもね、アナタだって、それによって家元制や古典本曲を除く尺八曲が息を吹き返すとは思っていないでしょう。
尺八界そのものも未知の領分に突入するのですよ。ここ、ここに至っても「本分」とか「伝統」とかにコダワル人もおりましょう。世界が広くなるという事は、そういう細部領域も大きくなるという事でしょうから、それが大切だと思う人は、それをしっかり守ってください。
私はまだ見ぬ領域に歩みだしたいと思っています。人生の終盤に、こういう「嵐の日」と遭遇できたことは幸運以外の何物でもなく、私はワクワクしています。